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平成の騎士団  作者: 青原 樹
第10章〜頂点を求めし者達〜
141/146

第135話 第二試合~楓城vs佐納~③

ここまでの戦局


00:10……楓城学園、山階紗玖良が巨大火炎弾を発動。

ステージの廊下を全壊させた。

01:04……佐納学園、全員が合流。

01:17……楓城学園、反撃を警戒しつつ、全員が合流。

03:41……両チームが合間見え、総攻撃を開始。

04:13……佐納学園、廉谷朱莉が機転を利かし、

『デトネーション』を付与した狙撃銃を発射。


以降、両者表立った動きはなし。


残り体力

楓城学園   826

佐納高等学校 962

 残り時間5分。両チームが練りに練った作戦を開始する。

 会議室からささっと出た楓城学園。相手が校舎二階、もしくは三階に潜んでいるとみて、慎重に動く。

 現在の合計体力のまま試合が終了すれば、楓城学園が勝つことはない。どうしても探し出して一人でも多く倒す必要があるのだ。

 一方佐納高校は三階の教室にとどまることを選択。全員が白魔法『ディフェンスライズ』を付与する。

 楓城学園の動きは大方予想がついていた。そのため、部屋にとどまり、迎え撃つことが最善と判断したのだ。


「『ディフェンスライズ』と『パワーライズ』を同時にかけておきましょう。ここからは短期決着を目指します」


「OK。まずは二階からね」


 そう言うと葵陽は、白魔法の準備をする。紗玖良も同様に魔法陣を描いた。

 響妃と麗奈が矢をつがえた。めいっぱい引かれた弓は、今にもはち切れそうなほどだ。

 そして、彼女らの手から放たれる。直後、


「「『リフレクター』!!」」


 魔法陣から複数の板が飛び出した。それらは矢より早く、そして一直線に飛んだのち空中で静止する。

 そこに、矢が当たる。

 その矢は崩れることなく、方向を変えて飛んでいった。 


 白魔法『リフレクター』。透明な板を出現させ、物体を任意の方向に跳ね返すことができる。


 二人は矢を次々に放つ。その度に反射し、教室内に吸い込まれていく。

 ついには二階すべての部屋に到達した。


「『シールド』で防がれたようすがない。つまり二階にはいない、ということですね」


「じゃあ次は三階ね。もう一度!」


 麗奈が矢をつがえる。それも三本も。


「伏宮さん、それは……」


「うまく行くかわかんないけど」


 彼女の見据える先は、三階の廊下があったところに浮かぶ、『リフレクター』の板。

 彼女の緋色の瞳は、いつのまにか別の色に輝いていた。


「伏宮さん、それ、領域眼(グリーンアイ)なのですか……?」


「で、でも、緑じゃなくて、金色っぽいですわ……!」


 武瑠達がその様子に目を奪われていた。


「……行くよ!」


 放たれた三本の矢は、狂うことなくまっすぐ飛んでいく。

 そして、反射板に到達すると同時に各部屋へ向かっていく。





 一部屋だけ、矢が跳ね返ってきた。


「あそこだ!!」


 武瑠が先陣を切って突っ込んでいく。


「私も行く! 反撃させないでよ!」


「わかってますわ!」


 残った三人が、その部屋に向かって攻撃を仕掛ける。





「もう見つかった、意外に早いよ!!」


「シールド張ってて助かったぁ。さあ来る」


 直後壁が爆発。明らかに攻撃されているとすぐに気づいた。

 武器を構え、反撃しようとするが、黒煙が邪魔をして狙うことができない。

 その黒煙から誰かが飛び込んできた。


「はああああぁぁっ!!」


 片手剣を武器に持つ楓城のリーダー、松方(まつかた)武瑠(たける)だった。

 真由の張ったシールドを突き破り、彼女の体に大きく傷をつける。


「っく!!」


「真由先輩!」


 柚子が拳銃(ハンドガン)を撃つ。

 それを盾で防ぐ武瑠。

 その隙を見逃さず、柚子の反対側から射撃を開始する晴菜。

 すかさずシールドを張るが、いくらかダメージを受けた。


「よし囲んだ!! 袋叩きだよ!」


「リーダーをおとせば一気に有利、ここでき」


「うおぉぉりゃあああ!!」


 黒煙からもう一人。梨本(なしもと)葵陽(あおい)だ。

 彼女の狙いは一人だけ離れた、鋤納晴菜。

 ハンマーを薙ぎ払い、晴菜を部屋の外に突き飛ばす。


――マズイ、分断された!!


 宙を舞う晴菜。

 葵陽が追い打ちをかけに来る。平らな面の反対側、鋭利な面を向けて。


――ヤバッ!


 散弾銃(ショットガン)を乱射する晴菜。しかし、その大きなハンマーは、葵陽の体を守るには十分すぎた。

 そのまま接近、同時にハンマーを振り下ろす。


 そのハンマーは晴菜の身体を貫いた。


 体力は底をつき、四方をキューブに囲まれたまま上空へと上がっていく。


「やっと一人、急いでもどらな」


 瞬間、頭に痛みが襲う。


――え。


 気づいた時にはキューブの中。地面から離されていく。

 そして、葵陽はすべてを理解した。


――嘘、撃たれたの?


 校舎屋上。いつの間にか、佐納の狙撃手(スナイパー)廉谷(かどや)朱莉(あかり)がそこにいた。





――梨本さんがやられた! マズイ、もし倒したのが彼女なら、次の狙いは……!


 拳銃(ハンドガン)を防ぎつつ、真由を追い詰めていく武瑠。


――さっきより激しい! よけたり防いだりで精一杯だよ!



 真由も負けじと『シールド』を多用し、距離を取ろうとする。

 しかし、教室内はそこまで広くなく、なかなか弓矢の射程可能範囲にまで広がらない。

 なにより柚子や千里との連携を崩すわけにもいかなかった。

 一対三。人数では有利なはずなのに、地形によってそれが逆転してしまっているのだ。


 残り一分を切った。千里から矢が放たれた。

 間一髪回避する武瑠。それが距離を取られる要因になった。


――ここしか、ない!!


 矢筒から一本、弓に装填。

 武瑠に狙いを定める。

 武瑠は体勢を崩している。盾を構える余裕はない。





 その矢が放たれることはなかった。

 左手に衝撃が走る。何かに撃たれたかのような痛みだ。

 思わず手を放してしまう真由。


――……ここだ!!


 ほぼ反射だった。

 力強く踏み込み、真由の身体を大きく切りつけた。

 真由の体力が見る見るうちに減っていく。


「しまった。朱莉先輩!!」


 後輩の叫び声。それは四階を挟んだ屋上にいる彼女の耳によく届いた。

 矢の射出された場所を特定し、引き金を引く。

 弾丸は空間を切り裂きながら、一直線にその場所、麗奈のもとへと向かっていく。





 ブザーが鳴り響く。

 その後何かがはじけるような音が聞こえた。


「……ごめんね。私もあなたの居場所を、とっくに見つけているの」


 麗奈の目もとには、一枚の、分厚い『シールド』。

 そして、彼女の足元には、先端がつぶれた弾丸が転がり落ちていた。

最終スコア

楓城 生存者:4人 体力総計:641

佐納 生存者:3人 体力総計:591


楓城学園高等学校の勝利

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