プロローグ 彼の前日譚
『将来の夢』をテーマにした作文を書きましょう、という授業が大嫌いだった。
――僕は、夢を見ることが嫌いだった。
僕には、夢がなかった。
僕には、何もなかった。
夢も、才能も、友達も、好きなことも、なにも。
夢がないから努力することもない。
才能がないから努力せずできることもない。
好きなことがないから、努力したこともない。
僕は、夢という言葉が嫌いだった。
何かを目指せる人が、嫌いだった。
羨ましかったのだ、妬んでいたのだ。
何かを目指せる人は、何かを持っている人だ。
それは、夢だったり。
才能だったり。
友達であったり。
そのことを好きであることだったり。
何もない僕に、夢などあるはずがない。
僕は、何者にもなれず、なにも成し遂げることができない。
ずっとそう思っていた。
けれど――あの日、全てが変わった。
彼女に出会って、全てが変わった。
あの日から、変わりたいと願えた。
何もない僕に、何かが出来た。
そして――あの日からしばらく月日が経って。
《約束》をした日。
《約束》をしてから、必ず叶えると誓った、夢が出来た。
途方も無い夢だけれど、必ず叶えると誓っていた。
だが――その夢は、完全に潰えた。
それでも、僕は――。