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平成の騎士団  作者: 青原 樹
第1章〜7人の隠された力〜
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第12話 二人の決意、二つの眼

 金曜日の昼休み。今日は誰も集まることなく、別々で過ごしている。綾乃は食堂で、一人でパスタを食べている。


――あ、鎌野と健心だ。


 食べ始めて少しした頃、二人がやって来ることに気づいた。綾乃はその二人に手を振った。

 二人もそれに気づいたようで、こちらに向かってくる。


「どうしたんだよ綾乃。ボッチだから誰か来ないかなぁ、とでも思ってたのかい?」


 と冗談を言う健心。綾乃は、


「――合ってるよ」


 と返した。健心は何も言えなかった。綾乃は続けた。


「眼のことで相談したくてさ、ちょうど来てくれたから良かったぜ。それで、アタシに足りないものというのは――」


「無いな」


 秀一の返答が、綾乃の言葉を遮った。二人は思わず、


「は?」


 と言ってしまった。秀一は、目を赤く染めながら話を続ける。


心眼(レッドアイ)を通して見る限り、お前は自分について悩んでいた。しかしその悩みは入学してからの三週間で解決した」


「ちょっと待てよ。解決したのに、何でアタシには眼が習得できないのさ?」


「思い出してみろ。眼の習得条件は、他人が自分の足りないものを見つけてあげることだ。お前の場合は既に自分で見つけ、自分で解決した。それでは意味がない。そしてそれは鎚本、お前も同じだ」


「ぼ、僕も!?」


 唐突に言われ、驚きながらこう返す健心。秀一はそのまま続けた。


「そこでだ。もうひとつの方法を実行しようと思うんだが、どうだ? やってみないか?」


 二人は(しばら)く顔を見合わせた。その後揃って頷き、秀一の顔を見た。


「いいぜ、やってやるさ。なぁ綾乃」


 健心がやる気を出した。


「おう。どうやるのか知らないけど、剣崎達に見せつけてやろうぜ!」


 綾乃もそれに続いた。


「決まりだな。それじゃ午後11時に……」





 5月1日火曜日。秀一は、健心と綾乃を除いた4人を呼んだ。4人とも、眠たそうな様子だ。


「何だよ秀一。こんな朝早くから」


 と聞く翔陽。秀一はそれに対し、


「見てろ。面白いものを見せてやる」


 と返答した。

 グラウンド中央には健心と綾乃が向かい合っていた。健心の手にはキューブが。それを地面に置き、ステージを展開した。

 ステージは草原。何もない平面のステージである。

 試合開始のブザーが鳴り響いた。と同時に、健心は橙色の眼を、綾乃は水色の眼を発動させた。


「おい、(ロッド)って攻撃できたか?」


 と聞く大輔。秀一は、


――いや気づくところそこかよ。


 と突っ込みながらも、返答した。


「魔法の発動に特化した武器だから、普通はできない。だが、彼女の(ロッド)は違う」


「いくぜ、健心! そぉーれっと!」


 綾乃が先に仕掛けた。青と赤の2色のラインが入った、真っ直ぐな(ロッド)。先端の赤い(たま)から魔法が放たれるのだが、綾乃の(ロッド)は、それに加えて他にはない機能があった。それは『ムチ』。伸縮自在で素早い攻撃が可能である。


「速ッ! どうなってんのかさっぱりわかんねぇ」


 と目を回す翔陽。秀一はフッと笑い、


「そうだろ。これが彼女の武器の力だ。そして、それを活かすのが、あの眼だ」


 綾乃の猛攻を、ハンマーで必死にガードする健心。


――クソッ速い! 隙が見当たらない!


 そう思うのもやっとなほどの連続攻撃。反撃が出来ないでいた。


――見つけたよ! お前の隙!


 綾乃がここで健心の足元を狙い、赤い玉を当てた。


「うぐっ!」


 思わず声をあげた。そのまま綾乃は後ろへ下がった。


「えっ、今なにしたの!?」


 と混乱する麗奈。秀一が答えた。


「弦葉、落ち着け。あれが杖光寺の『瞬間眼(シアンアイ)』。隙を見つけたら皆狙いたくなるもの。この眼は、その瞬間を誰よりも早く見つけることができる。ただし、相手がわざと隙を作っていても反応してしまう。仕組みがバレたら終わりってことだな」


「健心。お前も早く発動させてみろよ。皆待ってんだし」


 とせかす綾乃。健心は何も言わない。


――今はその時じゃない。もう少し待つんだ。


 大きな動きがないまま時間が過ぎていった。残り3分。健心が再びハンマーを構え、防御態勢をとった。


――ほう、そう来たか。んじゃ、あたしはこういくぜ!


 この行動に対して、綾乃は再び連続攻撃を行おうとした。

 その第一撃。健心はそれに合わせ、ハンマーを強く押し出した。綾乃は仰け反った。

 その後素早く背後へ回り込み、ステージの西側へ綾乃を吹っ飛ばした。

 綾乃の動きが止まったのを確認し、地面を思いっきり叩く。

 その瞬間、綾乃の足元からマグマ柱が吹き出してきた。上へ跳ばされる。


「う、上手い! あやのんが吹き飛ばされた場所にマグマ柱を上げるなんて!」


 今度は鈴菜が驚嘆する。


――あやのん……?


 鈴菜以外の4人が少し引いている。秀一がゴホン、と咳払いをした後、解説した。


「あれが大地眼(オレンジアイ)だ。地表の状態を見るだけで、マグマなどの位置を特定できる。自然を利用した眼だな」


「欠点はあるのか?」


 と聞く大輔。


「これはそもそも対人用ではない。相手と戦う時にはあまり役に立たないんだ」


 と秀一は答えた。





 試合は12対0で健心が勝利した。


「どう? 僕達の眼は?」


 と自慢げになる健心。だが翔陽は、


「それいつ習得したんだ?」


 と聞いてきた。上手く答えられない健心と綾乃。そこを秀一がフォローした。


「俺が話そう。あれは金曜日の夜のことだ」

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