第135話 第二試合~楓城vs佐納~③
ここまでの戦局
00:10……楓城学園、山階紗玖良が巨大火炎弾を発動。
ステージの廊下を全壊させた。
01:04……佐納学園、全員が合流。
01:17……楓城学園、反撃を警戒しつつ、全員が合流。
03:41……両チームが合間見え、総攻撃を開始。
04:13……佐納学園、廉谷朱莉が機転を利かし、
『デトネーション』を付与した狙撃銃を発射。
以降、両者表立った動きはなし。
残り体力
楓城学園 826
佐納高等学校 962
残り時間5分。両チームが練りに練った作戦を開始する。
会議室からささっと出た楓城学園。相手が校舎二階、もしくは三階に潜んでいるとみて、慎重に動く。
現在の合計体力のまま試合が終了すれば、楓城学園が勝つことはない。どうしても探し出して一人でも多く倒す必要があるのだ。
一方佐納高校は三階の教室にとどまることを選択。全員が白魔法『ディフェンスライズ』を付与する。
楓城学園の動きは大方予想がついていた。そのため、部屋にとどまり、迎え撃つことが最善と判断したのだ。
「『ディフェンスライズ』と『パワーライズ』を同時にかけておきましょう。ここからは短期決着を目指します」
「OK。まずは二階からね」
そう言うと葵陽は、白魔法の準備をする。紗玖良も同様に魔法陣を描いた。
響妃と麗奈が矢をつがえた。めいっぱい引かれた弓は、今にもはち切れそうなほどだ。
そして、彼女らの手から放たれる。直後、
「「『リフレクター』!!」」
魔法陣から複数の板が飛び出した。それらは矢より早く、そして一直線に飛んだのち空中で静止する。
そこに、矢が当たる。
その矢は崩れることなく、方向を変えて飛んでいった。
白魔法『リフレクター』。透明な板を出現させ、物体を任意の方向に跳ね返すことができる。
二人は矢を次々に放つ。その度に反射し、教室内に吸い込まれていく。
ついには二階すべての部屋に到達した。
「『シールド』で防がれたようすがない。つまり二階にはいない、ということですね」
「じゃあ次は三階ね。もう一度!」
麗奈が矢をつがえる。それも三本も。
「伏宮さん、それは……」
「うまく行くかわかんないけど」
彼女の見据える先は、三階の廊下があったところに浮かぶ、『リフレクター』の板。
彼女の緋色の瞳は、いつのまにか別の色に輝いていた。
「伏宮さん、それ、領域眼なのですか……?」
「で、でも、緑じゃなくて、金色っぽいですわ……!」
武瑠達がその様子に目を奪われていた。
「……行くよ!」
放たれた三本の矢は、狂うことなくまっすぐ飛んでいく。
そして、反射板に到達すると同時に各部屋へ向かっていく。
一部屋だけ、矢が跳ね返ってきた。
「あそこだ!!」
武瑠が先陣を切って突っ込んでいく。
「私も行く! 反撃させないでよ!」
「わかってますわ!」
残った三人が、その部屋に向かって攻撃を仕掛ける。
「もう見つかった、意外に早いよ!!」
「シールド張ってて助かったぁ。さあ来る」
直後壁が爆発。明らかに攻撃されているとすぐに気づいた。
武器を構え、反撃しようとするが、黒煙が邪魔をして狙うことができない。
その黒煙から誰かが飛び込んできた。
「はああああぁぁっ!!」
片手剣を武器に持つ楓城のリーダー、松方武瑠だった。
真由の張ったシールドを突き破り、彼女の体に大きく傷をつける。
「っく!!」
「真由先輩!」
柚子が拳銃を撃つ。
それを盾で防ぐ武瑠。
その隙を見逃さず、柚子の反対側から射撃を開始する晴菜。
すかさずシールドを張るが、いくらかダメージを受けた。
「よし囲んだ!! 袋叩きだよ!」
「リーダーをおとせば一気に有利、ここでき」
「うおぉぉりゃあああ!!」
黒煙からもう一人。梨本葵陽だ。
彼女の狙いは一人だけ離れた、鋤納晴菜。
ハンマーを薙ぎ払い、晴菜を部屋の外に突き飛ばす。
――マズイ、分断された!!
宙を舞う晴菜。
葵陽が追い打ちをかけに来る。平らな面の反対側、鋭利な面を向けて。
――ヤバッ!
散弾銃を乱射する晴菜。しかし、その大きなハンマーは、葵陽の体を守るには十分すぎた。
そのまま接近、同時にハンマーを振り下ろす。
そのハンマーは晴菜の身体を貫いた。
体力は底をつき、四方をキューブに囲まれたまま上空へと上がっていく。
「やっと一人、急いでもどらな」
瞬間、頭に痛みが襲う。
――え。
気づいた時にはキューブの中。地面から離されていく。
そして、葵陽はすべてを理解した。
――嘘、撃たれたの?
校舎屋上。いつの間にか、佐納の狙撃手廉谷朱莉がそこにいた。
――梨本さんがやられた! マズイ、もし倒したのが彼女なら、次の狙いは……!
拳銃を防ぎつつ、真由を追い詰めていく武瑠。
――さっきより激しい! よけたり防いだりで精一杯だよ!
真由も負けじと『シールド』を多用し、距離を取ろうとする。
しかし、教室内はそこまで広くなく、なかなか弓矢の射程可能範囲にまで広がらない。
なにより柚子や千里との連携を崩すわけにもいかなかった。
一対三。人数では有利なはずなのに、地形によってそれが逆転してしまっているのだ。
残り一分を切った。千里から矢が放たれた。
間一髪回避する武瑠。それが距離を取られる要因になった。
――ここしか、ない!!
矢筒から一本、弓に装填。
武瑠に狙いを定める。
武瑠は体勢を崩している。盾を構える余裕はない。
その矢が放たれることはなかった。
左手に衝撃が走る。何かに撃たれたかのような痛みだ。
思わず手を放してしまう真由。
――……ここだ!!
ほぼ反射だった。
力強く踏み込み、真由の身体を大きく切りつけた。
真由の体力が見る見るうちに減っていく。
「しまった。朱莉先輩!!」
後輩の叫び声。それは四階を挟んだ屋上にいる彼女の耳によく届いた。
矢の射出された場所を特定し、引き金を引く。
弾丸は空間を切り裂きながら、一直線にその場所、麗奈のもとへと向かっていく。
ブザーが鳴り響く。
その後何かがはじけるような音が聞こえた。
「……ごめんね。私もあなたの居場所を、とっくに見つけているの」
麗奈の目もとには、一枚の、分厚い『シールド』。
そして、彼女の足元には、先端がつぶれた弾丸が転がり落ちていた。
最終スコア
楓城 生存者:4人 体力総計:641
佐納 生存者:3人 体力総計:591
楓城学園高等学校の勝利