怒り
広間の真ん中で二人は鉢合わせになった。
「お姉様…」
憎悪の視線を向けるカテリーナ。
睨みつけ今にもつかみかかりそうな勢いだった。
「え?プライム伯爵御令嬢?」
「うそ…」
カテリーナは思わず大きな声でお姉様と呼んでしまったことに気づいていない。
気づいた時には遅かった。
「灰かぶり姫のアレーシャ嬢?」
「では今日がデビュタントの日でしたの?」
周りの夫人はヒソヒソと話す。
「素敵なドレスですわ」
「なんて美しいのかしら」
これまで令嬢として品がなく美しくない所為でデビュタントも果たせない噂が流れていたがその噂は覆された。
「それに隣の令嬢も美しいですわ」
「ええ、どなたかしら」
ヒソヒソと夫人達が話しながら品定めをする。
「どうしてお姉様がここにいるのよ!!邸にも帰って来ないでこんな!」
カテリーナよりも美しい装いをして男性の視線を独り占めするなんて許せなかった。
掴みかかろうとしたがユリアが前に出る。
「ユリア」
「お下がりください」
明らかに敵意を感じたユリアは前に出る。
「どなた?お姉様の新しい主かしら?ついに王女殿下の侍女をクビになったのかしら?」
不敵な笑みを浮かべ見下す。
「私はアレーシャ様の御付き侍女です。元は官僚でございます」
「なっ…!!」
貴族の令嬢でも侍女を連れているのは侯爵家から。
伯爵家の地位では母親を連れても侍女をつけていることはまず少ない。
しかもその侍女が元官僚となれば尚のこと。
「ありえないわ!!伯爵令嬢でしかないのに!!」
「育ちが悪いですわ。大きな声を出すとは」
「なんですって!!」
ヒステリックに声を荒げるカテリーナに品がないと咎められ激情する。
これまでカテリーナに逆らう者はいなかった。
にも拘らずユリアは軽蔑の眼差しを向け冷たい視線を送る。
「無礼者!!」
扇を上げようとしたが‥‥
その手がユリアに振り下ろされることはなかった。
「何事だ」
「貴方は!」
カテリーナからユリアを守ったのはレオンハルトだった。
正装をして美しく着飾り凛とした佇まいで二人を守るように立つ姿はまさしく騎士のようだった。




