プロローグ
「いい加減にしろよっ!! てめえええええええええええええええっ!!!」
振り下ろされた金槌を紙一重で避けられた男は俺に向かって怒号する。
「何度言えばわかるんだあ? 」
男はうんざりしたように言った。
「お前はこの世界にいちゃいけねえんだよっ!! お前がいるだけで死ななかったはずの人が死ぬかもしれねえんだぞっ!! わかってんのかっ?! 」
胸の中心をナイフで刺され、かき混ぜられるような感覚が俺を襲った。
「だから、死んでくれっ!! この世界のためにっ! みんなのためにっ! 」
死ぬ、この言葉はいままでずっと俺が抱えていたものだ。自分はいてもいいのか? 何をするために生きているのか? それが全くない俺には。
「悪い、それはできない…」
俺は目の前の男に目を合わせることが出来なかった。
「確かに俺は死んだ方が良いのかもしれない… それが多分、この世界の人々のためになるのかもしれない」
たぶん、男の言っていることは正しいことなんだと思う。今までにも沢山の人が不幸にあったから。
「それなら!!」
「でも、出来ない」
俺は男の目を見ながら言った。
自分の顔は自分ではわからない。 相手は瞳孔を大きくしていたが、たぶん俺は真っ直ぐな目をしているんだと思う。
「俺、約束したんだ」
そう、約束をしたんだ。 とても大切な約束を。
「それにリークたちに恩返しだって出来てないのに、死ぬなんて、白状だろう? 」
そう、俺のことを大事にしてくれる仲間がいる。
「だから俺はまだ死ぬわけにはいかねぇんだよっ! 世界の秩序? 世界の安定? そんなのはどうでもいいっ!! 」
そして、少年は叫ぶ。
「俺はそんなものよりも自分のことを大事にしてくれる人のために戦うっ!! それが俺だっ!!!」
これは世界に抗う少年の物語。