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平成の騎士団  作者: 青原 樹
第1章〜7人の隠された力〜
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第9話 近接戦の挑戦者

 三時限目、数学。以前行われた小テストが返ってきた。

 担当は三年前からこの学校にいる、大山(おおやま寿彦かずひこ)先生。とにかく背が高い。そして学校一の力持ちである。


「テストを返す。今回も赤点は無しや!」


 全員が拍手と歓声を上げた。


「ほな配ってくで」


 このように関西弁で話す。奈良県出身だそうだ。


「剣崎と拳藤はまた満点やな。しかも剣崎はここまでノーミスやないか。すごいな」


「そうですか? 習ったところをフル活用してるだけですけど」


「またこいつは。ホンマ腹立つなぁ。まぁいいや。拳藤もこれで六回目やな。追い付けるよう頑張れよ」


「いやさすがに彼には叶いませんよ。だってコイツ、入試満点ですもん」


 この言葉に驚愕するクラス一同。寿彦は頷きながら、


「そーなんや。オラが(つく)た超難問も模範解答通りに解きやがったんやで。これ見たときはみんなで驚いたわ。まぁオラの経験上、こういうヤツは後々失敗するからみんなにも十分チャンスはあるで。頑張ってくれや。ほな授業行くで」





 昼休み。珍しいことに、翔陽は全員を集めた。


「点は取れるし運動神経良いし。他に弱点が見当たらないよ」


 能力の凄さを誉める健心。しかし秀一は、


「でもあるのに変わりはない。それを探すのが俺達だろ」


 と冷めた調子で話す。


「試合していれば分かるんじゃないか? ほら、始まるとキレのある動きが出来なかったりとか」


 綾乃が提案する。大輔は、


「試合中……か……」


 と考え始めた。翔陽がこれについてまとめた。


「よし、じゃまた放課後グラウンドで。いいかな?」


 全員一致で決定。そのまま解散した。

 翔陽は外へと向かおうとしたが、秀一に止められた。そして、こんなことを尋ねられた。


「ところで剣崎。何故全員を集めた? 今までみたいに、俺達だけで良かっただろ」


 秀一の質問は、いつも的確だ。翔陽は少し考え、こう答えた。


「ほら、今回の場合、克服すべき点が何か分からないじゃないか。俺達にも、大輔にも。だから人数を多くして、すぐに見つけられるようにしたいなって」


 苦し紛れの発言だった。しかし秀一は、


「そうか」


 とだけ言い、去って行った。


「拳藤! ちょっといいか?」


 一方こちらは、健心が大輔を呼び止めたところだ。


「放課後の試合なんだけど……」


 耳元で何かを話した。


「分かった。じゃあな」


 話が終わると、大輔はすぐに走っていった。





午後4時半。運動場に向かう七人。健心が唐突に喋りだした。


「いやー、まさか3日連続で使っているとはね。つか鎌野、お前毎日キューブ借りに行ってるらしいけど、今日何か言われなかった?」


「言われた。『毎日借りているが何してるんだ』ってな。まぁ『自主練習している』、とだけ言っておいて、本当のことは言わなかったけどな」


「おっと、嘘はついちゃいけないんじゃない?」


「鎚本、よく聞け。世の中にはつかなきゃいけない嘘もあるんだ」


「なんじゃそりゃ」


 皆で笑い合う内に運動場に着いた。ちょうど前の使用者が使い終わったところだ。


「あれっ、あいつって……」


「ほんとだ、鮫島君だ」


 鮫島弘輝。以前麗奈と対戦した人物だ。向こうも剣崎たちに気づいたようだ。


「やぁ、皆さん。ちょうどよかった。伝えておかなきゃいけないことがありまして」


「今度はなんだ?」


 翔陽が問う。しかし弘輝は、謙虚な姿勢でこう言った。


「いや今まで僕らこうして集団作っているわけですけども、団結力が無かったものでして」


――以前と口調変わってない?


 このとき全員がそう思った。弘輝はそのまま続ける。


「んで、団結力を高めるためには目標が必要なので、団体名決めました。お前らいくぞっ!せーの!」


「『七神ガーディアンズ』!!」


 と大きな旗を掲げて叫んだ。旗にはNGGと書かれてある。


「言わば、七神親衛隊ですよ!」


――直訳しただけじゃねぇか!


 と突っ込む翔陽と大輔。


「意味としては、『素晴らしい生徒を送り出したこの中学校を悪いやつから守ろう』ってことです!」


――しかも正義の味方ぶってる!


 今度は女子三人だ。


「ほぉ。面白そうじゃねぇか。部外者が入ってこないよう、頑張れよ」


――鎌野に至っては激励してるし!!


 健心は、秀一に対して突っ込んだ。


「それでは僕らはこれで。行くぞ!」


「押忍!」


そのまま寮へ向かって走っていった。


「……何だったんだ?」


 しばらく静寂が続いた。翔陽は話を元に戻した。


「よし。誰も使わなくなったし、やるか!」


「あ、あのさ……。お願いがあるんだけど」


 この発言に、全員が健心を見た。


「大輔と戦闘していいかな? いや、大輔とやらせてほしいんだ」


 健心の突然の発言に、大輔以外の五人は驚きと困惑で固まってしまった。健心は続けた。


「実は皆が解散したあと、大輔と話をしたんだ」





「拳藤、ちょっといいかな? 放課後の試合なんだけど……僕と戦ってくれないかな? 君のことは翔陽よりもよく知っているから、何か分かるかもしれない」


「分かった。じゃあな」





「なるほど。剣崎、お前あまり信頼されてないようだな」


 とからかう秀一。


「今の発言はそういうことじゃないだろ!? まぁとにかく、その条件は飲もう。頼むぞ健心」


「おう! んじゃ行くか」


 ステージは公園。滑り台・ブランコ等、遊具が備え付けられている。隠れる場所が少ないのが特徴だ。


「いくぞ。試合開始」

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