過去と現在
「ねぇねぇ〜おと〜さん」
「なんだい? 弦」
「おと〜さんはなんで強いの?」
「なんでだとおもう?」
「う〜んとね、強くなりたかったから?」
「違うよ」
「う〜ん、なんでだろう?」
「それはね、守りたいものがあるからだよ」
「守りたいもの〜?」
「そうだ、でもな大事なものを守るためには2つ必要なものがあるんだぞ」
「2つ〜?」
「勇気と覚悟だ」
「ゆーきとかく…ご?」
「あぁ、勇気がなければ覚悟はできないからな
弦には守りたいものはないのか?」
「いるよ! 奏ちゃん!」
「隣の音無さん家の子かぁ」
「うん! 僕ね! 奏ちゃんのこと好きなんだ!」
「はっはっは! それならちゃんと守れるようにならないとな!」
「ゆーくんは人を好きになるってどういうことかわかる?」
「どういうことなんだ?」
「覚悟をする事だと私は思うの」
「覚悟…?」
「軽い気持ちで好きなんて言葉は口に出したらいけないんだと私は思うんだよ
だから…ゆーくんも人を好きになる時は覚悟をして欲しいんだよ…」
「ゆーくん、私…また…ドジしちゃったみた…い」
「奏! 喋るな! 傷口が開くだろ!」
「ゆ…く…ん…今まで…ありがと………」
「奏!奏ぇえええええ!!!!!」
ユズル「奏ぇええ!」
目を覚ましたのは白い部屋のベッドの上。
額に脂汗を浮かせ、頬を伝って垂れている。
ユズル「ハァ…ハァ…なんで…なんで今更…」
俺のせいで…俺が覚悟をしなかったばっかりに…
ユズルは拳を握りプルプルと震わせている。
その直後ガラッ! と扉の音が鳴り足音で騒がしくなった。
シャル「ユズル大丈夫なの?」
アリス「大丈夫ですか?」
ユズル「…あぁ大丈夫だけど気分が悪い」
ジーラス「私の回復魔術は傷は治せても血までは戻らないからね」
ユズルの顔は青ざめていた、ロボとの戦いで大量の血を流して貧血になっていたのだ。
シャル「……ねぇ、カナデって誰なの?」
アリス「シャル!」
アリスは咄嗟に止めようとしたがもう遅い。
ユズル「奏は…俺の幼馴染みで大切だった人だ」
シャル「大切だったってことは…」
アリス「まさか…」
少しの沈黙の後にユズルは言った。
ユズル「あぁ…死んだよ」
ユズルの言葉に空気が重くなる。
シャル「…」
アリス「…あの、ユズルさんのこと教えてくれませんか?」
また無言が続いた、するとアリスが口を開いた。
アリス「む、無理なら言わなくて…」
ユズル「あぁ、せっかくだし話してやる」
心做しかユズルの表情が明るくなった気がする。
今ここで喋らなければ後々何か後悔するかもしれない…
それに俺だけこいつらの事聞きっぱなしなのも分が悪い。
だから…もう逃げない
保健室のベッドの上…ユズルは語り始めた。
ユズル「俺は小さな頃から最強と言うかまぁとにかく強い父親に武道を教わってたんだ
そのおかげで俺は21歳…ちょっと前に世界最強の称号を得た」
アリス「だから魔術は使わなかったんですね」
シャル「世界最強……?
最強の父親?」
アリスは理解しているがシャルはあまり理解出来ていないように見える。
ユズル「アリス、俺は魔術を使わないんじゃない
"使えない"んだ」
シャル「えっ!? で、でもこの前男達に絡まれてる時に使ってたじゃない!」
こんな純粋な子はいるだろうか…ユズルはそう思いながら何か悟ったような顔でシャルを見る。
アリス「確か……黒魔ミラクルパンチでしたっけ?」
ユズル「あれは魔術じゃない
ただぶん殴っただけだ」
シャルは驚きのあまりきょとんとした顔になっている
ユズル「で、だ
奏は俺の幼馴染みであって今から5年前に何者かに殺された
その時は俺も一緒にいたんだが後ろから刃物で刺されて1発だったよ」
今はこんなにも軽く話しているが実際好きな人を目の前で殺された時の怒りと憎しみはえげつないものである。
でもユズルは一つ一つ過去を明かしながら、自分が抱えてた悩み・怒り・憎しみを解消していく。
そうだよ…なんで今まで人に話そうとなんてしなかったんだ。
何もかも全部1人で抱え込んで…今の俺には…こいつらがいるじゃないか…
ユズル「というわけで終わ…ってなんでお前ら泣いてんの?」
話が終わるとシャルが号泣している。
アリスも何故か涙ぐんでいる。
シャル「だ、だっで…そんな過去があるとは思ってないじゃない!」
ユズル「はぁ〜? 俺の過去なんてお前らに関係ねぇだろ」
アリス「そんな事言わないでください!」
何故かアリスが怒っている。
アリスが怒るのは初めてじゃないだろうか…
元々人を怒らないアリスが人を怒るなんて珍しいにも程がある
ユズル「な、なんで怒ってんだよ…」
アリス「お前らに関係ないとか2度と言わないでください
今では家族みたいなものなんですから…」
シャル「そ、そうよ! もうユズルは家族みたいなものなんだから!」
シャルは顔を赤くして照れながら言う。
ユズル「悪かった…もう2度と言わない」
ジーラス「ぐぅ…」
このままいい話で終わると思っていたユズルだが、沈黙が続く空間にいきなりいびきが入ってきた。
アリス「あぁ…」
シャル「ジーラス先生…」
ぶちっ…とユズルの中で何かがちぎれる音がした。
ユズル「ジーラスてめぇ!
人がせっかく喋ってるのに寝てるんじゃねぇ!」
胸ぐらを掴みぶん殴る、ついさっき見た光景をアリスとシャルはまた見せられるとは思ってもみなかった。
6話終わり




