第130話 第一試合~七神vs久次来~③
ここまでの戦局
01:14……『火炎弾』発射。だが将希の『リフレクター』により跳ね返され、回避した大輔は右足にダメージを負う。
02:32……翔陽と将希、大輔の捜索を再開。とどめを刺しに向かう。
同時刻、大輔も危険を顧みず、東側、七神高校のスタート位置を目指す。
04:50……美姫と涼馬が対峙する様を大輔が発見。様子を見る。
05:07……美姫と涼馬、衝突。
居合切りを阻止した涼馬。
美姫の素早い身のこなしに防戦しながらも、確実にダメージを与えていく。
08:22……舞香が遅れて参戦。連携プレーで美姫を仕留めにかかる。
対する美姫。放たれた弾丸を斬るも付与された魔法に気付くことはなく、結果大きなダメージ
を負う。
09:01……潜んでいた大輔が翔陽と将希により発見。付近の壁に激突するほどの攻撃を受ける。
七神 体力合計……870
久次来 体力合計……840
「マジか剣崎、ここ乱戦みたいだぞ」
「花坂が防戦一方だ。援護しつつ戦う!」
三対三の大乱戦へと突入。試合開始から10分が経過しようとしたときである。
翔陽と将希が真っ先に美姫の前に立つ。
「すっごいね、私ビックリしちゃったよ」
「拳藤が油断してたおかげだ。でなきゃ俺達が反撃を食らってた」
「そういうこと!」
直後がれきの中からやってくる『火炎弾』。
いち早く気づき、回避する三人。
「まっくんと大ちゃん、それと拳銃使いの三人か。応援呼ぶ?」
「いや、二人には別の作戦をお願いしているから厳しい。俺達三人で倒す」
「そういこ……マジかよ」
三人の残り体力は全員半分を切っている。
対して大輔ら三人の残り体力は平均して4分の3。翔陽達が不利な状況である。
なおかつ、遠距離と近距離のバランスが悪い。このままでは敗北するのも時間の問題だが、
「いくぞ」
翔陽は一対一に分散して戦うことにした。
手始めに動いたのは涼馬。『火炎弾』を連続で放つ。
――牽制っ。七神の作戦を察知したってのか?
将希が『火炎弾』で迎え撃つ。撃たれた弾は衝突と同時にはじけて消えた。
生じた黒煙の中から飛び出す将希。涼馬に詰め寄る。
彼が近接攻撃をしないのを知っているからだ。
胸ぐらをつかもうと左手を伸ばす。
瞬間、将希の左手に穴が開いた。
「そう簡単にはいかせませんよ!」
拳銃の使い手、舞香だ。家一軒分離れたところから見事に撃ち抜いたのだ。
だが強引につかみかかる将希。その右手は燃え盛る炎を纏っていた。
――ヤバ。
振りかぶった右手が顔面にめり込む。さらには纏った炎、『デトネーション』が追い討ちをかける。
爆発に当てられた涼馬の体力はみるみる削られていき、
――またかチクショウ……。
残り時間8分56秒。ついに力尽きた。
倒れる身体を包むようにキューブが出現。そのまま上空へと上がっていく。
「よく行ったな、アイツ」
「ね。返り討ちにあってたかもしれないのに」
「拳銃が初心者なのは間違いないが、この三か月でよく鍛えられてる。見事な連携だったよ」
「いや、講評はあとにしようぜ……」
「すみません、何の役にもたてなくて」
『気にすんなっての、おかげでこっちは、もう準備万端だ』
不意打ちに使ったつもりの『火炎弾』は不発に終わったが、十分休むことが出来た。
『こっからだぜ、援護よろしく』
そういうと瓦礫の中から飛び出し突っ込んでいく。
西側でも戦闘は続いていた。
グローブ使いの魁斗と、ハンマー使いの三上千亜希。
西側、久次来高校のスタート位置を探索していた。そして千亜希を発見し奇襲。今に至るのである。
「なかなかしぶといなぁ、同じ一年とは思えないや」
「僕だって負ける気はないよ」
身の丈以上のハンマーを振り上げ、地面を鳴らす。
つんざくような音、揺れる大地。
一瞬怯んだ魁斗。それが後れを取ることになった。
近くまで詰め寄り、水平にふる千亜希。
腕で防ごうにも防ぎきれず、体力が削られていく。
魁斗は大振りの攻撃を身体全体でよけることにした。
――動きはシンプルだけど、疲れる気配がないな。体力どーなってんだよ、これじゃあ間に合いそうにないじゃん。
リーダーから課せられた魁斗への指令はただひとつ。残り8分までに誰か一人を発見し、ある場所にまで移動させること。当初、魁斗はその意図が理解できていなかった。成功するとはとても思えなかったからだ。
ハンマーを振り下ろす千亜希。
最中、隙を見つけた魁斗は背中を蹴とばす。
対応できなかった千亜希。魁斗のペースに飲み込まれる。
腕をつかまれたと思えば振り回され、追撃を受ける。
気づけば元居た位置から大きく離されてしまっていた。
――確か先輩が近くにいたはず。でもここまで届くかなぁ。
リーダーの紗耶香から魔法補助を受けようとさらに動く。
追跡する魁斗。さらに追い打ちをかけようとする。
これが決め手となった。
「じゃ、はじめるね~」
東側、ビルの屋上から放たれた矢。弧を描くように飛んでいく。
その矛先は、ステージを分断するように伸びる大通り。現在取っ組み合っている二人に狙いを定めていた。
そして着弾、同時に岩の壁がせりあがった。二人を囲み、外からの侵入を阻むかのように。
――ホントにうまくいったなぁ。剣崎先輩、何者なんだ?
魔法を込めた矢を正確に放つ桃花も確かにすごい。だが何より恐ろしいのは、これまでの行動がすべて今につながっているという先を見据えた作戦を、翔陽がたった一人で立てたことだ。
――でもこのチャンス、逃すわけにはいかない。
「グゥゥゥアアア!!」
そして少年は、自ら理性を捨てた。
あふれ出る力をその身にまとい、千亜希めがけてとびかかる。