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迅雷の逆襲譚〈ヴァンジャンス〉  作者: らーゆ
第5章 ■■の■■■
129/164

第22話 新型戦闘訓練③/リーダーの務め




「この先の展開、どー見るよガーたん」


「んー……、そーだなあー……」


 ランスロットとガウェインも、現在行われている四つ巴の試合を観戦していた。




 ここまでの展開はこうだ。


 まず最初にぶつかったのはゼキとミヅキ。それを《ゴースト》を使いつつ様子を伺っているハヤテ。

 

 東部での戦端が開くと同時、西部ではユウジが格上かつ相性が最悪であるセイハと遭遇していた。


 ハヤテが仕掛けると同時、そこへセイバが伏せていたランザを使って奇襲を被せる。

 セイバの無効化魔力とランザの暴風刃の強力なコンボ。

 だが、ハヤテもまたアンナを伏せており、彼女のカバーで危機を脱する。

 ミヅキは自力で助かり、ゼキもどうにか落とされはしなかった。

 

 ごちゃついた戦況で最初に点を取ったのは風狩隊だった。セイバを狙ったゼキに対し、ハヤテが風で浮かしつつアンナの武装解除が発動。

 ゼキを落とした。




「オレとしちゃ夜天隊かな。黒宮トキヤを追い詰めた夜天がいるってのもあるが、まあちゃけばフツーに無効化はヤババっしょ。腕折られてようが、無効化デバフまくのに支障ないわけだし?」

「私も夜天隊はあると思うよ」

「アレ? ガーたんってば、シロアンちゃん(※屍蝋アンナ)のいるとこ――風狩隊推しじゃないの? ってか今も一点リードしてるし」

「んー、んー、そうなんだけどねー? ならランスはなんで風狩隊じゃないの? リードしてるでしょ?」

「そこはまあ夜天と風狩の差っしょ。夜天とシロアンちゃんが同じ組んだらヤバイ系の即死系だったら、あとはどう使うかの差かなって」

「それあるね」

「んじゃなんで?」



「たぶんだけどね――、」


 ガウェインが試合の展開予想を口にしている間も、試合は動いていた。




 □




「――さあ、敗者復活戦といこうか」


「……ハッ、上等」


 ランザの言葉に、ミヅキは小さな笑みと共に言葉を返した。

 ランザもミヅキも、かつて風狩ハヤテに敗北した経験がある。それを指しての『敗者復活戦』だろう。

 ならばミヅキとすれば負ける訳にはいかない。

 

 互いに武装は野太刀。遠い間合いからの切り合い。時折雷撃と風刃が乱舞する、派手な剣戟であった。

 ミヅキが野太刀の間合いからさらに一歩引いた。彼の武装は蛇腹剣でもある。故に、ランザの野太刀が長大な間合いを持とうが、その外側から攻撃が出来る。

 その場合、ランザも風刃を放って攻撃が出来るが、ミヅキは雷撃+蛇腹剣により、手数で一歩勝る。

 少しずつミヅキが勝利へ近づいていた時だった。

 ランザが風を使って一気に後方へ跳躍。

 蛇腹剣でも狙いづらい距離だ。しかしそうなると相手も攻撃方法が限られるはず。

 ランザが野太刀を天高く掲げた。

 魔力の高まりを感じる。

 この予備動作から繰り出される技とは、つまり。

 ――《風天倶利伽羅ふうてんくりから鳩摩羅迦楼羅クマラカルラ》。

 強烈な一撃だ。まともに食らえばそこで終わりだろう。

 しかし、あの技は強力だが、それ故に溜めがあるはず。

 溜めの隙で対処できるはずだ。

 武装変形による防御か――いいや、この状況でそれは好手ではないだろう。

 暴風刃を防御するには、前方全てに対し金属の盾を形成する必要がある。そうなればこちらは視界が塞がれ、さらに機動力も落ちる。

 その隙に夜天星刃――もしくは、未だに姿を見せていない灼堂ルミアに狙われる可能性がある。

 ならば。

 ミヅキは防御ではなく、前に出ることを選んだ。

 溜めの隙に倒す。リスキーではあるが、決まればここでランザを倒せる。

 自分の速度ならば間に合う。そう確信し、地面を蹴り飛ばし疾走を開始。


 ――だが。


「――……ッ!」


 ミヅキは目を見開いた。

 彼が前進した瞬間、ランザは刃を振り下ろし、風を放っていた。

 早すぎる。

 溜めにはまだかかるはずなのに。

 咄嗟に野太刀を変形させ、金属膜を前方へ形成。だが時間が足りていない。魔力の練り込みが甘いので、防御を切り裂かれ、突破される可能性が高い。

 ここまでか、とそう思った瞬間。

 ミヅキの体が切り刻まれることはなく、大きく後方へ吹き飛ばされ、背後にあった壁に叩きつけられた。


「……ぐッ、」


 多少のダメージはあるが、未だ健在だ。暴風刃が正しく威力を発揮したのなら、あり得ないことだ。

 そこで思い至る。

 あれは攻撃力を高めるための風と魔力の収束が完了する前の、未完成な状態で発射し、ミヅキをただ後方へ吹き飛ばして距離を稼ぐためのものだ。

 

 上手くやられた。

 モーション自体は《鳩摩羅迦楼羅クマラカルラ》と同一で、差異は溜めの時間くらいだ。

 ランザは無理にミヅキを倒す必要がない。

 彼は既に、セイバの方へ向かっていた。

 戦う前の言葉も、狙いを隠すためのブラフだったのだろう。


 翠竜寺ランザ。

 ハヤテやレヒトに敗北したとはいえ、食えない相手だ。


 □


 真紅園ゼキは落ちた。

 これで星刃相手に二対一の形に持ち込める――と、ハヤテは次の点を取る算段をつけていた。

 星刃には一対一でも勝ったことがある。

 ならばアンナがいる今、負ける道理はない。

 

 ――その刹那。


 強烈な暴風が、ハヤテとアンナを襲う。


「……っやべ、これは……!」


 咄嗟にアンナを風で弾き飛ばしつつ、前方へ相殺のための風を放つ。


 ランザの暴風刃。風による攻撃だからこそ、なんとか反応することができた。ハヤテは気流を読むことが出来る。ランザの攻撃時には、特有の気流が生まれることがあるのだ。

 大技ならば、特にその変化は大きい。

 だというのに、反応に遅れた。

 それだけの工夫があった。

 ――遠距離かつ、死角からの不意打ち。

 暴風刃の軌道は、星刃を巻き込んでおり、さらにランザの姿は星刃によって死角になっていた。

 ランザはミヅキと戦っていたはずだが、どうにか攻撃に移ることができたのだろう。

 


 そして。

 暴風刃の中にも関わらず、星刃は構わず突撃してくる。

 星刃は自身に無効化魔力を纏わせ、暴風刃の影響を受けていない。

 

(――なるほど……、そういう連携もあったか)


 星刃がチーム戦において強力なのは、相手に無効化魔力を纏わせ防御を封じ、仲間の攻撃を確実に当てさせることできるからだと考えていた。

 が、それだけではない。

 今のように、自身諸共に攻撃させることもできる。それにより、自身の体で仲間を隠すこともできる。

 さらに。

 ハヤテは暴風刃を自身の風で相殺しつつ、星刃と切り結ぼうとするが――星刃はハヤテへ無効化魔力を放つ。

 それにより、ハヤテの風は消え去り、相殺しきれなくなったランザの風によって体勢を崩す。

 

「――借りは返すぞ、俺達のな・・・・

 

 一閃。

 星刃が振るう漆黒の刀が、ハヤテを斬り裂いた。


 星刃もランザも、ハヤテに敗北したことがある。その二人による連携が、見事にハヤテを打倒してみせた。

 




『夜天、翠竜寺による見事な連携で、風狩隊のリーダーが落ちた!

 これで夜天隊、風狩隊共に1得点で並びます!』


『やっぱつえーな星刃。翠竜寺の得点前の動きもいいな、目の前の相手に拘らずにすぐに目標を切り替えて星刃をフォローする判断もいいし、それを実行するために龍上を引き離した技を見事だ。どっかの馬鹿も見習った方が良い』




「……ウィッス……」



 ソウジの解説に対し、ゼキはダイブルームにあるベッド上で、死体のようにうつぶせになりながら答えた。




 □

 




「くっそォ――――っっっ! ずっりィ――――っっ! 星刃先輩ずっりぃーっ!」


 同じくダイブルームに戻ったハヤテは、ゼキが耳にしたら『お前が言うな』と言うであろうことを叫んでいた。




 □




 東部の混戦は、ゼキとハヤテが落ちたことで、残りは星刃、ランザ、ミヅキ、アンナ。

 これで一気に、星刃とランザだけが連携出来る状態となり有利になった。

 

 ハヤテが落ちた直後――


 星刃が叫ぶ。


「――取らせるな!」

 

 星刃の言葉に呼応してランザが動いた。

 野太刀を振るって、銀色の刃は弾き飛ばす。

 それはミヅキが遠方から伸ばした蛇腹剣だった。ミヅキが狙ったのは、ランザでも星刃でもなく、アンナだった。

 眼前に迫る星刃とランザ、ハヤテが落ちた直後の混乱。これらでアンナの注意は夜天隊の二人に引きつけられている。

 そこを突いたミヅキだが、星刃がそれに気づいて阻止。アンナを助けたのは当然彼女のためではなく、確実にアンナを落としてこちらのポイントにするためだ。

 


「龍上ミヅキ……ッ!」


 アンナはミヅキを睨みつつ歯噛みするも、彼に手出しはできない。

 彼女の心境としては、かつてジンヤを苦しめたことがあるミヅキは手ずから潰したい相手ではあったが、今ミヅキのもとへ向かえば、夜天隊にとってのいいカモでしかない。


 星刃はここでもう一点取れると確信した。

 先程と同じ形だ。もう一度ミヅキを牽制しつつ、ランザとのコンボで決める。

 だが――

 




 ――――そこでランザへ水弾・・が殺到する。





「――――っ!?」


 驚きつつ、風によって水弾を防ぐ。

 《水》を操るものなどこの場にはいなかったはず。いるとすれば、この場にいないはずの蒼天院セイハか水村ユウジだが――


「今度はこっちが仕掛けてやる。……ったく、遅ェよ」


「ご、ごめん……本当に、最悪にツイてないと思ったけど……どうにかなった……っ!」

 

 現れたのは、水村ユウジだった。




 星刃はその姿を視認し、


(……なぜヤツがここに? ルミアの報告では、セイハと遭遇していたはずだが)


 セイハとユウジの相性は最悪、その時点でユウジが落ちるのは確定のはずだったが。

 ここにいるということは、そうならなかったということだ。

 ではなぜか。

 ユウジが単独で切り抜けた可能性は薄いだろう。

 ならばそれ以外の要因。

 

(……真紅園が落ちたせいか)


 恐らくはゼキが落ちたことにより、彼のカバーに向かっていたヒメナが単独になってしまい、それを避けたかったセイハが、ユウジの撃破よりもヒメナとの合流を優先したのだろう。

 でなければ、残りの龍上隊であるハンターの援護があったか。


 いずれにせよ、ユウジがこちらへ来れたということは――


「――ルミア」

『ごめん……途中でクモ女に邪魔された、少し遅れる!』

「……急げよ」


 ルミアは初期配置が西側だったことから、そちら側の偵察を命じていた。

 彼女が西の動きを把握してくれたおかげで、伏兵の有無をある程度は把握した状態で戦えたのだが、その役目もここまでだろう。

 こうなってくると、恐らく全員が東側に集まるはず。

 再び混戦になるだろうが、星刃としても望むところだ。

 ランザと連携さえ出来れば、混戦は一気に複数ポイントが取れるチャンスなのだから――そう考えた時だった。

 





 ――突如、地面から巨大な岩壁が岩壁がせり上がった。




 

(岩――《土属性》……ハンター・ストリンガーか……!)


 ハンターとユウジがいち早く駆けつけたのは、彼女達が連携して残りの西側の者達を妨害したのだろう。

 

 この岩壁でこちらとアンナを分断し、意地でもアンナを落とすつもりか――星刃はそこまで考えたところで、さらなる事実に気づく。

 アンナとだけではない、自分とランザも別の岩壁によって分かたれている。



「そういうことか……!」


 先程のミヅキがアンナを狙った動き、あれ自体がフェイント。

 あれで少しでもミヅキがアンナを狙うと思わせればよかったのだ。それで稼げる数秒が、今に繋がっている。

 本命は――


「……ランザッ!」


 星刃が気づいた時には遅かった。




 ランザの周囲には、一つの巨大な岩壁と、いくつもの岩柱が。そしてその間には幾重にも糸が張られていた。

 ここはもはや蜘蛛の巣の中。捉えられた獲物は食らわれるのみ。

 ただし食らうのは巣を張ったハンターではない。


「さっすがダーリン……ワタシの使い方が上手デスネ♡」


 一つの岩柱の上に立ち、うっとりと下方で跳ね回るミヅキを見つめるハンター。

 恐るべきは、ミヅキの戦闘センスだった。

 彼は少しハンターが教えただけで、あっという間に糸を利用した戦闘スタイルをモノにしてみせたのだ。


「くっ……!」


 ランザがミヅキの繰り出す攻撃を防ぎながら呻く。

 足を糸に引っ掛けて、天地逆転した状態からの斬撃。そこから反動を利用し、たわんだ糸を使って跳ね上がったかと思えば、蛇腹剣を別の糸に絡ませ強引に軌道を捻じ曲げて、予測不能な位置からさらに蛇腹剣を伸ばす。

 変幻自在の軌道から繰り出される攻撃の対処で手一杯になった時だった。



「――遅れた分、きっちり仕事しないとね」

 

 ランザの死角から、大量の水弾が一気に叩き込まれた。


 水弾の防御へと意識を割いた瞬間――ミヅキの刃が、ランザの首を刈り取った。


 

『龍上隊、チーム全員の連携で翠竜寺選手を落とした! これで風狩隊、夜天隊に並んで1ポイント獲得!』


『うめェな……、三人できっちり連携してるのもそうだし、今の状況を作るために、まずストリンガーと水村が組んでこっちに来てたのも良いな』



(まったくだな……)


 星刃は解説に同意しつつ、龍上隊の動きに舌を巻く。

 効果的に三人に連携されてしまえば、ランザが落とされ数で劣っているこちらは敵わない。




 

 □





(さて、次だ)


 ミヅキは思考する。

 ランザは落とした。次に手近なのは星刃かアンナ。

 どちらを狙うか――


「次は屍蝋だ」

「了解」「オッケーデスッ!」


 星刃とアンナ、防御力が高いのは星刃の方だ。

 星刃の《無効化》は防御にも使うことが出来るが、アンナの《武装解除》は武装に当てなくては意味がない。あれは防御を扱うことが出来るとすれば、近接戦闘のみだ。

 例えば、《武装解除》ではユウジの水弾を防ぐことはできない。


 ハンターが岩壁を出現させ、アンナの逃げ道を制限。ユウジの射撃によって、さらに動きを制限し、アンナの逃げを封じていく。

 そこへミヅキが蛇腹剣を伸ばし――



 直後、蛇腹剣が氷壁に遮られた。



「ギリ間に合ったぁ~……ごめんアンナちゃん! ったく……バカ風狩、アタシより先に落ちるなっての!」

「さんきゅー、キララ、でかした!」


 アンナとキララが合流。

 キララの氷壁がある分、かなり防御力が高まったと見ていいだろう。


「やっほー兄貴。ここで三回戦の前哨戦といっちゃおーか?」

「……ほざいてろ」


 ミヅキはキララを相手にせず、あっさりを引き下がる。

 アンナとキララが合流したのなら、狙いを単独の星刃に切り替えるだけだ。




 龍上隊が星刃を狙おうとした瞬間――





 

――――莫大な魔力反応、そして次の瞬間、その場にいた全員が戦慄した。





 ミヅキ、ユウジ、ハンター、アンナ、キララ、星刃、ここに居合わせた六人全員が、一度に巨大な氷壁・・によって分断されたのだ。

 当然、キララも狙われてる以上、彼女の仕業ではない。

 であれば仕掛けたのは。




「……来やがったか」とミヅキは吐き捨て。


「いよいよおでましか」と星刃は気を引き締めた。




 ――蒼天院セイハ。

 剣祭でゼキに敗北したとはいえ、つい先日まで《頂点》だった男が、混沌とした場へと参戦した。

 


 セイハが作り出した氷壁は、さらに上部に氷を広げて箱状になり、その場にいた騎士達を閉じ込めた。

 氷の強度も一つ一つが異なっていて、閉じ込める相手に応じた強度が設定してある。

 ミヅキに対しての氷は高い強度を。

 星刃に対しては、最低レベルの強度だった。なぜなら星刃はどんな強度だろうが一撃で突破してしまうので、彼への氷壁は『一撃分の足止め』と最初から割り切っていた。


「やっぱバケモンだわ、蒼天院セイハ……」


 同じ氷使いであるからこそ、セイハの異常さがよくわかる。

 大勢を同時に補足し、さらには強度の細かな振り分け、そして強度自体も高い。

 《魔力量》、《出力》、《精密》、そのどれもがずば抜けてなければ成立しない大技だ。


「っつーか、アタシだけ閉じ込められてないカンジ……? なんで……?」


 キララだけは氷壁により分断されているものの、周囲を覆われ閉じ込められている訳ではなかった。


「――――当然、まずあなたから落とすためですよ」


 声。同時、拳が飛んでくる。


「な……ッ!」


 咄嗟に氷を張りつつガード。

 飛んできた拳は、氷を砕いてキララがガードに上げた腕にダメージを通す。


 零堂ヒメナ。かつてキララが剣祭で下した相手だ。

 一度は勝利したのだ。簡単に負ける訳にはいかない――そう考えるキララだったがしかし、甘かった。


「――ッ!? なに、これ、硬ッ、壊れな――!?」


 突然足元が凍てついて動かない。しかも容易には破壊できない凄まじい強度でだ。

 ヒメナの氷ではない。


「すみません。正々堂々一対一でリベンジしたかったのですが、今回はチーム戦なので」


 ――セイハの氷だ。当然、簡単には壊せない。

 動きを封じられたところで、再びヒメナの打撃がキララを容赦なく襲った。


『圧倒的――ッ! 蒼天院隊の二人、到着するや否や、混戦を支配してしまったあ!

 龍上キララ選手が落ちて、蒼天院隊に1点獲得! これで4チームが1得点で並びました!』


 □


 キララを落とすためにセイハとヒメナが動いている際、同時に動いている者達がいた。


 星刃は無効化によって氷壁を一瞬で突破。

 即座に周囲を把握し、キララだけが閉じ込められていないことに気づくと、彼女が蒼天院隊に狙われていることを看過。

 ならばと、すぐに次の狙いを定めた。

 

 狙いはアンナ。キララが狙われてる以上、もう彼女への援護はない。

 そしてさらに――ハンターも同時に狙う。

 ハンターが龍上隊の中では一番こちらに近く、間にユウジとミヅキを挟んで、セイハ達がいる。セイハ達がキララを落とせば、次はミヅキが狙われ、ユウジはその援護にいく公算が高く、残されたハンターは狙い目だった。


 アンナとハンターが閉じ込められている氷壁へ、同時に無効化魔力を放つ。

 氷壁が一瞬で消失。

 だが、そうなれば当然――


 アンナとハンターが、星刃へ襲いかかった。


 星刃はゼキによって左腕を折られている。いくら星刃が無効化魔力を持っていようが、魔力が絡まない剣戟ならば、片腕の相手を落とすのは容易い。

 

 アンナとハンターはお互いに、相手より先に星刃を落とさんと動くが――








「……ああ、左腕こいつは釣り餌だよ」








 アンナとハンターの二人に。

 星刃の無効化魔力により、魔力的な防御が使えない彼女達に。











 ――――光剣が突き刺さった。 







「――――さすが星刃、ずる賢い♡」



 放ったのは、灼堂ルミア。


 到着が遅れたことにより――いいや、あえてセイハから距離を取って身を隠していたことで、彼の氷壁から逃れていた彼女の奇襲が、見事にアンナとハンターを貫いた。



「馬鹿言え、当然の、単純な策だ」


 




『なんと二人同時撃破――ッ! 星刃選手の釣り&無効化からの、伏兵であるルミア選手の攻撃が綺麗に決まった!

 これで夜天隊は一気に2得点、トップに躍り出たぁッ!』






 □



「うがーっ、くやしー!」

「もぉー、超くやしいんだけどーッ!?」



 ダイブルームに戻ったアンナとキララが叫ぶ。



「あ~~~……すまねえ二人とも。ジンヤだったら奇襲警戒だとか気づけたと思うんだけどなあ……」

 

 風狩隊は真っ先に全員が落ちてしまった。

 


 ハヤテが敗因を自己分析するなら、やはりチームとしての練度の低さ――というか、隊長の未熟さだろう。チームをまとめなければいけない自分が真っ先に落とされていては話にならない。






 □



「ウウ~……、ソーリーデス、ダーリン、ユウジくん。やられちゃいマシタ~」


『構わねえ。テメェの分の・・・・・・仕事は十分だ・・・・・・



 短く端的なミヅキの返答。

 簡素なものだったが、それでも。

 彼に多少でも認めてもらえたことが。

 彼のために最低限だろうと役目を果たせたことが、ハンターはとても誇らしかった。



 

 □






 現在順位




 1位 風狩隊  1点 

 

 2位 蒼天院隊 0点

 2位 夜天隊  0点

 2位 龍上隊  0点


 

 ↓



 1位 夜天隊  3点


 2位 蒼天院隊 1点

 2位 龍上隊  1点

 2位 風狩隊  1点






 各チーム生存メンバー


 【風狩隊】 最終得点 1


   脱落 ハヤテ キララ アンナ




 【蒼天院隊】  セイハ ヒメナ 

 

   脱落 ゼキ 




 【夜天隊】 セイバ  ルミア


   脱落 ランザ




 【龍上隊】 ミヅキ ユウジ 


   脱落 ハンター






 □




 これで風狩隊は全員が脱落、生存得点ボーナス獲得の望みは潰えた。

 得点上は未だ並んでいるものの、これ以上の得点はないので最下位は確定だろう。

 


 残るは3チーム、各チームそれぞれ残りは二人。


 一気に2得点しリードを広げた夜天隊がこのまま逃げ切るか。


 それとも、蒼天院隊、龍上隊が巻き返すのか。


 勝負はいよいよ最終局面を迎える。










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