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平成の騎士団  作者: 青原 樹
第1章〜7人の隠された力〜
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第1話 新たな伝説の始まり

 2018年4月12日。桜の花びらが風に舞うこの季節に、七神中学高等学校第32期生280名が入学した。


「280名の新入生の皆さん、入学おめでとう」


 どこにでもあるような祝辞が、静まり返った体育館内に響く。この七神中学高等学校も、どこにでもある、普通の中学校。





 すべての転換期である、1989年を過ぎた現代においては。

 国力の増強という名目のもと、従来の部活動が廃止され、代わりに新たなシステムが導入された。

 それが『戦闘』である。

 運営団体によって認められた様々な武器から一つ手に取り、生き残りをかけた戦いを行う。勝利条件はシンプルで、相手より多く体力を残すこと。自らの肉体でRPGゲームをするようなものだ。





 入学式終了後、入学生は体育館一階の格技場に移動した。ここで、三年間使う武器を選ぶのだ。この学校の武器は5つ。

 近接戦を得意とする「グローブ」。

 近距離における攻撃力が高い「ハンマー」。

 遠距離攻撃を得意とする「弓矢」。

 同じく遠距離攻撃で、風の影響を受けないために相手を狙いやすい「銃」。

 近距離、遠距離ともにバランスがとれ、技をどれよりも速く出せる「(ロッド)」。


 皆が自分にあった武器を探す中、一つに決めきれず迷っている、茶髪茶眼の生徒がいた。彼の名は、剣崎(けんざき)翔陽(しょうよう)。剣道場主の父を持つ、真っ直ぐな性格の少年だ。そんな彼に、


「グローブ面白そうだな、翔陽。迷ってんなら一緒にやろうぜ」


 と提案した生徒がいた。翔陽の小学校からの友人、拳藤(げんどう)大輔(だいすけ)だ。

 翔陽と同じくらいで、黄緑色の髪と瞳をもつ。小さい頃から身体を鍛えていたため、相当な筋肉がついている。


「あぁ、いいよ。一緒に全国行って、天下取ろうぜ!」


「天下って、戦国時代かよ」


 他の人も武器を選び終え、新入生は次のステップへと移る。


「さて、次は色決めだな」


 全ての武器には、色がつけられる。翔陽は格好いい、という理由で黒色にした。


「大輔は色決めないのか?」


「あぁ。俺にはこれがあるからな」


 そう言って大輔が取り出したのは、この学校では見たことの無い形で、紫のグローブだった。


「親が、グローブを使うなら、これを持っていけってさ。カッコいいから気に入ってんだ」


「ホントに変わった形のグローブだな」


「そうだろ? このデザインを考えた人はマジで神だよ」


 学校にあるグローブは、サッカーのゴールキーパーが使うような形だが、大輔のグローブは、中手骨の部分から3センチほどのトゲがついている。


「何でも昔、親父がこの学校の生徒だった時に使ってたんだと」


「なるほど。昔と今で形が変わった武器もあるのか」


 こうして、皆の武器が完全に決定した。

 武器決めのあと、翔陽と大輔は教室へ向かった。この学校は、1組から7組まである。翔陽たちは1組だ。


「お、来た来た。おーい!」


 窓側の席で誰かが呼んでいる。


「あぁ。今行く」


 大輔に誘導されるがまま、翔陽は自分の席に座った。教室は1クラス40人。


「紹介するよ。鎚本(つちもと)健心(けんしん)だ」


 鎚本健心。翔陽よりも少し高く、青緑色の髪と瞳を持っている。


「よろしくな、えっと、剣崎君」


「堅苦しく言うなよ。翔陽でいいよ」


「分かった。これからよろしく」


 そういって二人は握手をした。


――なんだコイツの握力……。


 そう思ったのもその時だった。

 午後2時。翔陽たちしかいなかったこのクラスに、いきなりたくさんの生徒がぞろぞろ入ってきた。20人、いや30人くらいいる。しかも他クラスの生徒も含まれている。


 三人は驚きで声もでなかった。とその時、突然その生徒たちが二列に並んだ。道を開けるように。


――まさか、中心人物がいるのか。

 彼らはそう思った。その勘は当たった。

 やって来たのは、なんと女の子だった。翔陽たち3人より少し低く、ショートヘアで、緋色の髪と瞳。容姿端麗で、遠くから見てもスタイルが良く、とても可愛いことから、男子だけでなく女子にも人気がある。


「そんな事しなくていいのに。お嬢様じゃあるまいし」


 その女の子が落ち着かせるも、


「何を言うんですか弦葉さん」


「そうですよ。お嬢様以外の何者でもありませんよ、弦葉(げんば)麗奈(れいな)さん」


 こう返されてしまった。

 三人は相談をし始めた。この相談は、翔陽が止めに入るという形ですぐにまとまった。


「おいおいおい。君たち何してんだよ」


 早速話しかける翔陽。


「なっ、何だ貴様は!?」


「おっと失礼。でも俺の目にはそこの女の子をもてはやしているように見えたから」


「出たー。翔陽お得意の挑発。小学生ん時から変わんねぇな」


 大輔は笑いながらこう呟くも、内心はすごく緊張していた。

 それまで驚いていた生徒たちが、一斉に翔陽の方に鋭い目線を浴びせてきたからだ。


「ちょっとやめてよ、こんなところで」


 完全に怒りに入った生徒たちには、もう麗奈の声が聞こえない。


「何てことを言うの!? もう絶対許さない!!」


「お前覚悟しとけよ! みんな、奴を立ち直れないぐらいに叩きのめせ!!」


 そういった途端、全員が臨戦態勢に入った。バカにしたことを後悔させてやる、と言わんばかりの構えだ。


「おい! いくらなんでも翔陽にあんだけの人数を相手にする力なんて持ってないぞ!! どうする健心!」


「応援に行ったほうが良いかな?」


 大輔と健心が相談していた時、翔陽が左手のひらを大輔たちに向け『来るな』というジェスチャーをした。

 そして身構えた。初心者にしては様になっている姿勢だった。

 生徒たちもそれを見たのか、さらに激しさを増して飛びかかる。

 全部避けるのは無理だと誰もが思った。それでも翔陽は襲いかかる集団を迎え撃った。

 その時に起きた光景は、その場にいた全ての者を驚かせた。

 迫り来る攻撃を当たる寸前でかわし続ける翔陽。

 同時に生徒達の腹を殴り、その場に転ばせる。

 彼はすべての攻撃をかわしてしまった。まるで、次に来る動きが分かっていたかのように。

 そして全員を倒した後。


「大勢で攻めるのは卑怯だろ。一対一で来いよ。あと、あまり人をバカにするなよ」


 その言葉を放った翔陽の目は、青く輝いていた。

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