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平成の騎士団  作者: 青原 樹
第1章〜7人の隠された力〜
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第3話 未来を見る眼

 一週間後。遂に校内大会、『初陣戦』が開かれた。

 開会式で、ルールが詳しく説明された。


 試合は10分間。個人戦。トーナメント形式。

 防具を体につけた状態で行う。体力制で、最大100。

 武器をぶつけ合って相手の体力を0にすれば勝ち。また終了時、両方体力が残っているならば、体力の多い方が勝ち。

 弓矢と銃においては、ヘッドショットはなし。但し首はOK。

 また、ステージは「キューブ」にて設定される。


 キューブとは、ステージを作り出す、一立方センチメートルの立方体の形をしたアイテムだ。公式試合で良く使われるが、一般向けにできないか実験中だ。

 会場に設置すると、キューブが光って開き、ステージが展開される。建物も海も、橋も、上手に再現できるのだ。このステージの中でプレイヤーは戦う。

 一回戦第一試合。翔陽の番だ。相手はナイフ使いの3組、坂田(さかた)啓二(けいじ)


「坂田。あんなやつ余裕だろ?」


「まぁな。へし折ってやるぜ」


 応援する声が聞こえる。同じクラスの生徒なのだろうと、翔陽は思った。

 ステージは平原。建物もなにもない、まっ平らである。一騎討ちに向いているステージだ。


「試合開始!」


 と同時に、翔陽は間合いを詰めた。


――グローブは、間合いを詰めれば勝てる。


 そう先輩が教えた通りに。


「剣崎選手、腹めがけて一撃……とはいかず、同じ接近戦を得意とするナイフの反撃を食らってしまった!」


「坂田選手、ナイフの特徴を生かしましたね。ナイフはもっとも軽いことから技の出がとても速い。さらに坂田選手のもって生まれた反射神経が剣崎選手を上回っているため、剣崎選手は攻撃をよけるのが難しいんですよ」


「残り7分30秒。剣崎選手、連続切りを食らって残り50! グローブもボロボロですが、反撃出来るのでしょうか?」


 初陣戦にのみ登場する、この実況。これは三年教師によるものだ。

 何度も攻撃のチャンスを伺うも、啓二の速さの前では何も出来ない。翔陽は焦った。


――ダメだ、どれも通用しない。このグローブも使い物にならないし、どうすりゃいいんだ……。待てよ、あれは使えるのか? 確かめなきゃ。


「おぉーっと剣崎選手、走り出した。と思えば、こっちに向かってきます! これはどうしたことか!?」


 その行為は観客や、試合をしている他の選手をも驚かせた。


「アイツ、何する気だ?」


 会場が騒然とする。それを気にせずに走る翔陽。本部席へと向かう。


「な、なんと!? 剣崎選手はグローブを捨て、代わりに剣を、剣を持っていってしまいました! あれは優勝者に送られる、いわばトロフィーのようなもの! 審判が駆け寄っていきます!」


 この剣は、五年ほど前にある卒業生が贈呈したもので、鞘は黒色をベースとした、美しい黄金色の鎖が描かれている。

 翔陽はステージに入る。しかしそこで、審判に肩を捕まれた。


「待て! これは優勝賞品だぞ。勝手に使うとどうなるか……」


「審判さん。これ、武器として使えますか?」


 そう言いながら、柄が右に来るように持ち直した。


「何を言っているんだ君は。優勝賞品だから使えるわけない……って、何抜こうとしているんだ! やめなさい!」


――抜けるはずがない。本物ではないのだから。


 誰もがそう思っていたとき、鞘からパキンッという音がした。翔陽が軽く力をいれて引き抜き始めたからだ。

 そのままゆっくりと引き抜く。

 突風が剣から発せられ、あらゆるものを巻き上げた。

 やがて、刃が姿を現した。

 鏡のように光を反射する白い刃。皆驚きを隠せなかった。

 翔陽は剣を振った。重さは彼が持つにはちょうど良く、すぐに慣れてしまった。


「嘘……だろ……」


「これで、使えますね」


 そしてステージへ歩きながらこう言った。


「大輔、健心、麗奈。嘘ついてごめんな。君たちが見たあの目。あのときは何があったのか知らない振りをしていたんだ。本当は……最初から知ってたんだ」


 彼の口から発せられた衝撃の事実。麗奈はいてもたってもいられなくなった。


「最初から知ってるって……どういうこと!?」


 大声で聞く。翔陽は、目を青く光らせながらこう言った。


「言った通りだ。以前にもこの力を使ってたってこと。今君たちが見ているこの眼。『未来眼(ブルーアイ)』と言って、少し先の未来が見えるんだ。小6の時からあったんだ」


「待てよ、それだったら俺も知ってるはずだろ? なのに何で?」


 今度は大輔だ。


「多分発動してなかったんだよ、その時だけ。でもあるということは隠してた。さぁ、もういいだろ。試合を再開させなきゃね」


「ケッ、何だよ。まぁ武器を変えたところで俺は倒れねぇがな」


 横から話を聞いていた啓二。馬鹿馬鹿しいと一蹴したような顔で、翔陽を見る。

 試合再開。翔陽は突っ込むことをやめ、構えた。


「何だ、やめたのか。いいぜ。こっちから仕掛けてやる!」


 翔陽は深呼吸をした後、目をゆっくりと開き、未来眼(ブルーアイ)を発動させた。


――ナイフの攻撃。こちらが防いだ後に小さくバックステップ。そして腰を狙う、か。


 翔陽が見た通り、啓二が切りかかってきた。

 それを防ぐ。

 続けて小さなバックステップ。これも眼で見た通りだ。


「腰に当ててとどめだ! 未来なんて覆してやる!!」


 ところが、翔陽の剣はナイフより先に啓二に当たっていた。翔陽が啓二の左脇腹に突いたのだ。そして偶然にも、そこは啓二の弱点だった。

 弱点。試合ごとにランダムで決まる。その位置は本人にも分からない。当たれば赤い稲妻のエフェクトが出て、2倍のダメージ。


「まさか、そんなことが……」


 剣の威力。ハンマーを越えるほどとても強い。その力は、弱点ヒットダメージを合わせ、啓二の体力を0まで削ってしまった。


 啓二の防具は、黒色に変色した。戦闘不能である。


「し、試合終了!! なんと、剣崎選手の大逆転勝利だあああああ!」


 歓声が上がる中、翔陽は背伸びをした。


「フゥー終わった。さて、皆どうなったかな」


 翔陽は剣を鞘に納めた後、持ち手が右肩に来るように背負った。

 席に戻ると、健心がいた。翔陽より先に勝利していたのだ。


「いやぁすごいよ。もう剣でいけるんじゃないかな?」


「あぁ。後でそうしてもらうよう頼んでおくよ」


「楽勝楽勝。あたしの狙撃銃(ライフル)はどこにいても撃ち抜けるから最強だね」


 鈴菜が試合を終えて帰ってきた。手には狙撃銃(ライフル)がある。扱いが難しく、学校には置かれていなかったものだ。

 銃には、狙撃銃(ライフル)の他に、拳銃(ハンドガン)散弾銃(ショットガン)機関銃(マシンガン)があり、どれにするか決められるのだ。


「勝ったのか?」


「まぁね。相手が散弾銃(ショットガン)使ってきたから移動に手間取ったけど」


 麗奈、大輔、綾乃も帰ってきた。皆疲れが出ているが、一回戦は突破したようだ。


「皆お疲れ。一回戦は乗り切れて良かったな……ってあれ? 皆何でこっち見ているんだ?」


「何でじゃねぇよ。皆さっきの見てんだから気になるんだよ」


「ああ、あれか。あれはな……」


「これより第二回戦を行います。準備をしてください」


 翔陽が解説をしようとしたとき、アナウンスが鳴り響いた。


「あ、次僕だ」


「そうだ。皆で健心を応援しよう。時間もあるから」


 翔陽がそう提案した。


「それは助かる。見ててくれよ、次の相手もコテンパンにしてやる!」

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