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平成の騎士団  作者: 青原 樹
第10章〜頂点を求めし者達〜
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第134話 第二試合〜楓城vs佐納〜②

ここまでの戦局

00:10……楓城学園、山階紗玖良が巨大火炎弾を発動。

ステージの廊下を全壊させた。

01:04……佐納学園、全員が合流。

01:17……楓城学園、反撃を警戒しつつ、全員が合流。

03:41……両チームが合間見え、総攻撃を開始。

04:13……佐納学園、廉谷朱莉が機転を利かし、

『デトネーション』を付与した狙撃銃を発射。


楓城 体力合計……976

佐納 体力合計……962

 5メートル以上の高さから放たれた弾丸。楓城チームのシールドに着弾と同時に爆発した。

 威力と爆風にシールドが耐えられるわけもなく、全員がステージの壁に身体を打った。


「ダメージは少ないけど、とりあえずひと安心ね」


「でも、しばらく撃てなさそうですよね、それ」


 柚子が恐る恐る、朱莉の狙撃銃(ライフル)を見る。

 最高火力のデトネーションを付与したことで、普段より早く銃口が熱くなっていた。こうなると冷やす時間が必要になり、再度撃つことが出来ない。

 こうなることは朱莉も承知の上だった。


「ええ。もう一度立て直します。ここからは持久戦です!」





「痛ったぁ。みんな、大丈夫か?」


 いち早く立ち上がったのは葵陽だ。ハンマーを支えによろよろと立ち上がる。


「な、何とか……ね」


「追い討ちがなかったことが不幸中の幸い……でしょうか」


 他のメンバーも続けて立ちあがり、武器を構え直す。


「……近いね、壁」


「ええ、ステージ名が『施設①』ですからね。そこまでステージの範囲は広くないんですよ」


 『施設①』。四階建ての校舎を舞台としたステージである。建物のみを再現しているため、校舎に付随するグラウンドや体育館などはない。結果ステージの壁も狭くなるのである。


「ウチ、ちょっと行ってこようかと思う。相手の隙を見つけたいから」


「紗玖良、本気? 私、あんまり意味ないと思うんだけど。ホラ見て」


 葵陽が指差す方向は、先程まで相手校がいた教室。今その部屋にはひと一人として姿がない。


「あそこにいるって根拠、ある? キゼツしてる間に移動したのかも知れないのに」


「んー、そうだけどぉ……」


「私も、梨本さんと同じ意見。気絶した時間はおそらく一分。それぐらいだったら移動することも可能なんじゃないかな」


 麗奈もそう言うために、紗玖良はさらに悩みだす。


「そうなると、また作戦を練り直す必要がありますね……」


 武瑠が時間を確認する。残り時間14分20秒。

 まだ時間はたくさんある。


――しかし、一部屋一部屋しらみ潰しに探していくのは非効率的。ここは……。

「もう一度戻りましょう、会議室に。佐納がいる可能性もあるので、警戒は怠らないように」




「部屋にも、道中にもいなかったね」


「ええ。少なくとも二階以上にいることは確かなようですね」


 校舎一階西端にある会議室。楓城は再びここに戻ってきたのである。


「ゴメンね、ウチの策が、裏目に出ちゃったみたいで」


「そ、そんなことは!」


「ううん、そうだよ。出なきゃあんなことにはならなかったんだし」


 紗玖良は数分前の総力戦、ひいてはその原因となる巨大火炎弾のことを言っている。

 それは他の四人もすぐにわかった。


「山階さん、自分を責めるのはやめた方がいい」


「でも、今思い返せばもっとよいさ」


「山階さん!!」


 肩を掴みその名を呼ぶ武瑠の声に、紗玖良はハッとした。


「今は自分を責める時じゃない。そうでしょう?」


 真っ直ぐに見つめる目に、紗玖良はコクりと頷くしかなかった。


「よし、じゃあ作戦を伝えます!」


「え、もう考えてあるのですか?」


 響妃が目をぱちくりさせて武瑠を見る。


「ええ、ここに来るまでに少し」


 そう言うと、壁のホワイトボードに簡単な図を書き込む。

 近くに転がっていた磁石を一つずつ置いていく。人物に見立てるつもりだ。


「結論から言うと、相手チームは一階には来ることはない。つまり、「二階以上のどこかに立て籠っている」。ですのでそこを突きます」


「言ってることは納得いくね。現に私はそう見たんだし。けど、どうやって?」


「それをこれから説明します」





「なかなか来ないねー、相手」


 折笠真由の一言から、その会話は始まった。

 狙撃銃(ライフル)のクールダウンを待つ佐納高校。


「そうね。校舎内に入っていく様子は見えたんだけど、それにしても攻めてこなさすぎ、というか」


「相手も慎重なのでしょう。朱莉先輩、銃の様子はどうですか?」


「もう少しってところ。その間に最終確認するよ」


 朱莉が全体マップを開く。

 通信機に内蔵される電子マップは、建物の構造や天候状況などを逐一アップデートするという優れもの。今回の場合、廊下が消し飛んだ校舎が映し出されている。


「相手チームはおそらく一階のどこか。そこからこっちに向かってやってくる可能性が極めて高い」


「そーだね。こっちが移動していると考えられてたら、話は別だけど」


「それもありますが、今回は捜索するという線で進めます。すると、ここにたどり着くまでにはいくつかのステップを踏まなければいけない」


「いくつかの、ステップ?」


「そう。階段でここに昇ってくるのが一つ。もう一つは、ここまでに飛び移りながら移動しなければならないこと」


「……あ、そっか。廊下がなくなってるから、一度教室の外に出て、隣の教室に移る必要がある。そう言うことですね?」


「そ。教室同士の間隔は割りと広いから、壁づたいに来ることはない。てなると、『バウンド』を使ってやってくることになるわけで……」





 双方の作戦会議は続く。

 残り時間をたくさん使って、今できる最善手を見いだす。

 気づけば残り時間は、五分を切ろうとしていた。

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