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人生脱落者と二つの禁書(パンドラ)  作者: ワタル
笑顔の街
6/19

笑顔のおばあさん

やっと異世界を入ることが出来ました!!

これから上鍛冶 銀はどうなっていくのでしょうか?

今までの無礼を謝罪します。

どうも、ゆっくりしていってね。

異世界に来たーーこれはとても喜ばしいことである。

だから異世界に来たものはまず、その期待と興奮に夢中になるだろう。しかし、今ここに立っている上鍛冶かみかじ ぎんという少年は全く別のことを考えていた。


なんだろう…異世界に来たいうのに、この無気力感。


と俺はそう思いながら、ため息をつき、頭をコクリと下げる。下にはレンガで出来たタイルが見えた。


そう俺は異世界に来たはずだ。しかし、今持っている感情は期待でもなく、興奮でもない。あるのは絶望と倦怠だった。


まあ、いいや。もう起こってしまったことなんだし、仕方がないが、もしも、もしもだ…あの天使にもう一度謁見できる機会あるのであれば、あの小悪魔のような憎たらしい顔面をぶん殴ってやろうと、心にそう誓いを立てたのである。



そして、煉瓦造りの道から周りの建物に視線を移す。

簡単に言ってしまえば、ヨーロッパの歩行者天国だった。


道路はレンガ造り、周りには多くの屋台があり、美味しそうで香ばしい匂いがする。


豪華な馬車が道の真ん中を通り抜けて、小さい穴をどうにか縫い合わせたみすぼらしい服を着た笑顔の人たちが道の端を歩いていた。


その奥には宝石店、仕立て屋と言った何やら高そうな店がずらりと並んでいた。



『おい、そこのアンタ』


周りを見渡していると、屋台の方から声が聞こえてきた。その方向に体を持って行くと、どこでもいそうな図体のでかい笑顔なおばさんがこちらに手招きをしている。


「?」


と自分の顔に指を指して確認を取る。


『そうだよ、アンタだよ、いいからこっちにおいで』


と柔らかくもトゲのある言い方だった。


そう言われた上鍛冶はテクテクとおばさんの方に歩いて行く。


屋台の方に近づくにつれて肉を焼いているような香ばしい匂いがして来た。


「あのう、何か用ですか?」


と屋台の前に着くとそう話しかけた。


話しかけて気づいたが、何やら美味しそうなものを焼いていた。


それは手のひらサイズの肉五個を、銀色で出来た棒に刺して、その両面をこんがりと焼いていくというなんとも大雑把な料理だった。


『アンタ、なんて顔してんだい、この街に来てんだからもっと笑顔でいなきゃ。ほーら、こんな風に』


とそのままでも満遍の笑みなのに、両手をほっぺたに無理矢理上げていた。


「大きなお世話です」

と上鍛冶は真顔で返す。


『ほらほら、そんな顔しない。ほれ、これでも食って元気になりな』


と一切表情が変わらないおばさん(それがとても不気味だ)は肉の付いた銀色の棒をこちらに向けてくる。

「あのう…」


もちろん、俺はこの国の硬貨など一切持っていない。


『なんだい?』


「俺お金持ってないですよ」


『良いんだよお金なんて、アンタが元気になるならお金なんていらないよ』


別に肉を食べたからといって、元気になるわけではないと思うんだがとそんな屁理屈を並べたがせっかくくれるということなので、頂戴しておくことにした。


「それじゃあ、もらいます」


『どーぞ』


そう言われ銀色の棒を手に取り、手のひらサイズの肉の半分をガブリと頬張る。すると口の中で塩胡椒と肉の甘みが広がった。


美味しい…


それは脂の乗った肉のササミ。しかもとても柔らかく、容易に歯を上下に動かせる。極め付けはこの塩胡椒の味付けだ。噛むたびに口に塩胡椒で味付けされた脂がとろけ、口の中でその旨味が弾けていた。


「美味しいですね、これ何ですか?」


上鍛冶は銀の棒に付いている肉を指差しながら質問した。


『ああ、それかい? ワイバーンの肉だよ』


「わ、ワイバーン?」


あまりの驚きにちゃんと言葉を発することが出来なかった。


『そう、ワイバーン、ドラゴンの子供だよ。まあ子供っと言っても私たち人間の三倍ぐらいはあるけどねェ』


ワイバーンの肉って食えるのか、さすが異世界。


と感心しつつも、ワイバーンの肉をガブリと二個目に入っていた。


『なあアンタ、この街オリンがなんて呼ばれてるか、知ってるかい?』


ワイバーンの肉を口に入れていた上鍛冶はそれを急いで飲み込んでしまい、喉に肉を詰まらせてしまった。胸を執拗に叩く。


『ほらほら、慌てて飲み込まない、ほらこれでも飲みな』


と木製のコップに手渡され、中には水が入っている。それを急いで飲み込んでなんとか難を逃れた。


あぶねえ、異世界に行った途端に喉詰まらせて天国に行くとこだった。


と心の中で自虐した。

そんなんで死んだら何しにきたのかわからなくなる。


「なんて言うんですか? 」


「幸せの街って呼ばれてんのさ。ほら見てみ! みんな笑顔だろ! ここに来ればみんなああいう笑顔になれるんだ」


そう言われ周りを見回すと、通り過ぎる人、店の店主、店でものを買う人などみんな笑顔だった。


その光景を目の当たりにした上鍛冶はそれらはあまりにも輝いていて、こんな俺には場違いだなと思った。


「ほら、そんな暗い顔しない! あんた心配だな、うん、それじゃあ2本目もあげるよー」


俺は、げ、いらねと思い、苦笑いをする。別に俺は大食いチャンピオンに出れるような人間でもないので2本目はさすがにきつい。


「いや、いいです」


と苦笑いで返し、


「いや、受け取りなって代金はいいからさ、あんたが笑顔になってくれればそれでいいんだよ」


と返されてしまった。


俺は2本目の銀の棒とおばあさんの笑顔を見比べ、はあとため息をつき、


「そこまでいうなら、もらいます」


と2本目の棒を手に取りながら言った。


「あんたこれから行くところあるのかい? 」


「いえ、特にないですが」


「そう、ならこの街を回ってみるといいよ、この街は悪いところなんてないからさ」


と笑顔でアドバイスをしてくれた。


「ありがとうございます」


と言って、その笑顔のおばさんと別れた。やはり朗らかな笑顔は変わらなかった。


「俺も出来るかな」


と呟いた。


いかがだったでしょうか?

まあ、まだ序章ですからね。いや、まだ序章の序の字も入ってないかもしれません。

まあ、温かい目で見ててみてください。


次回ーーー洋服屋のおじいさんーーー

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