表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/44

気障な騎士




二人が向かった先は温室だった。


「どうぞ」


「ありがとうございます」


ここなら他の令嬢が通ることはないので心配ない。


「申し訳ありません。嫌な思いを」


「アレーシャ様、貴方は何故何もおっしゃらないのですか」


レオンハルトは先程の会話が耳に入り不愉快に感じる。


「事実ですから…それに慣れています」


「慣れている?」


「ええ、宮廷内ではああいった陰口は少なくありません。人は自分より優れている者を妬みその逆は見下す哀しい生き物です」


相手を傷つけても得るものはないのだが、解っていない人間が多い。


「伯爵家の貴方なら不敬罪にすることも出来ましょう」


「私は伯爵家の娘ですが立場は弱いんです。ご存知かと思いますが、私は婚約を断られた身です」


宮廷内は様々な噂をし面白おかしく陰口を叩く。

女性としての魅力がないのか、それとも不義を働いているのかと、でっち上げられたりもする。


「貴方は耐えるのですか?名誉を傷つけられたのですよ。それに妹君も」


レオンハルトは妹に対しても酷いと思った。

姉から婚約者を奪う様な事をしていいはずもない。


「ではやり返せと?」


「え?」


「やられたからやり返してどうなりましょうか」


傷つけられたから傷つけて、傷つけたから傷つけられてはその繰り返しだ。


そんな愚かな行為はする気なんてない。


「それに少しばかり哀れにも思うのです」


「誰がです?」


「貴族の令嬢達です」


高飛車で傍若無人に振る舞う貴族の令嬢が時折哀れになる。


「鳥籠の中で争い、欲望のまま欲して、また欲が出る。欲しがることを辞めず尽きない欲。哀れです」


恵まれすぎる環境にいながら他人の物を欲しがる。

持てども持てども飽き足りない心は満足できないなんて哀れでしかないと思った。



「寂しさを、虚しさを財を使って紛らわすなんて哀れです」


眉を下げて哀し気な表情をするアレーシャは自由がない令嬢を憐れんでいた。


「アレーシャ様、貴方はお優しいのですね」


「え?」


「虐げられながらも他者への慈しみを持っておいでだ」


そっと手に触れ微笑むレオンハルト。


かなり至近距離で驚く。


「貴方は聖女のように美しい」


そっと髪に触れキスをするレオンハルトに固まった。


(えっ…はぁ!?)


初体験に動揺が走り身動きが取れなくなっていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ