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平成の騎士団  作者: 青原 樹
第10章〜頂点を求めし者達〜
137/146

第131話 第一試合~七神vs久次来~④

ここまでの戦局

10:21 千亜希が魁斗を発見、奇襲。一対一の戦いが始まる。

11:56 『デトネーション』をまとった将希の一撃により、原石涼馬、脱落。

12:30。桃花からのアシストを受け、魁斗が魔法を発動。



七神  合計体力……601

久次来 合計体力……563

「グゥゥゥアアア!!」


 咆哮がこだまする。千亜希には何が何だかわからないでいた。

 猛獣と化した少年が、襲い掛かる。

 右からのストレート。防御する間もなくくらう千亜希。

 そこからは一方的だった。

 右、左、右と打ちのめされ、止んだかと思って反撃しようとすれば胸ぐらをつかまれる。

 背中を打ち付けられ、馬乗りでまた殴られる。

 一瞬だけ見えた魁斗の顔。目は極限まで開き、口角はひきつるほど上がっていた。

 獣の声は笑っているようにも聞こえ、人間の範疇を明らかに逸脱していた。

 それが千亜希の戦意を喪失させた。それは諦めではない、恐怖によるものである。

 そして、至近距離からの魔法陣。千亜希の身体が熱波を感じた。


――これが、七神……。


 無抵抗のまま、最大威力、レベル3の『火炎弾』を受け、千亜希は脱落(リタイア)。キューブに包まれ、空へと舞う。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」


 再び雄叫び。囲った壁を破壊して次の標的へと駆けていく。





 残り時間、4分50秒。東側の攻防は、涼馬の脱落(リタイア)により、形勢が傾いた。

 瓦礫から飛び出した大輔を迎え撃つ美姫。

 刃を避け、次の手をうかがう。

 ここで情報が飛び込んできた。一度舞香の下へ引き下がる大輔。


『千亜希がやられた……! もう少しだったのに!』


『先輩、リーダーがもう少しで合流できるそうです』


『OK。もうちょい頑張るか!』


 通信機で互いに連絡を取り合う久次来高校。二人落とされているために劣勢だった。しかし相手の体力も残りわずか。リーダーの翔陽を残り半分にまで追い込んだ。彼らもまた諦めきれないでいたのだ。

 美姫がこちらに向かってくる。疲れたのか、前半ほどの素早さはなくなっていた。


「大ちゃんはまだ、本気じゃないっぽい、から! 今、やる!」


「それって俺、だいぶ、なめられて、ないか?!」


 だが疲れているのは大輔も同じだった。

 突き攻撃を回避し続けるも、明らかに動きが鈍くなっている。


――行かなきゃ!


 身を潜めていた舞香が飛び出し、美姫にむかって発砲。

 左腕に着弾、一瞬の怯みを誘った。


「うおぉぉぉりゃあぁぁ!」


 見逃さなかった大輔。左足で腹を蹴る。

 家一軒分ほど飛ばされた美姫。大ダメージを負ってしまった。

 カバーに入る翔陽。美姫に代わって攻撃を仕掛ける。

 将希もそれに乗じ、背後から攻撃を仕掛ける。

 幸いにも拳銃(ハンドガン)使いはこちらに気付いていない。

 将希は翔陽の機転に感謝し、精一杯力を込めた。





「今の今まで忘れてたぜ、かつてのお前からの贈り物をよ!!」


 明らかに死角からの攻撃。それを大輔は、いともたやすく回避した。

 突っ込んだ将希は反対側にいた翔陽と衝突。翔陽もバランスを崩し、屋根の上に倒れる。


「”それ”がくるか!」


 拳闘士の目は、紫に輝いていた。これが視界眼(パープルアイ)である。発動すれば草食動物のごとく広範囲の視野を持つことができる、不意打ち対策に特化したものだ。

 かつて翔陽の指導によって5人の少年少女に眼が発現し、『戦闘』訓練に役立ってきた。大輔もその一人。それが今、酷使すれば動けなくなるというリスクを軽減された状態にまで昇華されて、大輔の身に宿っているのだ。


――偽者の遺物がまだ残ってたのか……。


 一方将希はあらかじめ聞かされていたこともあって、その恐ろしさは理解しているつもりだった。

 だがいざ相対するとその気迫っぷりに冷静さを失いそうになる。


「あれをやるか、剣崎」


「……やるしかないな。」

『胡。こっちの援護を頼む。平野はしばらく好きにさせてやれ。……わかってる。いざとなったら、俺が止める』


 通信を切り、二人はすぐさま大輔にとびかかる。

 視界眼(パープルアイ)を発動された以上、大輔に不意打ちは通用しない。

 選択の範囲を狭められた翔陽は、とにかく考えるしかなかった。

 

「なにこれ、どういう状況?」


 久次来高校リーダーの紗耶香がようやく合流した。


「拳藤先輩が二人を相手にしているのですが……、何か様子がおかしくって」


 舞香が事細かく説明する。

 この間にも三人の戦いは続いている。挟み撃ちにしようにも簡単にあしらわれ、その一人が攻めに転じれば強固なシールドを張って身を守る。この繰り返しだ。


「そう。まあ彼のことだから大丈夫でしょう。手伝って」


 理解するや否や、(ロッド)を構え、白の魔法陣を展開する。

 舞香もそれにならい、拳銃(ハンドガン)を構える。


『このまま狙い撃ち、ですか?』


『ううん、もっと別のこと。一瞬だから注意して』




 直後、別の屋根から人影が飛び出してきた。

 言葉にならない声を上げている。


「ほーらきた。舞香!」


 飛び出した方向に銃口を向け、一発。

 すかさず白魔法『パワーライズ』を弾丸に付与。

 魔法陣をくぐり抜けた弾丸は速度を保ったまま人影に飛んでいく。

 次の動作に移りきったそれの頭を貫いた。

 声がふっとやむ。そして重力に無抵抗なまま落ちていった。


『『まず一人!』』


 すぐさま次の標的に向ける。

 直後舞香の身体が暖かくなった。『ディフェンスライズ』だ。


「気を付けてね。今はこれくらいしかできないけど」


「ありがとうございます!」


 大輔が今どういう状況かわからない今、下手に撃つことはできない。かといって撃たなければいずれやられてしまう。

 舞香は相手チームをよく狙い、撃つことにした。




 それが見事に噛み合っていた。

 正確に撃たれた弾丸は視界眼(パープルアイ)からもよく見えていた。

 着弾するであろうタイミングで相手に隙を作らせる。

 空振り、のけ反り、怯ませ……。じわじわとダメージを与えていく。

 残り体力わずか。限界が近づいてきた大輔は、止めをさそうとする。


 大輔の視界に、あるはずない光景が写りこむ。

 屋根に立っていたのは、美姫だった。


――おかしいっ! さっきので脱落(リタイア)したはず。まさか……!


 大輔は失念していた。彼女が魔術師だったことに。

 蹴りの際にわずかに残っていた炎を借り、さらに強大な炎を生成する美姫。


――これで、最後……!


 彼女の執念ともとれるその炎を、美姫は薙ぎ払うようにして発射した。

 扇状に放たれた風圧によって敵を彼女から遠ざけ、込められた熱でじわじわと体力を削っていく。


――奥義、なんちゃって……。


 満身創痍の美姫は、ここで力尽きた。





「これで終わりか」


「長かったなぁ」


 開始から二十分ちょうど。ブザーとともに試合は終わりを告げた。

 初戦から繰り広げられた激闘。今年の選手のレベルの高さを、世間に見せつけることになった

最終スコア

七神  生存者:4人 体力総計:397

久次来 生存者:3人 体力総計:343


七神高等学校の勝利

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