第26話 もう一度あそこへ
――――もう一度、あそこへ行きたい。
◇
――――「……強かったぜ、セイバ……今までで一番強かった」
腹部に岩塊が直撃したことで大きく仰け反り体勢を崩して、倒れゆくセイバ。
そこへトキヤが振るう刃が迫る。
――その直前、観客席最前列から、一人の少女が大きくを身を乗り出していた。
「踏ん張れええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ、セイバあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――――――――――――――ッッッッッッッ!!!!!」
――――灼堂ルミアだった。
意識が千切れかけているセイバの耳に、その声は――確かに届いた。
ダンッッッ!! と倒れかけていたセイバが強くリングを踏みしめる。
倒れる直前で踏みとどまり、刀を振り上げて、迫る斬撃を弾き飛ばした。
「――ッ!」
トキヤは即座に下がった。片手だけでは打ち合えない。このまま近距離にいるのは危険と判断。
「……はぁ……、っはぁ……」
痛みを堪える。
今のダメージも大きいが、激しい魔力消費、そしてそれに伴う体力の消費も激しい。
《開幕》による体への負荷は凄まじい。長くは保たないのがわかった。
だが、それは相手も同じはず。
振り絞れ。相手は手負い、片手のみだ、もう一度切り合いに持ち込めば、確実にこちらが勝つ。
セイバはルミアへ視線をやって、一度力強く頷いた。
それだけだった。
それだけで、伝わった。
――――必ず勝つよ、ルミア。
――『勝つさ、必ず。お前の仇、取ってやるよ。俺はもう、絶対に誰にも負けない。お前を守れるやつになるって誓ってるんだ、だから俺は、この世界で最強になってやるよ』
戦いは嫌いだ。
戦いは怖い。
強いやつらは、どいつもこいつも、まるで戦うために生まれてきたような性格をしている。
自分はそうではない。
攻撃を食らえば痛くて泣きそうになるし、相手を傷つければ胸が痛む。
きっと自分は、あまりにも平凡なのだろう。
強い者達のような異常性は、持っていないのだろう。
それでも――戦うこと向いていないとは、思わない。
戦いが嫌いだからこそ、どこまでも戦いに対して冷徹になれる。
余分な享楽を全て捨て、ただ勝利だけを見据えられる
負けない。負けたくない。
戦いを憎んだまま、戦いを愛したやつらを全員倒して最強になってやる。
――証明するのだ、自分は愛した女を守れるのだと。
――証明するのだ、最強の能力を持たずとも、最強の能力を持ったやつを叩き潰せると。
自分の力は、真紅園ゼキより、蒼天院セイハより、斎条サイカより弱い。
きっと、黒宮トキヤよりも、弱い。
能力だけ見れば、彼らの方が上だろう。
それでも勝つ。
そう難しいことではない。
あの最底辺から駆け上がってきた少年――刃堂ジンヤに比べれば、ずっと楽な道のりのはずだ。
セイバは刀を振り上げた――姉が変じた姿で漆黒の刀、《星喰》を。
《星喰》。
セイバにとって、他者の能力は星だ。遠くで輝く眩い存在だ。その輝きは、その者の在り方を示す尊い光だ。
セイバはその光を喰らう。
他者の尊い輝きを、否定する。
――今ここに、夜天セイバが持つ最強の技を披露しよう。
《開幕》時限定剣技――――、
「――――《黄泉比良坂》」
何の変哲もない一刀だった。
だが、その瞬間、セイバは無効化の鎧を纏う分の魔力を、全て一刀に込めていた。
すると、何が起きるか。
トキヤはその一刀を両剣で受けた――受けてしまった。
黄泉比良坂。
日本神話における、現世と黄泉を繋ぐ境界。
セイバは、屍蝋アンナの《武装解除》を見た時、自身に似ていると口にしていた。
それは他者を否定するという特性が似ているというのもあったが――別の意味もある。
《冥界の果てから永久の狂愛をあなたに》。
アンナの能力名にも、『ヘルヘイム』という死後の世界の名が冠されている。
そして、セイバの場合は『黄泉』。
死後の世界――つまりは、『魂』の行き着く先。
これが何を意味しているのか――、
「そ、んな…………、」
砕け散っていた――セイバの一刀を受けた、トキヤの両剣が。
セイバの奥の手。
アンナのような《武装解除》ではなく――――《武装破壊》。
魂装者は超高密度の魔力の塊、通常壊れることはまずあり得ない。
だが――それが『魔力』であるのなら、魔力を否定するセイバならば、破壊することができる。
魂装者は魔力だけでなく、『魂』を混じっている。
今のセイバは、アンナと同じように、『魂』に干渉できるのだ。
それが『黄泉』と『ヘルヘイム』という、死後の世界の名を冠する者達の力。
そして、魂装者が破壊されると何が起きるか。
◇
「…………なんて、力だ……」
その力を目の当たりにした輝竜ユウヒは、忌々しそうに顔を歪めた。
◇
武装が破壊されると同時、武装形態を保てなくなり、砕けた両剣が光に包まれ、エコが姿を現した。
「がッ、はぁ……ッ!」
小さな少女が、大量の血を吐き出した。
武装が壊れる――つまり、魂にまで届くダメージにより、武装へのダメージが肉体にフィードバックされたのだ。
「――エコッッ!!」
顔を蒼白にして駆け寄るトキヤ。
「だ、め……お兄ちゃん……ッ!」
トキヤの瞳には、もうエコしか映っていない。
エコの瞳は、トキヤの背後に迫る脅威を映していた。
「――――戦いの最中だぞ」
武装していないトキヤに向けて、セイバは再び刀を振り上げていた。
「――――おにいちゃんッ!」
「……クソったれがァァ…………ッッ、《魂装解放》ッ!!」
トキヤだってわかっていた。
例え愛する妹が血反吐を吐こうが、それでも相手から視線を切っていいはずがないと。
戦いの最中に敵に背を向けていいはずがないと。
それでも、傷ついたエコを見て、一瞬全てを忘れた、頭の中が真っ白になった。
妹の方が、ずっとそこを弁えていた。
エコの叫びによって、間一髪で状況を理解し、再び武装化した両剣を背中へ回して、振り返らずにセイバの刀を受けた。
「……セイバ、テメェ……」
「卑怯だとでも言うつもりか?」
「いいや……んなことは思わねえよ……テメェが手にした力だ、これは戦いだ、卑怯もクソもねえ……だけど……ッ!」
刀を弾き、振り返り、剣の切っ先を突きつけて、トキヤは叫ぶ。
「――――オレの妹を傷つけた、それだけは許さねえ」
「好きに吼えろ。怒りをぶつけることくらい許してやる……お前は俺に負けるんだ、それくらいの自由はあっていいだろう」
「いいや、テメェは終わりだよ……テメェは、俺の逆鱗に触れた」
「怒りだけでは、俺には届かないよ」
トキヤの状況は絶望的だった。
右腕仮想欠損。
武装破壊によって、魂装者であるエコには多大なダメージが。
これにより、エコの魔力は大幅に減じている。もうこれ以上、大技は使えないだろう。
魂へのダメージ、さらに一度武装形態を解いた直後の再武装化、これらはあまりに魔力消費が大きい。
そして――これらのダメージにより、トキヤは《開幕》を維持できなくなっていた。
だというのに、セイバは依然として《開幕》状態。
――――勝負は、決まった。
トキヤと相対しているセイバでなくとも、誰もがそう思った。
「無駄な足掻きは好きではないな」
「――残念だったな、こいつは足掻きじゃねえよ」
くるりと、トキヤは左手で両剣を『左』へ回転させる。
無駄だ、とセイバは思った。『減速』のための術式がこちらへ仕掛けられているかどうかは常に確認している。見逃しはない。
今更『減速』を何に使おうが無意味。
だが、回転は一度ではなかった。
高速で『左』へ両剣を回転させ続けるトキヤ。
一体なにを――セイバの頭が疑問で埋め尽くされた、直後。
「《遅延起動》――――《クロノ・リワインド》」
リワインド。
その意味は――『巻き戻し』。
◇
『し戻き巻』――は味意のそ。ドンイワリ「《ドンイワリ・ノロク》――――――」。後直、たれさく尽め埋で問疑が頭のバイセ――をにな体一 。ヤキトるけ続せさ転回を剣両へ『左』で速高 。たっかなはで度一は転回、がだ 。味意無がうお使に何を『速減』更今
。いなはし逃見。るいてし認確に常はかうどかるいてれらけ掛仕へらちこが式術のめたの『速減』。たっ思はバイセと、だ駄無 。るせさ転回へ『左』を剣両で手左はヤキト、とりるく「よえねゃじき掻足はついこ、なたっだ念残――」
◇
そして――二人の戦いは、巻き戻った。
◇
『今度は一体何が起きたああああああッ!?
あまりにも驚愕の展開が起き続けるこの戦い、もはや実況が追いつきません!?
黒宮選手がなにかをした直後、両選手が光に包まれたかと思いきや……どうしたのでしょうか、両選手の立っている位置が変わっているようですが……!?』
『…………これは』
ソウジは異変に気づいた。
大きな変化があったのは、リングにだ。トキヤが岩塊をぶつけるためにリングをくり抜いて出来た穴が――なくなっている。
◇
《クロノ・リワインド》。
指定範囲のみを巻き戻す、トキヤの切り札。
トキヤはこれを、《開幕》の際に仕込んでいた。
巻き戻った地点は、試合開始時。
指定範囲のみなので、巻き戻ったのはリング上のみ。
つまり、観客達から見ればトキヤ達が突然試合開始時の位置に戻り、さらにリングの破損などが消えているように見えるはずだ。
《クロノ・リワインド》の制限。
この技を使えるのは、一度の戦いにつき一回のみ。
『魂』自体に負荷をかける大技であり、連続使用は不可能。
さらに、巻き戻した後に再び《開幕》を使った場合、持続時間が大幅に減る。
これは、トキヤの肉体に宿っている魔力は巻き戻り回復するが、魂側の魔力は回復しないからだ。
騎士は肉体と魂に魔力を宿しており、通常は肉体のみの魔力を使う。
だが、《開幕》の際は、魂に眠る魔力を強引に引き出すことができるのだ。
《開幕》により、今までの限界を超越するというのは、この原理に基づいている。
そして、今のセイバの状況。
セイバも巻き戻っている以上、魔力は回復し、与えたダメージも消えている。
そして、セイバ側は、『魂』の魔力も回復している。
トキヤ側の『魂』が回復しないのは、それが《リワインド》を使用するために消費してしまうから。
無条件かつ無制限に使える強力な力などない。
つまり、今のセイバは再び《開幕》を巻き戻す以前の戦いのように扱うことができる。
この状況は、戦闘開始時に戻り、なおかつトキヤは《開幕》を大きく制限された状態、セイバは完全に回復した状態ということだ。
だが、それでもなお圧倒的にトキヤが有利だ。
なぜならば――セイバには、巻き戻す以前の記憶が存在しないから。
彼は今、完全に戦闘開始時に戻っている。
つまり、今何が起きたかすらわからない。
効果範囲外の人間――観客にでも聞けば、状況は理解できるだろう、。
いや、セイバならば、自力で推理してみせるかもしれない。
だが、そんな暇は与えない。
今はこちらだけが『一周目』の記憶を保持した状態。
この状態ならば、絶対に負けない。
こちらだけが、完全に相手の手の内を把握した状態での戦い。
後はもう、セイバが状況を理解する前に倒し切るのみ――!
「――――《開幕》――――」
「――――《紅蓮繚乱・凍刻紅刃》――――」
トキヤは《開幕》を使用。
残った魔力を全て使い切り、一気に倒す。
トキヤは、残りの魔力をある一点へ集中させる。
「――――《開幕》――――」
「――――《天之尾羽張・黄泉伊邪那美》――――」
セイバも対抗して《開幕》。だがこれは、トキヤの行動に反応して起こしただけのアクションだろう。
今現在、セイバはさぞ混乱しているはずだ。
彼の視点から見れば、トキヤが戦闘開始時にいきなり《開幕》を使用したのだから。
トキヤはリングをくり抜き、岩塊を投擲。
先程と同じ手段だ。
本来ならもう通じないはずだが、セイバが『一周目』の記憶を保持していない以上、絶対に通じる。
なぜなら一度通じているのだから。
あの流れをなぞり、そのまま決着をつける。
トキヤは右手で岩塊を投擲――その動きを、セイバは見ていた。
投擲された岩塊を『減速』――肉体を『加速』、セイバへ接近、斬撃を加え動きを足止め――直後、横へステップし、同時に岩塊の『減速』を解除、そして『加速』――自身の体をブラインドにした不可視ゆえに不可避の岩塊がセイバを襲う――
――――これで、終わりだ。
トキヤが勝利を確信した瞬間。
「――――――最後にもう一度。読んでいたぞ、トキヤ」
セイバの手元の武装が変化――刀から大剣へ。
幅広の大剣で、岩塊を防御。
そして、驚愕に硬直しているトキヤへ、大剣を振り下ろす。
読んでいた。
読んでいたのだ、この男は。
セイバの《開幕》時に使える能力。
高速武装換装、高速武装創造、無効化魔力の鎧、武装破壊――――それだけではなかった。
セイバは単純な魔力無効化のその先。
『術式発動阻害』に至っていたのだ。
その使用方法は、相手が発動させようとした術式を《概念式》単位で読み取り、その術式の発動自体を無効化するというもの。
だがセイバは、これをただ使うことはせず、さらに応用した。
トキヤが『巻き戻し』を発動させる瞬間、セイバはその《概念式》を読み取り、発動を無効化しようとしたが――直前でそれをやめ、あえて発動を見逃した。
だが、その際、セイバは自身の『魂』だけを、無効化魔力を覆った。
すると、何が起きるか?
『魂』には、記憶が保持される仕組みがある。
屍蝋アンナは、自身の別人格――つまり、過去の自身の肉体に宿っていた魂を消費して、魔力に変換したことがあった。
その際、別人格――『最初のアンナ』が保持していた記憶の一部が消失している。
彼女に肉体に二つに分割されて保持されていた魂。
その片方が消えたことで、その魂の『記憶』も消えた。
『魂』と『記憶』の関係は、《想星石》という存在を踏まえれば、よりわかりやすいだろう。
《想星石》。
この世界にいくつか存在する遙か未来の可能性で使われる技術。
自身の想いや記憶を外部へ出力する――つまりは、屍蝋アンナが行っていた、『記憶』を消費して魔力を生み出す技術の応用だ。
――あの技術は、屍蝋アンナの力が由来となっているのだ。
セイバは、『魂』の記憶を司る部分だけを覆うことで、記憶を巻き戻しの影響から逃れさせ、『一周目』の記憶を保持することに成功したのだ。
彼は『魂』と『記憶』の関係については、自身もまた魂に干渉する能力を持っているゆえに気づくことができた。
魂に干渉できるゆえに、魂の仕組みを把握することができた。
罪桐ユウとの戦いの顛末、そこでの屍蝋アンナの戦いを聞いていたというのもあるだろう。
そして、トキヤが『巻き戻し』を扱える可能性についても、それが極小だとは思いつつも、あり得ないと切り捨てず、考えていた。
『術式発動阻害』の応用により、巻き戻しを察知――さらに、魂の記憶領域部分のみを無効化魔力で覆って、巻き戻しの影響から逃れ、記憶を保持。
そしてなにより、それら全てを成し遂げた上で、そのことをトキヤに悟られぬように、『一周目』の記憶を持ってないかのように演技をしていた。
完全に、騙しきった。
もはや絶対に、この一撃は躱せないだろう。
トキヤが勝利を確信したところで、セイバがそれを崩し、そこで生まれた隙をつく。
――――もう一度、あそこへ行くのだ。
――――蒼天院セイハと戦い、彼を超える。
あの男は強い。
都市を守る、大勢を守る、平和を守る――ああ、素晴らしい理想だ。
だが、たった一人の幼馴染を守りたい自分の理想が、負けているとは思わない。
彼はきっと勝ち上がってくる。
真紅園ゼキや、赫世アグニを倒し、上がってくるはずだ。
彼を倒すことができれば。
『守る』ということにおいて誰よりも強いである、彼を超えられれば、きっと自分は、ルミアを守れるという確信が得られるはずだ。
そして。
漆黒の大剣が振り下ろされ――――、
「最後の最後にお返しだぜ、セイバ――――読んでたよ」
勝利を確信したトキヤを、出し抜いたと確信したセイバ――――。
そのセイバの顔面を、トキヤの右拳が殴り飛ばした。
――その拳には、トキヤの肉体に残された全ての魔力が込められていた。
ここで勝負を決める。
これが外れた場合、肉体、魂ともに残り魔力は完全にゼロ、敗北は確定する。
しかし、絶対に当たるという確信があった。
それはなぜか?
ここまで徹底的にセイバとの読み合いで負け続けたトキヤだが、最後の最後で、彼を出し抜ける確信があったから。
セイバはたった一つ、ミスを犯した。
ここまで一つも間違えていなかったのに、たった一つだけ。
セイバは、巻き戻しが起きた後に――トキヤの右手に視線をやったのだ。
それはあり得ないことだった。
なぜなら、その視線には、明らかにトキヤの右手が動くことへの僅かな驚きが含まれていたから。
トキヤの右手が仮想欠損したのは『一周目』。
その記憶がなければ、トキヤの右手が動くことに驚きなどするはずがないのだ。
トキヤをその視線だけで、セイバが『一周目』の記憶を持っていることを見抜いた。
なんらかの方法で、巻き戻しの影響から、記憶だけを逃しているのを確信した。
セイバとの読み合いで、上を行かれ続けたからこそだ。
彼ならば、そこまでやる。
この男ならば、絶対にこちらの予想を遥かに超えてくる。
その確信があったからこそ、あえてそれを利用した。
『セイバは「一周目」の記憶を持っていない』――トキヤはそう思っているかのような振る舞いをして、セイバを騙した。
完全にこちらを騙しきっていると確信しているセイバを――最後の最後で、読み合いで負け続けたトキヤが騙しきったのだ。
「もう一度だけ言わせてくれ――――強かったぜ、セイバ……今まででやった相手で、一番強かった」
倒れたセイバへそう告げて、トキヤは右の拳を振り上げた。
大歓声に包まれる会場。
トキヤはまず、フユヒメへ視線をやる。
拳を突き出す。彼女が頷く。
そして――。
次に、トキヤは真紅園ゼキへ拳を突き出した。
「次はテメェをぶっ飛ばしてやるよ、ゼキ」
するとゼキもまた、トキヤへ向けて拳を突き返してくる。
「――――上等だ、準決勝でやろうぜ」
ゼキの言葉は、大歓声にかき消され、トキヤの耳には届いていなかった。
それでも伝わる。
トキヤには、確かに伝わった。
一度は剣祭を勝ち抜き優勝した。
あの瞬間、この世界の主役は確かに自分だった。
だが、負けた――――あの男に、真紅園ゼキに。
敗北の瞬間、この世界の主役は、きっと真紅園ゼキだった。
もう負けない、誰にも主役の座は、誰に渡さない。
――――もう一度、あそこへ。
一度は頂点に立ち、一度はそこから蹴落とされた男は、再び頂点に立つことを誓っている。
今回のバトルは勝敗が読めなかった……はずなので(たぶんね)、勝敗に言及する際はふせお願いします……('、3_ヽ)_




