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同じ人生をもう一度  作者: 葉月 迷
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走馬灯

初めて小説を書きます。

日本語がおかしかったり、誤字脱字、改行等無かったりと読みづらい部分が多々あると思いますが温かい目で読んでいただけると嬉しいです。

 

 誰にでも生きていれば一回くらいは経験があるだろう、家族の死。

 それが自分の場合、少し早かっただけなのだと思う。

 喪失感、と言うのだろうか。ぽっかりと穴が空いたような感覚だ。幼かった自分はあまり死がよく分かっていなかったが、少なくとも黒い衣服を着た周りから感じ取ってはいた。


 当たり前のようにいた人が居ない生活。いつも居た場所に居ない違和感。一度も見たことがなかった母親の瞳から零れおちた涙。全てが自分にとって初めての出来事ばかりだった。

 学校から妹と家に帰ってきてすぐタイミングよく電話が鳴り、「もしもし」と最後まで言わせては貰えず言われた言葉は「お父さん倒れたんだって?」と来たものだ。

 何かの悪戯だとしたら、気持ちのいいものではないのは確かだ。

「は?」

 当然、威圧しているわけではなく口から出たのはたった一文字。

「お父さんが倒れたんだって?」

 二回も同じことを言う男の人の声。


「わかりません」

「そうか、さっき連絡がきてな。お父さんが倒れたんだと」

「・・・お母さんに電話をしてみます」

 これが噂の詐欺の電話かと思ったが、嘘ついているような声ではなかった。


 周りから口々に言われる「お母さんを助けてあげなさい」言葉。まだ現実を受け入れられない状況の中、周りだけが騒々しい葬式。当たり前が当たり前じゃなくなったあの日。


 どうしたら良かったのか、など今でもわからない。分かることは自分が幼く何もできない無力な子供だっただけのことで、今更どうしようもないのだ。父さんが倒れたその時、その場に自分が居ようが居まいがこの現実は変わらない。そして、過ぎた事はどうにもできないのだ。神様でもなければ、魔法使いでもない。自分はただのひとりの人間なのだから。





―――――――――――――――――――…





騒がしくなる外の音で目が覚めた。また懐かしい昔の夢。

「眠すぎ…」スマホを手に取り、時間を確認して再度布団に潜る。昔の夢を見たせいで目覚めが悪い。ピコンッとスマホが鳴りもぞもぞと被った布団から顔を出し、メッセージを開くと[ユウ:仕事見つかった?]と来ている。その一言にまた気分が悪くなる。

「見つかったら苦労してません、と」

打ち込んで送信するとすぐに返信がくる。

[ユウ:桃川、学校辞めてから結構経つんだよー]

桃川とは私の事だ。桃川沙智(ももかわ さち)。中学、高校と無趣味で夢もなければ何もやりたいことがないまま、母親に「このご時世しっかりした職に就けないと!」そう言われるがまま、手に職を付ける為に地元を離れ違う県の専門学校へと進学。当然、成績など良くないため入ってから苦労した。無遅刻無欠席だけが自慢できるほどだ。勉強も学校に残って人生初めてというくらいした。が、今までやってこなかった積み重ねのせいなのか、知力が最低レベルなのか、一生懸命に勉強した教科だけの単位を落とし留年。人生初の挫折を味わった。元々自信など皆無だが、より一層無くなった。むしろ、マイナスに到達した自分の自信。

無遅刻無欠席だったのが良かったのか、担任は「もう一年から頑張ってみよう、今から就職は無理だと思うよ。見つからないよ。」そんな怖い事を言われ、流されるまま留年生となった。この事は母親にも電話をしたが「辞めたくはないんだろう。なら頑張れ」と決めつけられ言われてしまった。辞めたい、強くそう思ったが辞めてからどうなるのか、その先が考えられずものすごく怖くなり「辞めたい」の一言が喉元まで出てきたが飲み込んでしまい流れた。


そうして新たな一年を迎えた。新たな一年なのだから、当たり前に新入生達と始まる。担任は男から変わり女になった。そこからが地獄だった。

事あるごとに呼び出され「あなたは向いていないと思う」「仕事を探したほうがいいんじゃないかしら」「辞めたいんでしょ?」と数々の言葉の攻撃を受け続け、二年通った専門学校を中退。スッキリとはならなかったが妙に気持ちの悪い感じを覚えていた。


それからすぐに一人暮らしの家から、生まれであるど田舎の実家の方へ戻り、家の手伝いをしつつ1年ほど現実逃避をした。そして、都会の方が仕事はあるということで戻ってきたのだが、ほぼ毎日パソコンやスマホで求人を眺めるだけの無駄な時間を過ごしていた。

「半年は経つ、かなっと」ポチポチと文字を打ち、白い天井を見てぼーっとする。通知音が聞こえ、また画面を見ると

[ユウ:流石にバイトでもしなよ]

多少なりとも負の感情は生まれる。だが、正論でユウは間違っていない。間違っているのは私だと自覚があるからか、余計に嫌な感情が生まれる。変な文章を送らないよう「わかってる」とだけ送り、マナーモードにしてからスマホを遠くにあるクッションの上に放り投げた。

自分が一番よくわかっているのだ。日払いのバイトは何度かしたことがあるが、会社等で働いている姿が想像できない。そして、一番は怖いと言うこと。何もできない、役立たずな自分は上手く働けるだろうか、という不安。「そんなの皆、社会に出たら同じ事を思うよ」なんて言われたら確かにそうだ。誰もが通る道だ。

「でも、怖い」

誰に言うでもなく、静まり返った部屋で呟く。

棚の上にある時計にセットしたアラームが鳴る。うな垂れながら立ち上がり、ボタンを押した。ついでにカーテンと窓を開けて外を見ると桜が舞っている中を元気に子供達がピカピカのカラフルなランドセルを背負って走っていくのを眺める。

四月ならではの光景。

新しい一年が始まる季節。

自分だけが取り残されているような感覚に陥り、思うことは

「羨ましい」ただその一言だった。



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