表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平成の騎士団  作者: 青原 樹
第1章〜7人の隠された力〜
16/146

第10話 異変と克服

「いくぞ。試合開始」


 翔陽の合図で、試合が始まった。

 直後、大輔は火炎弾を放った。健心は巨大ハンマーを横に振り、火炎弾を打ち返した。


「先手必勝。大輔の好きな四字熟語であり、流儀だそうだ。どう攻めるか楽しみだ」


 翔陽が解説する。


「ねぇ。火炎弾って誰でも撃てるものなの? あの鮫島ってヤツも使ってたけど」


 鈴菜の質問に、秀一がこう返した。


「あれはグローブ使いが最初に覚える魔法。魔法陣無しですぐに撃てるから、この学校では必須だそうだ」


「ふーん」


 残り6分。お互い一歩も譲らず、健心残り58、大輔残り64。

 大輔は、滑り台の陰に隠れている。


――健心の野郎、いつの間に上達しやがったんだ。とにかく、深呼吸してと。さ、そろそろ決着を着けないと……ってあれ? おい、何でだよ!?


「ねぇ、映像をずっと見てたんだけど、拳藤君の様子がおかしいよ!」


 試合開始からずっと映像を見ていた麗奈が、突然叫んだ。


 五人がカメラの映像を見ると、大輔がその場から動けなくなっていた。よく見ると、足が細かく震えている。


「ホントだ、何やってんのよあいつ」


 鈴菜がこう呟く。


「拳藤の近くへ行ってみる。俺なら何か分かるかもしれない」


 秀一は走り出した。と同時に、こんなことを考えていた。


――とはいったものの、心眼(レッドアイ)じゃ原因を解明できないのは明らかだ。


 後ろを振り返り、


――誰も来てないな。やるか。


 と決断した。

 秀一は立ち止まり、目を閉じてこう言った。


「クロウ、いくぞ」


『目的は?』


 途端に、ドスの利いた太い声が聞こえてきた。しかしその声は、秀一以外誰も聞いていない。秀一はその声に続けて、


「拳藤大輔が硬直した原因の、解明!!」


 秀一は目をカッと見開いた。この瞬間、それまで赤く輝いていた秀一の目は、一瞬にして元の目の色と同じ、青紫に輝き始めた。大輔に関する、ありとあらゆる情報が秀一の眼に飛び込んでくる。

 数十秒後、翔陽たちのもとへ走っていった。


「あ、帰ってきた。秀一。どうだった?」


 自分達のもとへ走る秀一に、いち早く気づいた翔陽。早速尋ねる。


「お前ら、よく聞いてくれ。拳藤は過去にとんでもないことをしていた。それは……人を殺めたことだ」


「えっ!?」


 驚きを隠せない四人。


「そう。それもちょっとしたことで、だ。そのトラウマをここでも引きずっている」


「いやいやいや、訳わかんねぇよ」


「そうよ。もっと詳しく聞かせなさいよ」


 綾乃と鈴菜が問い詰めるも、秀一は、


「そんなことを話している時間はない。今は何とかして、そのトラウマを克服させなければならない」


 と返した。


「そして、克服するきっかけを作ることができるのは、剣崎。小学校が同じだったお前だけだ」


「俺!? んなこと言われても、小6のときに大輔の出身地の仙台へ転校しただけだから……」


 翔陽はしばらく考えた。


――彼にこの事を気づかせないようにするには、どんな声をかければ良いだろうか。そしてそこから導き出せる答えは……。

「……分かった。やってみるよ」


 翔陽は決断した。

 大輔の様子を伺う。まだ震えているようだ。


「大輔! どうした!」


 大輔はこの声に気づき、こう返した。


「足が動かねぇんだ! 自分でも原因がわかんねぇよ!」


「それなら頬を思いっきり叩け!」


 大輔は言われた通りに頬を叩いた。

 辺りに響き渡る音。様子見をしていた健心も、これに気づいた。


「翔陽! すげぇよ、足が軽くなったよ!」


「だろ! 迷ったり怖くなったときはそうやって自分に喝を入れるんだ! いつでも明るいお前でいられるようにな!」


 大輔は立ち上がった。何を思っているのか、翔陽には分からなかった。ただ言えるのは、大輔から恐怖心が無くなっていることだ。

 やがて、健心の前に姿を現した。大輔の目は紫色に輝いていた。

 これを見た翔陽。大輔をさらに勇気づけるように、こう声をかけた。


「さぁ、君の全力を見せてくれ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ