第1話 その物語の名は/■■の■■■
ハヤテとの戦いが終わった後のことだった。
大会が行われてい会場――《レインボー・ベース》内、ハヤテと別れたジンヤは、残りの試合を観戦しようと、観客席へ向かっていた。
ハヤテも誘ったが、断られてしまった。別れの言葉を口にしたばかりでそれでは締まらない
だろうと。
彼はすぐにでも都市を出る準備をするそうだ。
名残惜しいがしかたがない。見送りはいらないそうだ。別れは済ませた、そんなことをしている暇があるなら他の騎士の試合を見ておけとも言われた。
その通りだ。
もとよりそのつもりだったが、彼との約束のためにも、絶対に決勝に行かなくてはならない。
次の試合は、屍蝋アンナ対ガウェイン・イルミナーレ。
この試合で勝った相手が、二回戦でのジンヤの相手だ。
アンナのことは知っているとはいえ、一年も会っていなければ別人と考えるべきだ。
ハヤテの時のように『一年前』の状態から、『現在』までの成長を予測して対策を立て続けてきた、というわけでもない。
初見の選手と思って当たるべきだろう。
ガウェイン選手と戦うことも想定しておくべきだ。
アンナからの宣戦布告――それを抜きにしても、身内の贔屓目でアンナには勝って欲しい。
だが、戦いは何が起きるかわからない。
ガウェイン選手は、セイハのリストにあったラグナロクからの刺客ではないが、海外からの留学生。他の選手に比べるとデータが圧倒的に少ない。
直接戦いを見れる機会を逃すわけにはいかない。
とにかく見逃せない一戦だ……と、そんなことを考えながら歩いていると。
そこで、前方から見知った顔が向かってくることに気づいた。
金髪碧眼に、ジンヤと同じくらいの背丈。
煌王学園序列一位、輝竜ユウヒだった。
「……あ、輝竜くん」
「一回戦突破、おめでとうございます。……とてもいい試合でした。以前交わした言葉が、やはり実現するんじゃないかと思うほどに、とても」
『大会で当たったらよろしくね、輝竜くん。キミとは気持ちのいい戦いができそうだ』
『……ええ、ボクも同じことを思いました。以前から思っていましたが、ますます貴方と戦いたくなりました。当然のことですが――勝ち続ければ、必ずまた会えますよ』
ジンヤとユウヒはトーナメントで正反対のブロック。
相見える可能性があるならば、決勝のみ。
ユウヒは、ジンヤとハヤテの戦いを見て、ジンヤは決勝に出場することが出来る騎士だと、そう言ってくれているのだ。
そしてまた、戦うことを望むということは、彼は決勝へ出場する自信があるということ。
そんな騎士からの素直な賞賛に、胸が熱くなる。
ハヤテとの戦いは、ジンヤの誇りだ。
その誇りを、認められた気がした。
「ありがとう……。輝竜くんの試合はまだ先だよね? 一回戦の最後だし」
「ええ。ボクなんかのこと気にかけてくれてたなんて光栄です」
「なんかって……この大会に出る騎士は、誰でもライバルだよ」
「誰でも、ですか……」
「……ん?」
意味ありげな沈黙。
彼の表情が僅かに歪む。
だが、すぐに表情が笑みへ切り替わる。
「いや、そうだね。この場に上がってきた騎士は等しく相応の実力を持っている。素敵な考え方だと思うよ」
言って、優しげな笑みを浮かべる。
「ジンヤくん……ああ、こう呼んでも構いませんか?」
「勿論。じゃあ僕もユウヒくんって呼んでもいいかな?」
「当然です。それで……実はボクの用はキミの勝利をただ寿ぐだけじゃないんです」
神妙な面持ちになるユウヒ。
その表情に見合う、大切な用があることを察し、ジンヤも気を引き締める。
「っていうと……?」
前置きはここまでのようだった。
空気が変わる。
核心が、告げられた。
「キミの父親――ライキさんのことで、話があります」
「父さんの……?」
ジンヤの父。
刃堂ライキ。
ジンヤとは異なり、騎士としての才能に溢れ、それに溺れることなく研鑽を積み力を手に入れ、誰かを守り続けた英雄。
偉大な英雄の存在は、かつてジンヤにとって負い目だった。
優秀な父を継げない、なにもない自分。
だから父は、自分を見捨てた。
だがその間違いは正された。
自分には何もないことはなかった。
見捨てられてなど、いなかった。
そして今。
ジンヤはこうも思っている。
この大会で優勝できるような騎士になれば、父の才能を継げなかった自分でも、父のような偉大な騎士になれるのではないか、と。
《使徒》との戦いの直前。
《ガーディアン》に所属するホムラから、父の話を聞いた。
ジンヤの父、ライキがガーディアンに所属していたという話。
それからずっと、ジンヤは力の使い方について考えていた。
それは、現在のライカと共に《神装剣聖》になるという目的の、先にある話だ。
《使徒》という、力を使って己の目的のために他者を蹴落とす存在。
彼らのような存在は許し難い。
ジンヤがライカと共に夢を追い、強さを求めるのに、父のようになりたいという願望も正義感も関係ない。
だが。
自分に力があるのならば、その正しい使い方があるはずだと、ジンヤは考え始めていた。
そのタイミングでの、ユウヒの言葉。
「……ジンヤくんは、ライキさんのこと、どこまで知っていますか?」
そう問われて気づく――いや、ずっと前から気づいていた。
自分は、父親のことを何も知らない。
「……恥ずかしいというか、情けない話なんだけど、父さんとは小さい頃にすれ違いがあって……そのまま父さんは亡くなってしまったから、僕は父さんのことをよく知らないんだ」
「……やっぱり、そうですか。……そうですね、次の試合まで少し時間があります。立ち話も何ですし、場所を変えませんか?」
□ □ □
ユウヒの提案に頷いたジンヤ。
二人は競技場内にあるカフェテリアに来ていた。
向かい合って座る二人。
都市内に七人しかない学園序列1位が二人揃っているのだ。さらにジンヤはあの試合の直後。現在都市内で最も話題になっている人物といってもいいだろう。
彼らに気づいた者達に囲まれ、サインをせがまれたりした。
ユウヒは快く応じて、小慣れた様子でサインを書いていた。
ジンヤはそんな経験がまったくないので、しかたなくそれなりに綺麗な字でただ『刃堂迅也』と書くだけの、なんの面白みもないものを量産した。
対してユウヒは、自分の名前を可愛らしく崩したローマ字で書いて、そこにデフォルメされた太陽と竜のイラスト付きというものだった。
「……ユウヒくん、サイン慣れてるね」
生真面目そうな彼にそんな一面があるとは意外だった。
自分の面白みのなさに恥ずかしくなる。
「恥ずかしい話ですが……ボクはお話に出てくるようなヒーローに憧れてるんです」
いつも余裕ある柔和な笑みを浮かべていた彼は、今は照れくさそうに頬を染めて顔を逸していた。
どうやらサインを見られたのが恥ずかしいらしい。
「だからこういう時に、なるべく子供が喜ぶようにしたいと思って、昔から考えてたんです…………幻滅しました?」
「そんなまさか。すごいことだと思うよ。情けないのは僕の方だ……」
自身の凡庸以下のサインが恥ずかしい。
ヒーロー。
憧れ。
ジンヤにとってのそれは、父のライキであり、ヤクモであり、ハヤテだったが、多くの子供は誰かを守るために悪と戦う正義の騎士に憧れる。
ユウヒにも、そんな誰しもが経験する幼少期があったのだろう。
「……では、ボクのヒーローの話をしましょうか。と言っても、それはキミにとってもそうであるはずですが」
彼の口ぶりからすると、ライキに関して何か知っていそうだが――そうであるならば、彼は一体ライキとどういう関係なのだろうか。
「ボクは、ライキさんの……そうだな、弟子とでも言えばいいのかな。彼に騎士として大切なことを教わった。キミのことも聞いてるよ。だから……ボクは、ずっとキミに会ってみたかったんだ」
「え……? 父さんの……? そっか……! ああ、そういうことか……!」
驚きはあった。
だが、同時に納得も。
初対面の時に好意的な態度も、そういうことならば得心が行く。
ユウヒのとってジンヤは、憧れの人の息子だ。好意的になるのも当然だろう。
「最初に会った時に、言ってくれなかったのは?」
「あの時はまだ抽選をしていなかったですよね? もしあの後すぐに試合、なんてことになったら、これを告げるのは試合への集中を削ぐことに繋がると思ったんです」
「なるほど……確かに。その配慮は正解だね……、ありがとう」
事実、一回戦第一試合を引き当ててしまっている。
ハヤテのことだけで手一杯なところに、父のことまで加われば、ジンヤのただでさえ大した容量がない頭はパンクしていただろう。
「ジンヤくんの試合を見て……キミはやはりライキさんの息子だと思いました。キミなら、きっと決勝にこれる。だから、伝えておきたかったんです。ライキさんの息子であるキミと、弟子であるボク……決勝に相応しいのは、きっとボクらの戦いだと」
そう言われた瞬間。
ジンヤの中に、光栄だという気持ちもあった。
こんなにも自身との戦いを求めてくれる騎士がいて、それが父の弟子だという。
こんなに嬉しいことはない。
だが同時に浮かんだのは――ミヅキとキララのことだ。
ジンヤが配置された西ブロック。
その正反対の東ブロックにいる彼らと戦うには、決勝まで進むしかない。
ユウヒとの戦いは勿論だが、ジンヤはミヅキやキララとの再戦も望んでいた。
これはトーナメント。負ければそこまで。
だから、全てを望むことはできない。
それでも、ユウヒの言葉には素直には頷けなかった。
「……そっか。僕も、決勝に相応しい騎士で在れるよう、これからも気を抜かずに頑張るよ」
そんな風に、まっすぐな視線を向けてくるユウヒに、少しだけずれた返答しかできなかった。
ユウヒは、ジンヤのことしか見ていない。
ジンヤ以外の騎士など、敵ではない、そんなふうに思っているようにすら見える。
それはとても光栄なことではあったが、ジンヤはそうは考えられない。
この舞台に上がった騎士全員と戦いたい。勝手なことをいえば、それが理想なのだ。
「……まあ、先のことは今はいいですね。口にせずとも、そうあるべき結果は自然とわかるはずですから。それよりも、ライキさんの話をしましょうか。ジンヤくんが知らない彼のことを、ボクでよければ話させてください」
「うん……僕はずっと、父さんともっと話をしておきたかったと思ってたんだ……だから、是非聞かせて欲しい」
そこから先は夢のような時間だった。
父も母も亡くしたジンヤは、もう父のことを知ることはできないと思っていた。
オロチならば、父のこともよく知っているだろう。
しかし、オロチは父のことを話せばジンヤが辛い思いをすることを見抜いていた。
偉大な父に相応しくない凡人――かつてのジンヤにとって、父のことは自身の負い目だった。
父に相応しくない自分が、恥だった。
だが。
龍上ミヅキに、風狩ハヤテに……あの素晴らしい騎士達を倒した今ならば。
こうして夢の舞台で戦えている自分なら。
父の息子であることに後ろめたさを感じたあの日の自分は、もういない。
ユウヒが語る、父の活躍。
どんな強大な敵を倒したか、恐ろしい危機を脱したか。
ジンヤはそれらの話に目を輝かせる。
それを語るユウヒの目も、キラキラと輝いている。
ジンヤとユウヒ。二人にとっての、共通のヒーローの話だ。
これで胸踊らないはずがない。
ライキは生前、ユウヒにジンヤのことを語っていたそうだ。
ジンヤに才能がないこと。そんなジンヤには、ライキという偉大な存在が重荷になってしまっていること。だから、ジンヤには自由に道を選んで欲しいこと。
そして。
もしも自分で、騎士となる道を選んだのならば。
彼がどれだけ才能がなくとも、必ず自分のような偉大な騎士となることを信じているということ。
――だからもし、ジンヤとユウヒの道が交わることがあるのならば。
その時は、仲良くしてやってくれ。
そんなことを、口にしていたらしい。
だから。
ユウヒはずっと、待ち望んでいたのだ。
憧憬の息子を。
ジンヤがミヅキを倒した時は拳を握りしめた。
ジンヤとハヤテの戦いには目頭が熱くなった。
そうだ、あれこそが自分の憧憬を継いだ男だと、世界に叫びたくなった。
そして、自身もまた、憧憬を継ぐと決意している。
だからこそ、ユウヒは望む。頂点を決する戦いに、ジンヤが上がってくることを。
二人の語り合いが始まってから、しばらく経った時のことだった。
「……それで、ボクからジンヤくんに、大切な質問があるんですが構いませんか?」
「ええっと……僕に答えられることなら」
「ずっと聞きたいと思ってたんです。僕の憧れる正義の味方であるライキさん。その息子であるキミが、どんな答えを出すのか」
そして、ユウヒは問う。
「では……聞かせてもらいますね、キミの正義を」
そんなふうにして、その問いは始まった。
彼は朗々と質問の内容を口にし始めた。
「もしも……これは、もしもの話です。キミが力を悪用する騎士と対峙したとして、その悪に人質を取られているとしましょう。悪の手には一人の人質。さらにキミの背後には、五人、守るべき人間がいるとします」
「……ええと、心理テスト?」
「似たようなものだと考えてくれて構いません。……続けますね。悪は五人を引き渡すように要求してきます。そうすれば、一人の人質は助かる。でなければ、一人を殺すといいます。……さて、キミならどうしますか?」
「うーん……」
やけに物騒な設問だと思った。
だが、これまでの話――共に誰かを守る英雄を目指すジンヤとユウヒに限れば、その設問は未来で現実となって突きつけられるかもしれない。
心理テスト、などとユウヒは言ったが、それだけには思えなかった。
少し考え込んでから、
「……全員を助けることはできないの? 例えば、犯人を油断させて隙を作って一人の人質を助けるとか……」
「――できません」
きっぱりと、そう断言された。
真剣な語気と表情だった。
「……なら、僕には答えられないかな。一人のために五人を差し出すことはできないし、五人のためだからと言って一人を見捨てることもできない……全員が助からないなんて、問い自体が許せないよ」
「……それがキミの答えですか?」
「……うん、これが僕の答えだ」
こちらを貫くような鋭い視線。
沈黙が落ち、そして。
「……素晴らしい。さすがはライキさんの息子です」
そう言って微笑むユウヒ。
「え……これでいいの?」
「ええ。正義の味方は、まず理想を持たなければいけません。簡単に諦めて命の勘定を始めるようなものは、英雄にはなれませんから」
「そっか……。父さんも、そう答えるのかな?」
「この話をしてくれたのはライキさんです。そして、この話はこう続きます。『弱い騎士に、全てを救うことはできない。だから誰かを守ろうと願うなら、願いに見合う強さを得なければならない』とね……結局はそこです。ボクらが歩んでいる道の先、それを示す話というわけですね」
「父さんが……」
ジンヤが考え始めていた、力の使い道。
それが、もう二度と話すことができないと思っていた父により示された。
それを果たしてくれた、ユウヒに感謝すると同時に、何か彼に運命めいたものを感じた。
「……ありがとう、ユウヒくん。今この話を聞けたことは、僕にとって得難く大切なことだった思うよ」
「いえ……ボクもキミと話せてよかったです。ああ……もうすぐ試合ですね。ボクは今から用があるので、今日はこれで。またいずれ、ゆっくりライキさんの話をしませんか?」
「うん……僕も父さんの話を聞かせてもらいたいよ。……それじゃ」
別れる二人。
観客席の方へ向かうジンヤ。
正反対へ歩み始めるユウヒ。
そうして、二人はそれぞれの道を行く。
□ □ □
ジンヤと別れた直後、ユウヒは後ろを振り返り、ジンヤの背中を見ながら考える。
『……なら、僕には答えられないかな。一人のために五人を差し出すことはできないし、五人のためだからと言って一人を見捨てることもできない……全員が助からないなんて、問い自体が許せないよ』
素晴らしい。
とても素晴らしい解答だった。
――――ただし、現時点に限れば、の話だが。
でなければ反吐が出るような戯言だ。
いずれ塵屑と知ることになる理想だ。
だが、それでいいのだ。
それこそが必要なのだ。
戯言が。
理想が。
『ええ。正義の味方は、まず理想を持たなければいけません。簡単に諦めて命の勘定を始めるようなものは、英雄にはなれませんから』
まず理想を持たなければならない。
次に絶望を知らなければならない。
簡単に諦める者は、英雄にはなれないのだ。
英雄とは、絶対に諦めない者を指す言葉だ。
諦めず、理想を追い求め、傷つき、それでもなお進み、迷い、それでも、それでも進み、進み、進み、進み、進み、進み、進み、進み、進み、進み、進み、進み、進み、進み、進み、進み、進み、進み、進み、進み、進み、進み、進み、進み――そして。
その果てで絶望した者こそが、真の正義を知るのだ。
かつてライキがそうだったように。
そしてユウヒもそうなったように。
次は、彼の番だ。
「こんなやり方……気が進まないんですけどね」
ぽつりと、心底悲しそうな色を帯びた呟きを零す。
次の試合は、屍蝋アンナのものだったか。
屍蝋アンナ。
可哀想な少女だ。
救ってやりたいとも思う。
だがそれは不可能だ。
あの少女は、絶対に助からない。
いいや、助かってはならない存在だ。
あの少女の存在は、正義に反している。
だがそれは仕方のないことなのだ。
正義に犠牲は付き物。
彼女を供物に、絶望が生まれ、それによりジンヤは本当の正義を知るだろう。
本当の正義のための犠牲になれるのだから、あの少女の末路としては上等なものだろう。
「……いやだな。少し、染まりすぎてるか」
自身の思考を嫌悪するユウヒ。
末路としては上等? そこまで冷めていただろうか、自分は。
理想は塵屑だが、それをなくしてしまっては、本当に自分は《□□者》になってしまう。
そうはなりたくない。
役に立たない塵屑を抱きしめて、正義のための□□に邁進する。
それがユウヒの掲げる正義の在り方。
確かに自分はライキに憧れた。
だが、憧憬へ近づこうとするあまり、大切なことを忘れてしまいそうになってはいけない。
準備は整った。
役者は揃った。
必要なものは、理想と絶望。
互いに同じ憧憬を抱いた存在。
であれば当然、自分達は同じ存在になれるはずだ。
もう英雄はいない。
ならば、自分達が英雄になるしかない。
なぜなら――この世界を救えるのは、英雄だけなのだから。
逆襲譚?
友情譚?
復讐譚?
狂愛譚?
ああ、違う……そうではない、そんな邪道な物語ではない。
この星に相応しいのは、王道な物語に決まっている。
弱者の逆襲?
友との戦い?
世界への復讐?
星より重い狂愛?
いいや。
所詮、王道以外は全て本筋を彩る脇役のそれだ。
主役に相応しい物語。
この星に相応しい王道。
それは。
その物語の名は。
さあ、■■譚はすぐそこだ。
輝竜ユウヒ。
彼もまた自身の物語を持つ存在。
《■■係数》の基準値を満たした存在。
つまりは――《■■■》。
この街には、《■■■》が多すぎる。
だが全ては、邪道、脇役、紛い物だ。
真に必要な物語の名は。
彼が背負う物語の名は。
――――閃光の英雄譚。




