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迅雷の逆襲譚〈ヴァンジャンス〉  作者: らーゆ
第4章/下 ■■■■■■/■■■■■■
77/164

 第4話 ■■■■■■■■■■、■■、■■■■■■■■、■■■■■■■■■■■■■




「へいー、ランスーランスー、ちょっとおk?」




 ランスロットのもとに、ガウェインがやって来た。

 真っ白いワンピースに麦わら帽子。金色の髪に、青い瞳。

 ここまでなら正統派美少女だが、手元にめちゃくちゃ大盛りの焼きそばを持っており、そこに大量にたらこペーストをかけまくっている。

 人間の食べ物か……? とランスロットは目を剥いた。


「ん、ちょ、ガーたんどしたん!? 女子の集合こっちじゃないっしょ?」

「うん? そうカチカチすんなって、堅いこと言うな? あのさー、浮き輪貸してくんない?」



 ランスロットは若干焦る、ここで女子にこちらへ来られると彼の計画が狂うのだ。


「浮き輪? オーケイ、ケイケイ、ケイ姉さん、好きなだけもってくっしょ」

「さんさんさんくー、ほんじゃとりま私はアンナたそ達がいるほう行ってくるわ、またまたのー、ノシ」


 焦ったランスロットは、大量に持ってきている遊び道具から浮き輪が入った袋と空気入れをガウェインへ押し付ける。

 目的は果たしたのか、ガウェインは女子の集合場所の方へ向かってくれた。




 ◇




 ガウェインを追い返し、気を取り直して。

 ランスロットは、集まった男どもへと告げた。





「それじゃメンズ達……今日集まってもらった理由を話すぜ……。


 これより!

 ナンパ最強決定戦の開催を宣言しまっっす! 

 イェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ────イッッッ!」




「ナンパ!?」(トキヤ)

「最強!?」(ゼキ)

「決定戦だとぉ……!?」(ハヤテ)


「……あの、僕、ナンパなんかしたら、命が危ない……」(ジンヤ)

「なんと不埒な……」(ユウヒ)


「帰らせろ」(セイバ)





 こうして、狂気の催しのルール説明が始まった。





 まず、これは全面的に付近にあった海の家の企画に乗っかる形で行われる。

 その店では、女性連れで来店すると、人数に応じて特典がもらえる。

 これからナンパで女性をどれだけ連れて来られるかを競い、優勝者を決めようというシンプルな提案だった。

 

「……だったら女性陣と集合時間をズラさなければよかっただろ」

「……………………あっ」


 セイバの指摘に、しまったという表情になるランスロット。

 彼の提案、その不可解な点をセイバは一瞬で見抜いた。

 店側の条件は、女性を連れてくるというだけ。

 ナンパであるかどうかの証明など厳密に求められはしない。

 ただ11時に合流するはずの女性陣を連れてくるだけでいい。




「そしたら……つまんないっしょ!」(ランスロット)

「セイバ先輩夢がねえよ!」(ゼキ)

「せっかくのひと夏の思いでっすよ!」(ハヤテ)

「根暗不能!」(トキヤ) 


「…………帰らせろ。────それから黒宮、お前はあとで顔を貸せ」


 セイバが本気で嫌そうな顔をしていた。




 

「じゃあセイバはやんねーのか?」


 トキヤが問う。


「ああ、当然こんな下らないこと……、」


 そこまで言いかけ──突然、セイバの表情が変わった。


「……まあいい、気が変わった。付き合ってやる」

「あん……? なんだ?」


 トキヤ同様、ジンヤも首を傾げていたが、セイバの視線を追って気づいた。

 店先に張り出されている特典、その内容に答えがあるのだろう。

 

 最近流行りの可愛らしいキャラクター、その限定グッズが特典のようだ。


(おそらくあの中に夜天先輩本人か、親しい人が欲しい特典が……)


 そこでジンヤは気づいた。





「あ、あれは……チンアナゴくんストラップ……!?」


 前に水族館に行った時にライカが欲しがっていたが、手に入らなかったものだ。

 その後、ライカは『チンアナGO』というチンアナゴを捕まえるアプリにめちゃくちゃハマっていた。







「……ハヤテ」

「ん、どうした」

「この戦い……負けられないね」

「おう? ああ、負けられねえ、負ける気がしねえ! ……っつーか、珍しくノリいいな?」


 ジンヤは、ナンパなどすればライカとアンナに殺される──それ以前に、ライカという愛した女がいる以上、見ず知らずの女性に興味などない……と、思っていたのだが。

 チンアナゴくんがいるなら、話は別だ。

 愛する女の喜ぶ顔のためなら、なんだってしよう。

 謎の闘志を燃やすジンヤに、そもそも根がチャラい上に、こういった遊びは大好物なのでノリノリなハヤテ。






「ランスロットのやつ、時間ズラしたのはこのためか。やるじゃねーか」

「だな。フユヒメのアホがいたらこんなことできねーしな」


 ヒメナやフユヒメのことは大切だが、それはそれとして他の女の子とちょっと遊ぶくらいはよくない? という根がクズなゼキとトキヤ。






「……あれは……どうして、こんなところに────ぴぴれろくん……!」




 静かに冷たい声で、可愛らしい響きの名を呼ぶセイバ。

 ぴぴれろくんとは、コウモリのマスコットで、ルミアのお気に入りなのだ。

 

「なんて不埒な……どうしてそんなことで盛り上がれるんですか……?」


 ユウヒは周囲のノリについていけなかった。セイバのように、興味がなく面倒くさいのではなく、明確に嫌悪があった。

 ナンパ? それはヒーローのすることではない。ライキのように遊びに寛容で在りたいという一方で、真面目に生きてきたユウヒは、女性に関する部分では堅い考えを持っていた。


 

 それぞれの想いを抱いて、戦いが始まろうとしていた。

 しかし、その戦いは──。


 ◇




(まずは第一段階クリアっしょ、チョれぇ~~~~。チョロチョロチョリーヌですわコレ、ちゃけばマジ楽勝!)


 ランスロットは、戦いに望む戦士達を見て口元に笑みを浮かべていた。

 完全にハマった。

 あの悪辣の少年やガウェイン程ではないにしても、自分にも人を躍らせる能力があるのではないかとほくそ笑んだ。

 

 彼の作戦はこうだ。

 まず、この戦いを利用して、この強さも見た目も知名度も備えた男達によって、女の子を大量に集める。

 ──そこで、邪魔になるのが、この男達だ。

 だが、彼らを一気に排除する方法がある。

 時間をズラした集合時間。

 戦いが終わる頃を見計らって、選手限定区画の方にいる女性陣をこちらへ呼び込み、男どもを排除。

 彼女持ちのジンヤやハヤテ、ゼキは当然として、トキヤやルミアも排除できる。ユウヒはよくわからないが、ジンヤをどかせばどっかにいくだろう、たぶん。ガウェインがそう言ってた。


 そして! 

 残った大量に集められた女の子は、ランスロットとアロンダイトの総取り! うはうはハーレム! うはうは水着美女ハーレムひと夏の過ち確定! 

 今から鋼の精神で下半身の方のアロンダイトをカチコチの《不壊》にしないようにするので必死だった。それはもっと後でのお楽しみだ。





「(ナンパ対決の勝敗なんて、ガチめにどぉ~~~~~~~~~~でもいいっしょ! オレ達の大勝利なんだから)」

「(マジで天才だよランス、策士っしょこれ、モテまくり勝ちまくりの未来しか見えねえ!)」




 ランスロットとアロンダイトは、既に自分達の思い描いた未来が手に入ると確信していた。

 

(合コンで痛い目みてポコパンされてんだ、ここでおいしい思いしないとおかしいよなあ……!?)


 それぞれを想いを……。

 いや、それぞれの想いと、邪念を胸に、今戦いが始まる──。


 ◇





 戦いが始まろうとしたその時────、







「ゴラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!! ランス、ボケ、コラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!」







 すぱこーんっ! と突然何者かがランスロットへナニカをフルスイング。

 ランスロットが吹っ飛んで砂浜に聖剣の如く突き刺さった。

 

 ランスロットを強襲したのは、ガウェインだった。


「ランス、おどれ何さらしとんじゃボケカスゴラァアアアア!!!」


 聖剣を引き抜いて、首を掴み上げて激しく揺さぶる。


「は!? ちょ、ガーたん、なに!?」


「とぼけんなハゲランス! これ見ろ、これ!」


「え、ちょなに……!?」


 




 ガウェインが指差したそれは、




 

 先程ランスロットが渡した浮き輪、





 ────ではなく、









「ぽめえ、これ、浮き輪じゃなくて、ダッチワイフじゃねえか! 空気嫁じゃねえか!」







「おわああああああああああ、間違えたあああああああ、同じ膨らます系のやつだからあああああああああああああ!!!!」




「間違えるかい!!!!!!!!!!」







 空気嫁でランスロットをボコボコに殴り倒すガウェイン。

 ガウェインは、アンナの前でこれを膨らましていた。

 途中でアンナが「この浮き輪、変ですねー?」と首傾げた辺りで気づいた。


 確かにそもそも浮き輪の形ではなかった。

 だが、輪っかでなくとも、上に寝そべることができるフロート的なやつだと思ったのだ。それならそれで構わないと思ったのだが……。


 出来上がったのは、かなり造形がいい加減な女性の姿。

 きみパッケージとなんか顔違うよね? と言いたくなる残念な出来なのだろう、恐らく。

 

 普段のガウェインなら、そんなミスは「ハハ、ワロス」の一言で済ませたが、大勢の前で恥をかくところだった、というかなんで海にこんなもん持ってきてんだこの馬鹿がという怒りに支配され、ガウェインはランスロットを叩きのめした。




「ふうー……よし、正義は成された」




 満足すると、ガウェインはランスロットを捨て置いて、再び彼の荷物を漁る。

 今度こそ本物の浮き輪を確保すると、彼女は去っていった。



 そして。

 ボロボロのランスロットなどに構わず、戦いは始まっていた────!!



 ◇




 第4話 ■■■■■■■■■■、■■、■■■■■■■■、■■■■■■■■■■■■■





 第4話 水着回中編/「ぽめえ、これ、浮き輪じゃなくて、ダッチワイフじゃねえか!」




 


  






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