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平成の騎士団  作者: 青原 樹
第1章〜7人の隠された力〜
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第11話 死角無き眼

 大輔が頬を叩いてから、彼は迷いのない、透き通った目を向けるようになった。お互いに出方を伺う。

 残り3分。大輔の残り体力48、健心の残り体力52。

 現段階では健心が優勢だ。それでも健心は、迷いのなくなった大輔を警戒していた。


――この紫の眼はどんな能力を持っているんだ……ん? 大輔が(しき)りに目を動かしているのがすごく気になる。辺りを見回しているのか? 確かめてみよっと。


 健心は巨大ハンマーを持ち直した。片面は平面、もう片面は鋭く尖っている。学校にあるハンマーにはなかった形だ。


「来いよ。来ないなら、僕からいくぞ!」


 尖った面を向けて、ハンマーを横に振った。大輔はそれを掴み、地面に突き刺した。


「地面に突き刺さるのは嫌だっと!」


 「だ」のタイミングで、突き刺さったハンマーを抜いた。その後大きく下がり、高くジャンプした。地面には白の魔法陣が。大輔は身構えた。


「いくぞ! ハンマー使いのレベル2の魔法、『マグマスプラッシュ』!!」


 ハンマーの平面で魔法陣の中心を叩きつけた。内側から噴水のようにマグマ柱が吹き出してくる。大輔は少しずつ後ろへ下がっていく。


――後ろからマグマが来るのはさすがに分からないだろう。あの眼がどんな能力か知りたかったけど、勝ちに行かせてもらうよ!


 翔陽たちはどんな結果になるのか固唾を飲んで見守る。健心は勝利を確信した。

 ところが、ここで紫の眼がその効果を発揮した。

 突然、大輔がバック宙をした。元いた所からは、マグマ柱が噴き出した。


――先読みしたのか!? いや、大輔は初見のはず……。


 驚く健心。それは見ていた5人も同じだった。翔陽が確信のこもった言葉を発する。


「間違いない。あれは視界眼(パープルアイ)!」


視界眼(パープルアイ)?」


 秀一以外の三人が尋ねる。


「そう。その名の通り、視野を広げられる眼だ」


「でもそれって私の領域眼(グリーンアイ)と同じってことよね。あまり意味がないんじゃ……」


「それだけだとな。でも唯一の違いは……」


 翔陽はそう言った後、戦っている二人を見た。健心が『マグマスプラッシュ』を再び放っているところだ。一方大輔は、まるで出現する位置が分かっているかのように、ひらりひらりとかわしている。


「ああいうように、自身の背後も見ることができる」


「なるほどね。んで、あるんだろ? 弱点」


 綾乃が、まるで分かっていたかのように聞く。


「もちろん。それは……」


「それは『体力消費が激しいこと』だ。眼は本来神が持つべきものだからな。俺達みたいに選ばれた人間が使っても体に大きな負担が生じる。特にこの視界眼(パープルアイ)はその負担が最も大きいんだ」


 秀一が上手く被せてきた。翔陽は少し悔しそうにこう思った。


――コイツ、俺がしゃべろうとしたのに……。


 残り1分。お互いに残り体力12。


「そろそろ終わらせないとな。喰らえ!」


 健心はそう言うと、ハンマーを回し、投げ飛ばした。

 それを避ける大輔。

 ハンマーは後ろの滑り台に当たる。


――さぁ、終わりだ!


 当たった場所からはホーミング弾が発生。大輔に向かって飛んできた。

 大輔は気づいていない。


「なッ、アイツいつの間に! どうなるんだ!?」


 綾乃が興奮したような状態で尋ねる。


「これは多分……ホーミングを上手く利用してくるな」


 翔陽は未来眼(ブルーアイ)を発動させながら答えた。

 翔陽の言った通りだった。大輔は健心に勢いよく近づき、腹を殴って怯ませ、頃合いを見計らい、ホーミング弾が背中に当たる寸前で左に避けた。

 ホーミング弾は健心に命中。防具が黒色に変色。視界眼(パープルアイ)を発動させた大輔の勝利だ。

 結果は10対0。接戦と言ってもいいほど緊迫した戦いになった。一対一の試合でこれ以上激しいものは、今後存在することはないだろうと、翔陽は思った。そして、


「お疲れ。今午後5時10分だから、そろそろ寮に戻るぞ」


 戦った二人に声をかけた。

 午後5時30分までに寮に入らないと校則違反となり、成績に影響が出る。グラウンドから寮までは5分かかるため、丁度いい時間が5時10分なのだ。


「だってさ。僕達も行こう……って! 大丈夫か?!」


「健心、どうした?」


 綾乃がそう尋ねる。


「大輔がうつ伏せに倒れたまま動かないんだ!」


「死んでるんじゃね?」


「縁起でもないことを言うなよ綾乃。まだ息はあるから、担いでいく!」


 そういって健心は大輔を起こし、肩に担いでステージの消えたグラウンドを後にした。

 道中、大輔は目を覚ました。


「う、ううん……」


「お、気がついた。ふと見たらピクリとも動かないんだもん。心配したよ」


「悪い。何かどっと力が抜けた感じがして。んで、俺凄いもの見たんだ」


「あぁ、視界眼(パープルアイ)だな。どんな感じだった?」


「戦っている最中に、皆が見えたんだ。くっきりとな」


「すげぇ。また翔陽たちに聞かせてやれよ」


 そう喋りながら寮に向かった。

 既に午後5時30分を越えていたが、翔陽が事務所に事情を説明してくれたおかげで、怒られることなく入ることができた。

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