第2話 個性豊かなクラスメイト
たった数分で、喧嘩のような戦いが終わった。麗奈たちは唖然とし、生徒達は完全に伸びてしまった。
「翔陽。お前……」
と聞く大輔。
「うん? どうした?」
翔陽の目は、元の茶色に戻っていた。
「何だよさっきの。僕見たことないよ」
健心もそれに続けて聞いた。
「んー、実は俺もよく分からないんだよ。なんかこう、やって来る攻撃が全部分かるっていうか、『先の未来が読める』っていうか」
「麗奈ああ!! 大丈夫うううう!?」
そんな声が突然聞こえてきた。
同時に、一人の少女が叫びながらこっちへやって来る。ここにいるメンバーで一番小さく、内巻きのボブに、青い髪をしている。
大輔が身構えた。
「なんだよ、またこいつらと同じ類いのやつか?」
「いや、あの子は大丈夫よ」
こちらについた途端、少女はバタリと倒れこんだ。
「運動嫌いは相変わらずね……。あ、ごめん。紹介しなくちゃね。この子は銃礎鈴菜。少し前に出会って、すぐ仲良くなった子よ」
この時男子3人は、彼女の瞳の色が青色だと気づいた。
「大丈夫って聞いたのに無視して紹介とか。ひどいよ」
鈴菜はまだ息を切らしている。
「ごめんね」
「まぁいいけど」
このとき、男達三人は完全にスルーされていることに気づいた。
「おうおうおう。楽しそうにやってんなぁ」
また誰かが教室に入ってきた。このメンバーで一番大きい。
肩につくほどのストレートヘアー、髪と瞳の色は黄色。不良のような態度だ。
翔陽が皆の顔を見渡すと、健心の顔が真っ青になっていることに気づいた。大輔もそれに気づいたようだ。
「健心どうした? 宿題出し忘れたことに気づいたか?」
「いや入学したばかりの中学生に宿題はないよ。あいつに驚いていたんだよ。あいつは杖光寺綾乃。僕と同じ小学校だったんだけど、そのときのあいつは素行が良くなかったんだ」
「おお、健心じゃねぇか。まさか中学一緒だったなんてな」
そういいながら綾乃は肩を組んできた。
「や、やめてくれって。何されるか分からないから、余計怖いよ」
君にとってすごく怖い人なのは良く分かったよ、と顔で示す四人。
健心はガックリと肩を落とした。
14時30分。チャイムが鳴った。生徒達が席につく。
「いいか、お前ら。俺は担任の西山一輝だ。よろしく頼むぞ」
西山一輝。細身の男。43歳。
この学校の卒業生で、二十歳の時にここの教師になったのだそうだ。
体育の先生で運動が得意。
「先生は、『平成の騎士団』を知っているんですか?」
大輔は早速質問した。
「知ってるも何も、あの人たちの2学年下だったからな。カッコよかったよ。まぁその話は置いといて、一週間後に校内試合があるからな。練習しとけよ」
「えええ。あたしたちまだ初心者だぜ」
綾乃を始め、皆口々に「えー」「無理だろ」と言う。
「一人で試合すんだからな。頑張れよ」
クラス全員が不安に包まれるなか、翔陽は一人、やる気を出していた。
土日を抜いた一週間。それぞれに別れての練習が始まった。因みに、健心はハンマー、麗奈は弓矢、鈴菜は銃、綾乃は杖を選んだ。
翔陽は反射神経がよく、相手の攻撃を受け止めたり、かわしたり……。いろいろ出来た。
「なぁ、学校うちにある武器以外でも出れるのか?」
大輔は翔陽に聞いた。
「出られるよ。ただし、ルールで決まっている範囲内ならな」
武器は、基本何でもあり。学校に用意されていないものでも、申請すれば使用できる。
「そういや聞いた話、麗奈たちも持参した武器使ってるらしいな」
「あぁ。自分の武器も、それなりに有利なんだろうな」
こんな話をしながら、汗だくになるまでやり続けた。
学校終了後、生徒たちはそれぞれの部屋へと向かった。
七神中学高等学校は、長期休暇を除いて寮で暮らすことが決まっており、その寮はホテル並みに大きい。
生徒が暮らす本棟は6棟あり、1学年につき1棟。食堂などがある特別棟は、高校生も含め、全生徒が使う。本棟は7階、特別棟は5階まである。1組は7階で、下の階に行くごとに2組、3組、4組……となる。
寮の正面から見て、左側が男子、右側が女子と分けられており、異性が入ってこないよう、ガラス張りの扉で仕切られている。尚、ロビー、エレベーターホールなどは、共有スペースとなっている。
部屋は家具、家電が一式揃っていて生活に困ることがない。基本は自炊だが、お金を支払えば、食堂で食べることもできる。
部屋についた翔陽。701号室に住んでいる。荷物を置き、背伸びをした。
「あー疲れた。とっとと食堂行って寝よう」
外へ出ると、聞き覚えのある声が聞こえた。
「あれ、偶然。部屋近かったな」
見ると、重そうな荷物を持った大輔がいた。
「あれ、702号室って誰が入ってるのか?」
翔陽は、部屋に入ろうとしたときに気づいたことを話す。
「さぁ。そもそもいるのかどうか分かんねぇんだ。1組の生徒なのは分かるんだが」
「ふーん」
その後大輔と別れた翔陽は、夕飯を食べ、特別棟3階にある浴場に入ろうとした。
誰かとすれ違った時、翔陽は、急に殺気を感じた。
――殺気の正体は今の人か。なんなんだ、一体……。
そんなことを考えながら、翔陽は入っていった。