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林太郎ラブコメ奮闘記

『好きなの!』

 夕日に照らされた浜辺。

水平線に沈む太陽が男女の影を伸ばしていた。

『ユウナと、お姉ちゃんを命がけで助けてくれたあの日から、ずっと好きなの!』

『だ、だめだ。俺たちは兄弟なんだぞ……』

『血は繋がってない!』

 ツインテールの女の子が叫ぶ。

『どうしてそれを……』

『お姉ちゃんがニューヨークに行く前に教えてくれたの。お兄ちゃんは、ユウナのことが嫌いなの? それとも、お姉ちゃんのことが忘れられないの?』

『俺だって、俺だって……』

 なんとも煮え切らない男はうつむいたまま黙ってしまった。

『ユウナは一生、お兄ちゃんのことが好きだよ!』

 眩しい夕日を背にしているのにもかかわらず、ユウナの顔はくっきりはっきり見える。逆光などものともしない。

『俺も、俺もずっと好きだ!』

 なんとも煮え切らない男が答えた。これまでの優柔不断が嘘みたいに明朗快活だ。

 抱き合う二人。

 流れるエンドロールと、明るいエンディングテーマ。

 そして、――拍手をする男子高校生。

「いい話だな~」

「……ったく、朝っぱらから」

 テレビに向かって拍手をする男を友人とは思いたくなかった。

「お前はいい話しだと思わないのか?」

「否定はしないよ」

「素直になれ、シンリン」

 シンリンこと、森林太郎(もりりんたろう)は弁当作りの最中だった。いつも通り、この友人、秋山好道(あきやまよしみち)が一緒に学校に行くためにやって来ていた。ただ、秋山は来るなり持ってきたDVDを見始めたのだ。しかも、ラストシーンだけを。

「何度見てもいいシーンだ」

「はいはい。それより、早くしないと遅刻するよ。秋山」

「シンリンも好きだろ。このアニメ」

「でも、これ映画版だろ? ぼくはテレビ版の方が好きだな。映画版はメインヒロイン以外の出番が少ないからね」

「映画版の宿命だろ。しかし、名シーンの連続じゃないか」

「でもねー」

 この会話から推測できるとおり、二人はアニメ好きである。平たく言えばオタクであるが、秋山の方がより重度であった。

「それに監督、演出ともに同じだ!」

「はいはい」

 林太郎は秋山と出会ったから深みにはまった。染められたのだ。ちなみに、シンリンとは、秋山が林太郎の字面を見て爆笑した後、つけたアダ名であった。

 二人は明風(めいふう)高等学校二年A組である。

 林太郎はどこにでもいそうな顔に大肉中背。つまり、太っていた。

 華のない風貌であるが、中身も華がない。友達は少なく、学力は中の下。趣味といえば家事にアニメぐらい……。これぽっちも華がない。

 本来なら脇役中の脇役だが、この物語の主人公は森林太郎十六歳十ヶ月である。

「ぼくは尺を問題にしてるんだ、尺を」

「ちっ、ちっ、ちっ。まったく……」

 人差し指を左右に振り、秋山は不敵な笑みを浮かべる。

「シンリンは、何にもわかってねえ!」

 対象的に秋山好道は少女漫画の主人公のような男であった。

 切れ長の眼に、奇麗な唇、褒めればきりがない顔立ちに、モデルのような体形。学校一の頭脳に剣道部のエース、性格も社交的で、自然と集まる人望のせいか生徒会長にも選ばれている。まさに文武両道である。 ただ、彼はオタクであった。

 ゲーム、漫画、アニメが秋山の血と肉である。しかし、見方を変えれば意外性であり、明風高校には熱狂的なファン倶楽部まで存在していた。

 すさまじい個性の華は周囲を虜にする。が、秋山はこの物語では脇役である。

「よかろう! 放課後、みっちりとこの映画の素晴らしさを語ってやろう。キャラクターの汎用性、緻密なストーリー、泣くに泣けない映画製作の秘話を!」

「それは、素晴らしいのか? あー、でも今日は無理だね。スーパーヤスゾーで卵のタイムサービスだ」

 森家は母子家庭である。八年前に父が風邪をこじらせ、肺炎で亡くなり、父の保険金で3LDKのマンションを購入した。

「そっか……。おばさんはもう会社に行ったのか?」

「都心だから、とっくに出たよ」

「さすが外資系の課長だな」

「通勤一時間五十分。毎日、泣いてるよ」

「シンリンのエプロン姿の出迎えも、慣れてしまうのだから恐ろしい」

 忙しい母に代わり、家事は林太郎の仕事であった。八年間の修行により、家事はお手の物である。

「しかたないだろ。自分で作らないと昼飯は学食かパンなんだから」

「いいじゃないか、それで」

「いや、これはぼくの趣味だ」

「良い趣味だなー。さて、俺らもぼちぼち出るか」

「──途中からおまえ待ちだよ……」

 この日常と変わらぬ晩夏の朝、林太郎にとって半生分の運を使ってしまう出来事の幕開けであった。

 

 重要なのは立ち位置であった。

 通学路の途中、大きな屋敷がある。四方を立派な塀に囲まれ、南向きの玄関門が聳え立つ。

 玄関門を通り過ぎた二人は、林太郎が塀側、秋山は道路側を歩いていた。繰り返すが、この立ち位置が重要であった。

「だから、あそこのシーンで製作者側が言いたいことは……」

 アニメ談義に花を咲かせ、二人は歩く。前に進んでいるのだから、長い塀も必然的に途切れる。すると、道は当然のごとく十字に交差した。その瞬間、天文学的な出来事が発生したのだ。

「うわっ!」

「きゃあ!」

 交差した十字路の東側から、いきなり女の子が死角から猛然と飛び出してきた。つまり、林太郎にとっての右側からだ。

 まさに不意打ち。

 気づいたときには女の子とぶつかっていた。

「もう! これじゃあ、完璧に慎之介に追いつけない」

 愚痴る女の子は、少々勝ち気そうではあるが、紛れもなく美少女であった。

 林太郎に馬乗りになっていた少女は慌てて体を起す。

「ごめんね。ボク、急いでたもんだから」

「い、い、いや、べつに……」

「どこか怪我してない?」

 少女は林太郎に手を差し伸べた。

「いや、べつに……、ないです、はい」

 気の利いた答えなど返せないが、素直に手を握った。柔らかいその感触に密かな感動を覚えていた。

「お、重い~~」

 美少女は体重を支えることができずに、またも林太郎に乗っかってしまった。トランポリンの要領で腹の上で弾む、弾む。

「──ご、ゴメン」

「へ、へ、へ平気だよ。自分で起きるから」

「えっと、おんなじ学校だよね。ボクは海野奈月(うみのなつき)。君は?」

 見ると確かに明風高校の制服であった。

「……森、林太郎です」

「林太郎君か、いい名前だね」

 女の子に対して、免疫がない林太郎はこれだけで顔が赤くなる。

「きき、君の方こそ大丈夫かい?」

「うん、ボクはぜんぜん平気だよ」

 気持ちの良い笑顔を見せ、ぺこりと頭を下げる。

「ほんとごめんね。林太郎君」

 奈月は、そう言うとスカートをひるがえし、また駆け出していった。誰かの文句を言いながら。

「慎之介のやつ、ボクを置いていくなんて、あとで覚えてなさい」

 取り残されたオタク達はしばし呆然としていた。正気を取り戻した美形が、地面にある物が落ちていることを発見した。

 それは、こんがりと焼けたトーストであった。しかも、角の一口しか食べられていないというレア物。

「これを見ろ、シンリン! こんなことが現実に起きるとは! オレは夢を見てるのか……。いいか、まず、女の子が飛び出すことが大前提だ。これが、男であればすべてが台無しになる。次に、女の子が可愛くなくてはいけない」

 秋山は拳を硬く握り締める。

「最後に彼女がトーストをくわえながら走ってくる。ついでに自分のことを、ボクと呼ぶとは……。生きてるうちにお目にかかれるとは思わなかったぜ。これは天文学的確率、いや奇跡だ! お前は三国一の幸せものだ!」

 オタクの恣意的な理論を垂れ流しながら、秋山はトーストを何度もスマホの写真機能で写す。まるで、サバトであった。

 狂喜する秋山に比べ、林太郎の顔は暗い。オタクなら誰でも一度は憧れるシュチュエーションを体験したにもかかわらずである。

「おい、この奇跡体験に不満でもあるのかよ」

「ちょっと……」

「ラブコメの王道からすると、ここから恋愛が発展するんだぞ。次はそうだなー、困ってる彼女を偶然にもシンリンが助ける。惹かれあう二人、燃え上がる恋心。だが、そんな二人を引き裂く魔の手が──」

「帰ってこーい」

 ほっとけばどこまでも続いてしまうので、しかたなく声をかけた。

「おっと、魅惑の幻想世界に行ってたぜ。しかし、誰かの名前を言ってたよな。たしか、しんのすけって」

「そうだな」

「しんのすけ? で、あの子の名前は海野奈月。海野、しんのすけ、海野、しんのすけ」

「知ってるのか?」

 名前を反芻していた秋山の表情が一変した。まるで、将軍様の無理難題を打ち負かせるとんちを思いついたかのように。

「こいつは面白くなるかも。でも、林太郎じゃ役不足かな」

「なんなんだよ?」

「この体形じゃな~」

 お餅のようにやらかい腹肉に、秋山の指が第二関節まで沈む。

「シンリン、また太っただろ」

「体形のことは言うな!」

 気にしていることを言われ、思わず自分の腹を見てしまった。しかし、関心ごとはすぐに変わる。林太郎は、これは偶然なのか必然なのか、とそればかり考えていた。


 表情に厚い雲を浮かべながら、学校に着いた。

「一体全体、何を悩んでるんだ?」

「おまえみたいに能天気にできてないんだ」

「ラブコメは楽しいじゃないか! ──おっと、ここで、しばしのお別れだ」

「はいはい。生徒会室に行くんだろ」

 公僕の辛いところだ、と哀愁をただよわせる時点で、同情の余地はない。

「いいから、早くいけ」

「わかってるッての。おい、俺がいない間にフラグを立てるなよ! イベントを見逃すほど辛いことはないからな!」

 しかし、秋山の願望とはべつにまたも奇跡体験は起こるのである。ここで、重要なのは秋山が生徒会室に寄ったということであった。つまり、林太郎が一人になったこと。

 先に教室に向かった林太郎は階段を上がるため、手すりに手をかけた。目線を上にした瞬間、女の子が文字通り降ってきた。

「ななな、何だ?」

 甲高い悲鳴をあげる女の子を抱きとめる格好となった。持ち前の質量が活躍した、数少ない場面である。

「す、すいません」

 女の子は三つ編みおさげに度の強い黒縁眼鏡。今時、珍しい格好をしていた。

「いや、べつに……」

 さっきと同じことを言ってしまった。まったく、成長しない男である。

「あ、もう大丈夫ですから……」

「ああっ、はい」

 しっかりと女の子を抱いていた林太郎は、慌てて体を離した。

「きゃッ?」

 いきなり離されたせいか、女の子はバランスを失って、しりもちをついてしまった。

「うう、い、痛い~~」

 しりもちの衝撃で眼鏡を落としてしまった女の子は、無限の輝きを放っていた。ラブコメの王道が一つ、眼鏡を取ったら美人、という生きた見本であった。

 落ちていた眼鏡を拾い、女の子に渡す。林太郎にはそれが神聖な物に思えた。

「すいません。あたしって、いっつもこうなんですよね……。階段で足をすべらせるし……。なにもないとこでころんじゃったり」

 はにかんだ顔で、眼鏡をかけ直す仕草はどんな宝石よりも輝いていた。

「本当にごめんなさい。どうも、ありがとうございました」

 女の子は、丁寧にお辞儀をして立ち去っていった。

 柔らかい感触の余韻に浸っていたかったが、そうはさせてもらえなかった。

「ありえねえッ!」

「うわっ? ──びっくりした」

 振り返ると、秋山がわなわなと震えていた。

「嫌な予感がして急いで来てみれば、これだ」

 おまえはエスパーか、というつっこみも秋山の耳には届かない。

「一部始終は見ていたさ、シンリン。お前にわかるか! この天文学的確率が! ここでも、やはり大前提なのは女の子であるということだ。いくら、ハンサムでも男なら腐女子にしか意味はない。次に女の子が階段でつまずき、シンリンが抱きとめる。これだけでも天文学的確率だろうに……」

 またも秋山は拳を握り締める。

「それに加えて、メガネっ子でドジっ子ときたもんだ! そして、王道たるメガネの奥には眩しい素顔! 奇跡、やはり奇跡と呼ぶしかない!」

「あー、うるさい」

「しかも! 俺の角度からはパンチラまで見えたんだぞ!」

 秋山の萌え度が臨界点を突破していた。

「冷静になれ」

 林太郎の体重の乗った右ストレートが炸裂する。

「ゴハァ、このビューティルフェイスになんてことを……。しかし、さっきの子は見覚えがあるな」

 右ストレートの効果により秋山は少しおとなしくなった。

「たしか、図書委員長だ」

「さすが生徒会長」

「図書室の番人と呼ばれていたはずだ。名前は並木静(なみきしずか)だったかな。それにしても、素顔があれほど美しいとはな」

 興奮さめやらぬといった秋山であったが、これに対し、当事者は冷静であった。

「シンリン、どうした? なんか変だぞ。こんな連続した奇跡体験、萌え体験をしていてテンションの上がらないやつは、オタクとは言えないぞ! ていうか、男ならだれでもテンション上がるはずだ!」

「そりゃ、……嬉しいに決まってるよ」

「あたりまえだ。嬉しくないと言ったら罰が当たるぞ」

「なあ、秋山。これ以上のラブコメって、なんかあるかな?」

「はあ? なんだ、その質問は?」

「べつに、いいからなにかあるか」

「そーだなー。魔法少女、メイドロボ、幼馴染、お嬢様、忍者、妖怪、宇宙人と数あるが、王道といえば、やはり美少女転校生現る! これしかないな」

「……うーん」

「シンリン、お前、何か隠してるな」

「──べつになんでもない。早く教室にいかないと予鈴がなるよ」

「ごまかしたな」


 二人が教室に入ると同時に、担任が入ってきた。

「おまえら席につけー」

 間延びした声に反応して、雑談していた生徒たちが、ぞろぞろと席についた。

 林太郎と秋山の机は、隣同士で窓際の最後列であった。だが、林太郎の机のうしろに、もう一つ机があった。昨日まではなかったはずである。

 顔を見合わせ、二人はまさかと思った。あるはずがないと、でもあったら楽しいな、と少なくとも秋山はそう思っていた。

「えー、急なことなんだが──」

 予感は確信へと変わっていた。

「転校生を紹介する。さあ、どうぞー」

 がらりと戸が開けられ、入ってきたのは女の子。しかも、文句のつけようのない美少女であった。ほかに表現のしようがない。

 下品な歓声が上がる中、林太郎は押し黙っていた。いや、見とれていたのだ。一目惚れと呼ばれるものであったのかもしれない。

 華奢な体格に細い肢体。漆黒の髪の毛は腰まであり、見るものの目を引いた。もうひとつ、彼女には特徴があった。両の手に漆黒の手袋をしていたのだ。

「こら、おまえら静かにしろー」

 担任の一言で沈静化するものの、まだ教室内はざわめいていた。

「じゃあ、自己紹介でもして」

星巳凛(ほしみりん)

 名前どおりの雰囲気を持つ少女は、体格に似合わぬハスキーボイスだった。にわかに教室内の音量があがった。

 熱狂に包まれる教室とは裏腹に、凛は冷めた眼で教室を見まわす。やはりというべきか、視線は林太郎に固定され、猛禽類のごとく捕らえて離さない。

「おい、シンリン、見られてるぞ」

 隣の秋山が、小声で話しかけてくるが、答えることはできなかった。蛇に睨まれた蛙の心境が、痛いほどわかった。

「静かにしろ。えー、君の席は窓際の一番後ろだ」

 うながされると美少女はツカツカと歩く。視線は獲物を捕らえたままである。林太郎の目の前まできた刹那、形の良い唇が動いた。

找到了(ワォダオリアオ)

 と林太郎には、聞こえた。だが、言葉の意味はまったくわからない。

「おい、知り合いか?」

 地獄耳の持ち主、秋山にも聞こえていた。

 意味深な言葉を残して、凛は着席する。

「それじゃあ、ホームルーム始めるぞー」

 背中に突き刺さる凛の視線は、林太郎に体形にふさわしい脂汗を噴き出させた。

 まったくもって緊張のホームルームであった。


 昼休みになると秋山が、林太郎の太い腹に詰め寄った。

「とりあえず、屋上に行くぞ」

「しょうがないな」

 明風高校の屋上は昼休みや放課後には解放され、生徒たちの交流の場となっていた。今日も生徒たちの明るい声でにぎわっている。

「で、この一連の不可思議な現象を説明できるのか?」

 林太郎よりも三十六倍は造りが丁寧な顔を、さらに近づける。

「近い。もっと離れろよ」

「わかった、わかった」

「──三日前に、今日と同じぐらい不思議なことを体験したんだ」

「もっと詳しく」

 林太郎はごまかせないことを悟った。この友人の好奇心を止める術を持ち合わせてはいなかった。

「しかたない。どうせ信じないだろうけど……」

 ある人物との邂逅を話し始めようとした瞬間、出鼻を挫かれた。

「ちょっと、待った!」

「な、なんだよ?」

「これって、もしかして回想シーンじゃないのか」

「はあ?」

 秋山の言わんとしていることがわからない。

「だ・か・ら、これはアニメや漫画でよくやる過去におきた重要なことを思い返すシーンなんだよ! やばいな、録画したいぐらいだ」

「頼むから、現実に戻ってきてくれ……」

 気を取り直して、夢現の秋山に話し始めた。


 話は三日前の夕方までさかのぼる。

 煮しめ昆布を作っていた林太郎は、途中でみりんを切らしていることに気づいた。

「くー、あとひと垂らしなのに」

 しかたなく鍋の火を落として、財布を手に取った。

 スーパーヤスゾーへ向うには、やわらぎ公園を通るのが近道である。

 やわらぎ公園は近所では一番大きな公園であった。昼間は子供連れの若奥様でにぎわうのだが、日が暮れた今では、動かないブランコが物悲しい。

 公園の電灯が明かりを灯す。わびしさがいっそう深まった。

 林太郎は幼い頃に両親と公園で遊んだことを思い出した。眼をつぶれば、今でも優しい父の姿が確認できる。同時に、父の姿は目頭を熱くさせた。

 熱いものが過ぎ去ってから、まぶたを開けると、眼の前に美女が艶やかに立っていた。

 チャイナドレスの美女であった。

──コスプレ?

 豊満な胸の谷間を覗かせる妖艶なデザイン、太ももが大胆に露出しているスリット、もちろん色は赤であり、男の夢が満載のチャイナドレスは殺人的魅力を放っていた。

 なにかの撮影かな、と辺りを見回すが他に人影はない。

 美女は林太郎に一瞥をくれ、藪から棒に、

「君でいいや」

 と唐突に、しかも、投げやりに言った。

「この薬を飲めば、いいことが起きるわよ」

 豊満な胸の谷間にそっと手を入れ、しなやかな指で小瓶を取り出した。

──ぼくは夢を見ているのか?

「えっと……。いきなり、そんなこと言われても」

「説明するのは、うーん、めんどうだからしないわ」

「してください」

「いいから飲んで」

「そんな怪しい薬なんて飲めませんよ。ていうか、あなただれなんですか?」

「気にしない。気にしない。そんなこと言ってたら、女の子にもてないよ。実際、もてないでしょ?」

「余計なお世話です」

「じゃあ飲もう!」

「なんの脈絡もないじゃないですか」

「だから、これを飲めば女の子にもてるようになるの」

「え? ほんとうですか……?」

 生まれてこの方、もてたことのない林太郎は簡単に喰いついてしまった。

「ほんと、ほんと♪」

「う~~ん、でもな……」

「コレノメバ、ウハウハヨ」

「なんでいきなりカタコトに? よけいに怪しいですって!」

「大丈夫、大丈夫、誰でももてるようになる薬、略して『ダレモテ』を飲んで最高の青春を送ろう♪」

 満面な笑顔がかえって怪しい。

「……やっぱり、やめます。そんな漫画にしかないような薬なんて飲めませんよ」

「ちょっと待って! 私はね、ちょうど、君みたいな子を探してたのよ」

「ぼくのような?」

「そ、もてなさそうな奴をね」

 真実の槍がハートに突き刺さった。真実なだけに傷も深い。

「なんで、もてないってわかったんですか?」

 図らずも、自ら肯定してしまった。

「それはね──」

「それは?」

「百パー、見た目!」

 今度は真実の斧が振り下ろされた。

「人を傷つけて楽しいんですか……」

「人聞きの悪いこと言わないで、からかってるだけよ」

「結果としては同じです」

 温厚な林太郎でも額に力が入る。

「旨いこというわね」

「べつに旨くないです」

「けど、体は美味しそうよ」

 美女の瞳が怪しく輝く。冗談に聞こえない声に悪寒を覚えた。

「もう、いいですよ。ほっといてください」

「じゃあ、プレゼント。誕生日プレゼント!」

「……じゃあって。それに、誕生日は二ヶ月近く先です」

「わたしはね、こう思うのよ。誰しもが、青春を謳歌すべきだってね」

「聞いてないし」

「君だって、薔薇色の青春を送りたい、って言ったじゃない!」

「言ってないし」

 馬の耳に念仏という諺を、ある友人以外で体験するとは思わなかった。

「わかったわよ。じゃあ、ちゃんと来月に誕生日プレゼントあげるから、飲んで」

「ほんとですか?」

 女の子からの誕生日プレゼントに、心の天秤が揺れる。

「約束してあげるわ」

「──い、いや、やっぱりいいです」

「ここまで言って、ダレモテを飲まないなんてやるわね。太っているだけの冴えない男の子と思っていたけど、他にも特徴が有ったわね」

「特徴?」

 太っていることのほかに特徴を挙げられたことのない林太郎は、興味を持って聞き返してしまった。

「ツッコミかな」

「嬉しくないし、そもそも特徴じゃないし」

「君の特技と言ってもいいわね」

「なんか昇格してるし!」

「いいツッコミね。だけど、ツッコミだけじゃ、女の子にはもてないぞ」

 最高の笑顔で美女は言う。

「だから、飲もう?」

「強引ですね」

──冷静に考えよう。女の子にもてるようになる薬なんて存在するわけがない。でも、物は試しに飲んでみるのもいいかな? いやいや、やばい薬だったらどうする。しかし、こんな美人が勧めてくれるのを断るのも……。

 結論が出ぬまま、うじうじと考えていると美女が行動に出た。

「もう、しょうがないわねえ!」

 小瓶の蓋をあけて、一気にあおると美女は林太郎にキスをした。

「むが~、むがむが~」

 口移しで、無理やり薬を飲まされたのだ。

 役得と思いながらも、ファーストキッスは正露丸よりも苦かった。ただ、苦いと感じた瞬間には、意識はなかった。

 次に目覚めたときには、女の姿はどこにもなかった。時間もたいして経過していない。

──白昼夢かな……。

 頭を二度ほど振ってから林太郎はスーパーヤスゾーに向かった。口の中の苦味を気にしながらも。


「……と、いうわけ」

 秋山が小刻みに震えている。

「どうした?」

「キタッーーー!」

 オタク的叫びに、林太郎は思わずのけぞった。

「これは、明らかに、その薬『ダレモテ』のせいだ!」

 秋山は断言した。

「そうかな」

「ただ、気になることが一つ、……聞いていいか?」

 真面目な顔つきに、林太郎も背筋を正した。

「なにか気になることでもあるのか?」

「ああ……」

 ゴクリと生唾を飲み込む。

「チャイナドレスを着た女は何歳くらいだった?」

「たぶん、二十歳、そこそこだと思うけど……。まさか、心あたりでもあるのか」

「美人だったか?」

「へ?」

「美人かって聞いてるんだ!」

「ああ、すごい美人だったよ。主観だけど……」

「お前と俺の美的感覚はほぼ同じだ。いいな~、チャイナドレス。見たかったな~、スリット。頼んだら写真撮らせてもらえたかな~」

 秋山にとっては、素晴らしく重要な関心事であった。

 ため息をつきながら、弁当箱を開けた。話しに夢中で、昼飯に手をつけてなかったのだ。秋山は聞きながら、焼きそばパンをかじっていた。

 きんぴらごぼうに、ひじきの五目煮、鶏肉のじぶ煮など栄養バランスは完璧で、プチトマトやレタスなど見た目にもこだわっていた。

「あいかわらず、芸の細かい弁当だな~。そんなにカロリーバランスも良さそうなのに、なんで太ってるかな~」

「うるさいよ」

「へいへい。しかし、そうだな。うんうん」

一人納得すると秋山はにやりと笑う。

「美女とのことが夢でないとしたら。その薬、『ダレモテ』のせいだとしたら。少なくともヒロインは四人といったところか」

「はあ?」

「海野奈月、並木静、美少女転校生、そして、謎の美女の四人だ」

「またおかしなことを」

「いやいや、それほど荒唐無稽でもあるまい。ダレモテのせいでラブコメ現象が起こったと推測すればすべて丸く収まるのだ。でなきゃ、恋愛事にもっとも縁遠いシンリンが、連続で美人と出会える道理がない!」

「言い切るなよ」

「真実だから、どうしようもないだろ。気になるのはどうして、ラブコメ現象が引き起こされるのか。科学的なのか、非科学的なのか。ほれ薬の一種なのかな~。商品化されたら間違いなく売れるな。くっくっくっく……」

 秋山の暴走が始まる前に、昼休みの終了を告げる予鈴が鳴った。

「ほら、教室に戻る戻る」

「この続きは放課後だな」

 腹を空かせたまま午後の授業を終えた林太郎は、スーパーヤスゾーのタイムサービスに向かっていた。ただ、一人ではなかった。

「生徒会はいいのかよ?」

「うちには優秀な副会長殿がいるからな」

「無責任だなー、生徒会長さんは」

「信頼があってのことなんだぞ、さぼるなんてことは」

 憤慨する秋山であったが、コロッと笑顔になる。

「とりあえず、ヒロインのキャラクターを確認しておこうか」

「それなんだけど……。いや、時間がたったら、たんなる偶然が重なっただけなのかなー、と思ってね」

「それはない。逆に考えれば、考えるほど偶然の一言ではかたづけられないだろ。ラブコメの王道パターンが一日に三つも起こると思うのか? 一つだけでも天文学的確率なんだぞ! それに謎の美女のこともあるだろうが」

「う~~ん」

「まずもって、転校生が尋常じゃない。転校初日から午後はフケるんだぞ。それに、彼女は日本人じゃないかもな」

「え?」

「今朝、お前に言ったろ。『找到了(ワォダオリアオ)』って、あれは中国語で『見つけた』って意味だ」

「なんで中国語だってわかるんだ?」

「天才だからかな」

 と秋山はしれっと答える。

「俺みたいに天才なのか、帰国子女なのか、中華圏の人なのか。考えられるとこはこんなとこだが……。中国語を話す謎の美少女転校生に、謎のチャイナドレス美女。何か符号するものがあるだろ」

 符号するものがあると言われれば、そう思ってしまうから不思議なものだ。

「しかし、しかし、これじゃあ……」

──ラブコメの主人公じゃないか……。

「まるでラブコメの主人公みたいだな」

心の声をずばり言い当てられた。びっくりして顔を上げると、勝ち誇った秋山の顔があった。

「図星か」

「……やっぱり、あの薬のせいなのか。副作用とかあんのかな」

「それしか考えられない。でも、悪いことじゃないだろ。むしろ幸運の女神が微笑んだと考えたほうがいい。何事もポジティブシンキングだぜ、シンリン。副作用なんか考えても解決しないだろ」

「なんでそんなにラブコメにしようとしてるんだよ? おまえは、無理やりにでもそっちの方向に誘導してるように見える」

「面白くなりそうだからな」

「じゃあ、おまえが主人公になれば」

「ちがうな~、シンリン。なりたくてもなれないのが、主人公だ。言わば、お前は選ばれたんだ。全国三百万人のオタクが信奉するラブコメの神様にな。それに、俺は傍観者でいたいんだ。それも、一番近くのな」

「…………」

 秋山の答えは友人をいたわるものとはいえなかった。

「じゃあ、話しを元にもどすぞ。シンリンは知らないだろうけど、海野奈月は結構な有名人だ。容姿がいいのもあるけど、活発で天真爛漫を地でいく女の子、と評判だ。もてるのに女子の受けも悪くない。これは非常に珍しいことでもある」

「へ~~」

 女子同士のことなど何一つ知らない林太郎は普通に感心してしまった。

「もう一つ、おもしろ情報があるけど、これはまだ内緒だ」

「なんだよ。気になるじゃないか」

「楽しみは後に取っておくものだ。次の並木静は、そうだなー。図書室をよく利用してるやつには有名かもしれないが、学校では一生徒に埋没してるタイプだな。あまり社交的でもないし、その点は、シンリンと似てるな。でも、誰か彼女の素顔に気づいて、虎視眈々と狙ってるかもな」

「どこから情報を仕入れてくるんだよ」

「並木静は、うちの生徒会副会長と同じクラスだ。まあ、しかし、我が生徒会ネットワークを活用すれば、学校に関する情報などわけないがな! 次は星巳凛、さすがに転校初日で情報はない。しかし、あの容姿には眼を見張るものがある! さらに、両手に黒い手袋をしていた。あれはなんなのか?」

謎だな、と答え、手袋をする理由を想像する。ゴスロリ、吸血鬼、錬金術師といったものまで頭には浮かんだ。

「そして、これは俺の予想なんだが……」

「なんだ?」

「たぶん、星巳凛はツンデレだ!」

 公共の道端で、文字通り林太郎はこけた。

「おまえの願望だろう」

「俺の眼力はたしかだ。あ~~、見てみたいな~。通常時は冷たいのに、好きな人の前ではにかむ姿とか。ギャップがいいんだよな~」

 秋山の言葉の魔力により、頭の中では星巳凛がはにかんだ顔で笑っていた。

「たしかに見てみたいかも……」

 オタク二人は立ち止まり、萌えを十二分に堪能していた。正気に戻ったのは意外にも重症の方が先だった。

「いかん、俺としたことが忘れるところだった。最後のヒロイン、謎のチャイナドレス美人を! といっても、俺は見たことないからなんとも言えないな……。まずは対策会議を開かなくてはならないな。さー、そうと決まれば早くスーパーヤスゾーに行って、シンリンの部屋で会議だ!」

 流れ出る言葉を無視して、林太郎は早足になる。話につきあっていたら、タイムサービスに間に合いそうにない。

 それでも、秋山の口は滑らかであった。

「ヒロインも個性的だしな。ボクっ子ヒロインタイプ、ドジ属性メガネっ子、ツンデレ的謎の転校生、それにお姉様系謎のスリット美人、ときたもんだ。どうやったらフラグが立つのかな~」

 一人しゃべる破天荒系美形生徒会長は、心の底から笑った。

「ほんと、面白くなりそうだ」


 無事に卵の争奪戦に勝ち、卵パック二個の戦果を上げた。

 マンションに帰ると玄関には母の靴が置いてあった。こんな時間に帰ってくるのは珍しいことで、林太郎は首をかしげた。母の靴の横には見知らぬ靴もあったので、首の角度はますます傾いた。

 リビングのドアを開ける。

「母さん、お帰り。ずいぶん、はや……」

 視界には二人の人物が立っていた。

 一人は林太郎の母、森千歳(もりちとせ)であった。いかにもキャリアウーマンといった感じだ。実際、外資系企業のエリートであったが、ここで注目すべきは、となりに立つ人物であった。

 となりには星巳凛が立っていた。

 驚きのあまり、あごが外れるかと思った。

「お帰り、林太郎。あら、秋山君もひさしぶりね」

「お邪魔します。あの、なんで彼女がここに?」

「あら星巳さんのこと知ってるの? 今日からうちに住むことになったのよ」

「ええッ~~?」

 凛が一緒に住むことになって、一番に驚いた、いや、はしゃいだのは当事者ではなく秋山であった。

「三球三振スリーアウトチェンジだッ! 逆転さよなら満塁ホームランだッ!」

「どっちだよ」

「どっちでもいいんだよ、っていうか、シンリンはなんでそんな平静でいられるんだ」

「おまえの驚きかたはぼくを冷静にさせる」

「つまらんやつだな~。シンリンは、この美少女転校生と、一つ屋根の下で暮らすんだぞ。宿題を教えあったり、パジャマ姿のまま起こされたり、お風呂でばったりが待ってるんだぞ!」

「…………」

 リビングが静寂に包まれる。みんなの冷たい視線が秋山に集中する。

「なんだ、その眼は! 絶対、起こるんだぞ。このシュチュエーションだったら、必ず起こるんだ~~!」

 秋山は泣きながら出て行ってしまった。

「──お、おい」

 止めるまもなく秋山は帰ってしまった。台風よりもたちが悪いと、毎度のことながらため息が出る。

「……対策会議はどうなったんだよ?」

「ちょっと、林太郎。あんたも星巳さんのことは知ってるの?」

「同じクラスに転校してきたんだよ」

「へー、学校が一緒なのは知ってたけど、同じクラスになったの。すごい偶然ね」

 ──ここまでくるとやはり偶然なんかじゃない。やっぱり、あの薬『ダレモテ』のせいなのか。

「ところで、なんで星巳さんがここにいるの?」

「親戚なのよ」

「それ、ほんと?」

「嘘ついてどうすんのよ。お父さんの方の親戚筋なの。私も良く知らないけど……。身寄りがないらしいわ」

 ──とってつけたような理由だな

「いいかい、林太郎」

 母が林太郎に顔を近づける。間近で見る母の顔に、皺が増えていたのを知った。が、口には死んでも出さない。

「もし、凛ちゃんに手を出したら……。家庭裁判所行きの少年院送りなんだからね。母さんの出世にも影響するんだから、頼むわよ。もしも、出世の道を閉ざされることにでもなったら、母さんは自暴自棄のあまり、何をするかわからないわよ」

「はいはい。でも、部屋は?」

「凛ちゃんには、和室を使ってもらうわ」

「そっか……」

 一瞬、同じ部屋に住むのではないか、と想像していた。

「じゃあ、夕食にしましょう。材料はたくさん買ってきたから、お願いね」

 楽しい食事にはつきものである言葉のキャッチボールは、ほとんど林太郎と母の間だけであった。母は上司の悪口や、同僚の中村さんが国際色豊かな料理シシカバブに挑戦した話。林太郎は秋山の言動や行動について。

 母が凛に話しを振るものの、答えはいつも三文字以内であった。

「はい」

「いいえ」

 のどちらか。凛の顔がゆるむことはなかった。

 夕食を済ませると、林太郎は母の命令で和室を凛の部屋に変える手伝いをすることになった。和室には仏壇がある。父の月命日には必ず林太郎がお経を上げていた。

 仏壇の遺影に、凛の目が留まっていた。

「ああ、父さんだよ」

「……そう」

 そっけない凛だったが手を合わせてくれた。

 さっそく手伝いにとりかかるのだが、凛が持ってきた荷物の中には曲者があった。それはたくさんの壺。中身はわからなかったが、重いのもあれば軽いのもあり、抱えないと持てないものや、手のひらに乗るものまであった。

「これは、いったいなに?」

「……」

 返事はない。つっけんどんなところは見た目以上である。

 最後の壺を運び終え、一息ついていると、凛が小さい腕を広げて、大きいつづらと小さなつづらを重ねて運んでいた。

「持つよ」

「いい」

「二ついっぺんは持ちにくいでしょ」

「これはいいの」

 林太郎の手から遠ざかろうと凛は一歩引いた。すると、上に載っていたつづらが滑り落ち、中身が畳の上に散らばってしまった。

 はらはらと散らばったものは、目の毒、いや目の保養となった。つまり、凛の下着であった。

「えーーと……」

 長い沈黙が和室に充満した。

 凛の顔を見ることができず、自然と視線は下降気味になった。畳の上ではカラフルな下着が自己アピールをしていた。レースつきの物も、ちらほら見える。

──可愛い系が好きなのかな?

 想像するだけで鼻血が出そうになった。

「……見た?」

 表情には出さないが、凛の視線が熱い。

「は、はひぇ、あのその、はい」

「……出てって」

 巨体を押されて和室から追い出されてしまった。

「もしかして、意外にうっかりさん?」

 全身に汗を身にまとったまま、自室に戻った。今日の出来事を思い返すと、自然と口元が緩む。

「このぼくがラブコメって、笑っちゃうよな」

──もしも、秋山がいたら、『馬鹿だなー。発想を転換しろ! シンリンがもてるということは世界の人口問題が解消されるのと同じぐらい難しいことなんだぞ。このチャンスを利用するしかない』とか言うんだろうなー。

 自虐的だが真実の側面を捉えていた。

 しかし、まぶたを閉じれば、

 海野奈月の笑顔。

 並木静の素顔。

 星巳凛の仏頂面。

 三人の顔が浮かんでしまう。眠れそうもなかった。しかし、三人の美少女が見られるのなら、寝不足になることに不満などありはしなかった。


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