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迅雷の逆襲譚〈ヴァンジャンス〉  作者: らーゆ
第4章/下 ■■■■■■/■■■■■■
88/164

 第15話 それぞれの前夜③/龍上キララ 爛漫院オウカ





 SNS「ミュルミュール」内にて

 「#第28回彩神剣祭」タグがつけられたつぶやきより抜粋(一部例外有り)






――――――――――――――――――――――――――――


エアワイフ


ちゃけば優勝は黒宮トキヤっしょ


まず能力が『時間』だから、これはヤバババエクスカリバー

蒼天院とか真紅園も時間に干渉できるっぽいけど、蒼天院のは時間止めるだけ、これ黒宮には効かないから

真紅園に至っては時間停止を受けないだけ。黒宮の時間加速を封じる手段はないワケよ


――――――――――――――――――――――――――――



ろみ夫@ちぇりー


優勝は龍上ミヅキだと思います。

彼は一回戦から全力で、なおかつ新技も見せていた。

しかし、『全て』を見せていた訳ではないように見えました


それに、総合力では蒼天院セイハと並んでトップなのではないかと思います。

彼もまた天才と呼ばれる騎士。

蒼天院セイハ、赫世アグニ、レヒト・ヴェルナー、輝竜ユウヒ、斎条サイカ……この辺りの騎士に比べれば一段落ちるという見方が多いように思えますが、僕はそんなことはないと断言できます


あと一番可愛いのは爛漫院オウカです。

今度アルバム出るのでよろしくおねがいします


――――――――――――――――――――――――――――



べろーちぇ


夜天セイバで決まりだろ、こいつはジョークなしのマジだぜ?

なにせ『無効化』だ、こいつはどんな能力だろうが関係なくやっちまうクールなパワーだ。

厄介なのは刃堂ジンヤだろうが、当然対策もしてるだろうよ


二回戦、夜天セイバがまず当たるのは黒宮トキヤだが……

あんなヤツはランスロットとかいうただのコメディアンに勝っただけだ

夜天セイバの敵じゃねえ


――――――――――――――――――――――――――――


エアワイフ @べろーちぇ

あ? ちゃけば喧嘩売ってる?


べろーちぇ @エアワイフ

カモン! 表にヒアウィゴー!


――――――――――――――――――――――――――――


ろみ夫@ちぇりー


うわ! なんか外で外国人同士が喧嘩してると思ったら、片方のチャラ男(?)っぽい人に金髪の女の人がドロップキックした!


あれ……? あの金髪の娘、なんか見たことある気がする……。


――――――――――――――――――――――――――――


 美少女JK@今期はヤン修羅

 

 知り合いの馬鹿のせいで無駄な時間取られた、最悪……

  

  


――――――――――――――――――――――――――――








 ◇





「ハァ~……」


 龍上キララはSNSを眺めながらため息をついた。

 

 他の選手と同じく、キララもまた二回戦を控えた前日の休息日にしっかりと調整を終えた。

 疲れた体をベッドに投げ出し、端末をいじっている。 

 SNS上での優勝予想。

 多いのは前回優勝者である蒼天院セイハ。

 それから真紅園ゼキ、輝竜ユウヒといったところか。

 次いでレヒト・ヴェルナー、斎条サイカ、黒宮トキヤ、夜天セイバ、赫世アグニ、屍蝋アンナ……。

 

 ついに『龍上キララ』の名を見つけることはできなかった。


 それも当然。二回戦出場者はほとんどがAランク、Bランクですら少数。それ未満となると爛漫院オウカのCランクと刃堂ジンヤのGランクだけなのだから、やはりランクが強さの指標であるというのは間違いではない。

 勿論、それが全てでないというのは、誰よりもジンヤが証明している。

 だから関係ない。どれだけ場違いでも、優勝できるはずがないと思われても、そんなことは百も承知、それでも進むと決めている。


 ……『出場女性選手で最も可愛いのは誰か?』という話題でなら、キララの名前をちらちら見かけたが。

 その議題でも、あの女に――爛漫院オウカに負けていた。

 確かに向こうはアイドルだ。こっちだってギャル系のファッション雑誌に載ったことくらいはあるが、素人も同然。勝てるはずがないのはわかっている。

 だが、ムカつく。

 騎士としても負けて、女としても負ける――許せるだろうか、そんなこと?

 

「やっぱ許せねー……爛漫院オウカ」

 

 どういう訳だか許せない。

 きっとライバルを持つ者達……例えば兄であるミヅキや、真紅園ゼキに聞けば、ライバルへの感想はそういうものになっていくだろう。

 細かい理由もある。だがそれ以上に、理由もなく許せない。

 理由などいらない。負けたくない、コイツにだけは。

 ――――戦いの世界に身を置いていると、そういう出会いは、確かにある。




 ◇




「……妬けますね、龍上キララ」


 オウカが宿泊しているホテルの自室で見返している映像は、キララ対ヒメナ戦。対戦の最中ではなく、終わった直後の部分だ。もちろん、対戦自体も何度も見ている。



 ――――「ねえ、ジンジンっ!」

 ――――「…………なにかな?」

 ――――「……あのねー……、なんでもないっ!」


 オウカにはわかる。

 龍上キララは、どう考えても刃堂ジンヤに恋をしている。

 

 そもそも屍蝋アンナという少女が何度も刃堂ジンヤに抱きつくところが目撃されているし、ジンヤは幼馴染の雷崎ライカと付き合っているのだろうという噂もよく聞く。

 

 ということは、三人の女性に言い寄られているということだろうか。

 ……あのおとなしそうな顔で意外とやりますね……とオウカは人は見かけによらないものなのだなと驚く。

 自身が見かけ通りの天才美少女なので、見かけによらないタイプというのは想像が及ばない。

 

 ――――刃堂ジンヤ。


 オウカが彼を意識するのには、理由がある。



 オウカもまた、ジンヤと同じく『ランク』に苦しめ続けられていた。

 二回戦出場選手の中では、ジンヤに次ぐ低ランク。

 彼と自分は同じ――いや、悩み自体は同じだが、彼の方がずっと厳しい試練を超え続けてきたことが容易に想像できる。

 なのでオウカは、密かにジンヤのことを尊敬していた。


 彼のことを知ったのは、オウカやジンヤが所属している黄閃学園の教師、風祭マツリの口から彼のことを聞かされた時だ。


 マツリは、一度入学試験でジンヤを落としかけている。

 ジンヤが落ちたという中等部の試験ではなく、高等部への入学試験でのことだ。


 ジンヤは三年前――中等部での試験も落ちている。

 だからこそ、ジンヤはその時の試験、絶対に譲れないものだったはずだ。

 刃堂ジンヤと龍上ミヅキの因縁は、黄閃学園ではもはや伝説となっている。

 中等部の入学試験――ジンヤとミヅキは戦い、ジンヤは為す術無くミヅキに敗北し、試験に落ちた。

 それからの三年。二人は対照的な道を歩む。

 ミヅキは中学時代全国三連覇。

 ジンヤは一切表舞台には姿を現さず、姿を消した。

 そして時は巡り、二人は再び刃を交える。


 その少し以前の話。

 高等部の入学試験、実技の担当はマツリだった。

 

 ジンヤはやはり、依然として入学の基準となるランクではなかった。

 学校側としても、基準を満たしていない生徒を入学させ、怪我でもさせれば、大きな問題になる。なんのための基準で、なんのための試験なのだと叩かれ、学校の名に傷がつく。

 なにより、ジンヤのためにならない。

 だからマツリは、ジンヤを落とそうと思っていたのだ。

 そこで、彼は――刃堂ジンヤは言った。


『なら、あなたが実際に戦って僕を確かめてくれませんか――風祭先生』


『へえ~、大きくでたねえジンヤちゃん! まさか先生に勝つつもりかな!?』


『ええ……風使いの相手は慣れてますから』


『いうねえ~!!』


 そして、ジンヤはマツリを下した。


 マツリが全力ではなかったとはいえ、その戦いでジンヤの入学に文句を言う者はいなくなった。

 ジンヤは後から知ることになったが、マツリはハヤテやオロチと同じく風使い。そして、オロチから教えを受けていた過去があるらしい。

 攻撃のパターンがオロチに似ていることも、ジンヤにとってはやりやすい要因の一つだった。

 尤も、合格自体は紛れもないジンヤの力だ。


 ――――思えばその話を聞いた時からだろう。

 オウカが、刃堂ジンヤを意識していたのは。


 あのミヅキとの運命の一戦。二人の戦いを実況していた時もそうだ。


 いつだって、刃堂ジンヤは胸を熱くさせられる。勇気をもらえる。


 さながら自身がアイドルとして、ファンにそうなってもらいたい願うことを、そういう気持ちを、ジンヤからもらっている。


 …………だからだろうか。


「……なんですか、その顔は……」


 オウカは静かに呟いた。

 龍上キララの幸せそうな表情が許せない。彼女は自分よりもずっとジンヤの近くにいる。

 自分は、どうしたいのだろうか?

 遠くから彼を眺めていて満足なのだろうか?

 そもそも、この気持ちはなんなのだろうか?


 彼を意識しているのも、勇気をもらっているのも本当だ。

 だが――――それだけなのだろうか?


「…………この私が? この超絶最強かわいい美少女大人気アイドルの私が……? …………いやいや、いやいやいや……まさかですね」


 オウカは自身の胸に芽生えた気持ちがなんなのか。

 その仮説に思い当たり、なぜだか怖くなった。



 ――――だって、そんなのは許されない。





 爛漫院オウカはアイドルだ――誰のものでもない、誰のものにもならない、誰のものにもなれない。




 誰にも、恋なんてしない。






「とにかく――――龍上キララ、どうにもあなたは許せないので、叩き潰します」




 

 少女は自身の心に気づかぬまま、それでも抑えられない気持ちを吐き出した。








おまけ1


二回戦出場選手のランク


刃堂ジンヤ G

屍蝋アンナ A


黒宮トキヤ A

夜天セイバ A


真紅園ゼキ A

蒼天院セイハA


赫世アグニ A

ルッジェーロ・レギオン B


ハンター・ストリンガー B

龍上ミヅキ A


爛漫院オウカ C

龍上キララ B


レヒト・ヴェルナー A

斎条サイカ A


電光セッカ B

輝竜ユウヒ A



おまけ2


大会出場選手がSNSをやっているかどうか



・やってる



刃堂ジンヤ

風狩ハヤテ

屍蝋アンナ(ジンヤ監視用)

ガウェイン・イルミナーレ

黒宮トキヤ

ランスロット・ディザーレイク

チェイス・ファインバーグ

夜天セイバ

真紅園ゼキ

蒼天院セイハ(ほぼ《ガーディアンズ》の活動を発信するアカウント)

雪白フユヒメ

嵐咲ミラン

ハンター・ストリンガー

水村ユウジ

爛漫院オウカ

龍上キララ

零堂ヒメナ

灼堂ルミア

電光セッカ

輝竜ユウヒ




・やってない


翠竜寺ランザ

龍上ミヅキ

ルッジェーロ・レギオン

アントニー・アシュトン

ライトニング・ヘッジホッグ

レヒト・ヴェルナー

絡繰リラク

空噛レイガ

ルピアーネ・プラタ

斎条サイカ

赫世アグニ

罪桐ユウ(ただし人を煽るようのアカウントは作る)


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