第127話 公式戦開催
七神高等学校。東京都港区に位置する学校である。七神中学校とは所在地が同じで、中学からそのまま進学した生徒が全校生徒の半数を占める。
その七神中は、第一回『戦闘』で圧倒的な勝利を収めた学校として有名である。今でもその話はあちこちで上がっているが、当の本人達はその大会以降姿を見せていない。
午前8時。カバンを担いで登校する翔陽。
「みんな揃ってる……のか?」
「やっぱり起こしてくればよかったかなぁ」
校門にはすでにほとんどのチームメイトが集っていた。
中学からの戦友で刀を振るう花坂美姫、経験は浅いものの二年という短い期間で成長を遂げた泉将希、そして魔法が使える後輩、平野魁斗。
美姫が行ってくる、と言い残して寮に戻っていった。
「先輩、もう一人って誰なんすか? 今日までずっと練習に来ませんでしたけど」
「あ~、彼女はちょっとわけありでな」
「そうそう、初めて会ったときはぞっとしたもんさ。自己紹介を終えた途端俺に近づい」
「それってこんな感じかぁい?」
将希の背後から声が聞こえたかと思うと、背中に衝撃を受けた。将希が誰かに抱きつかれたのである。長い髪に大きな瞳、そして豊潤な身体つきの女子高生が、全身を密着させて離れない。
この様に魁斗は顔を赤くした。翔陽はまたか、とため息をつき、携帯電話を取り出す。
「そうそう、こんな感じ」
「つれないなぁ、将くんは。素直に受け取ることをそろそろ覚えた方がいいと思うんだけど」
「はいはい、わかったから離れてくれ」
その女子高生は不満げな顔をしながら離れる。
「彼女は胡桃花。同じ三年生で、弓矢を武器とするチームメイトだ」
「そんで……俺の彼女でもある」
「かか、彼女……?!」
「フフフ、よろしく~」
さらに顔を赤くした魁斗。身体も強張っているようだ。
「なんだ、もういたんだね」
翔陽から連絡を受けた美姫が戻ってきた。
「おはよ~花坂。今日くらいはさすがに早起きするよ? ウチだって楽しみなんだもん」
「これで全員だな。よし、行くか」
チーム剣崎は歩き出す。七神高校代表として、公式戦の舞台である
「バスくらい用意してくれてもいいのにね~」
「贅沢言うなよ。俺ら5人だけでバス出すとかどんなんだって話だ」
「まぁまぁ」
東京の国立競技場。4年に一度開かれるオリンピックのために改修工事を行ったことで、綺麗かつ便利になった競技場である。今年度の『戦闘』公式戦の舞台でもある。
「まさかまたここで戦うことになるとはな」
「そうだね。あの時は天使に邪魔されて中止になっちゃったけど」
「二人とも経験者だったね。ウチらは何にもわかんないや」
受付を済ませるためにホールに入ると、懐かしい顔ぶれがそろっていた。
中学時代の戦友、かつてともに高め合ったライバルなどなど。皆久しく会う友との再会を喜んでいたが、翔陽はその中に混ざろうとは思わなかった。
「挨拶はしなくていいの?」
それを気にかけた美姫に対して、一言。
「しない。今は」
「そっか。じゃお先にっ!」
美姫はそういうと、人ごみの中に紛れていった。
――そう、今はまだ良い。試合の中で語り合えれば、な。
午前9時。開会式の後抽選が始まった。この抽選により初戦の相手が決まる。
出場校は全部で八校、トーナメント方式を採用。もともと参加校が少ないこともあって小規模に見えるが、それでもマスコミが集うほどの人気ぶりである。
抽選が終わり、初戦の相手が表示された。翔陽達七神高校は第一試合、相手は仙台の私立久次来高校。
ちらと相手チームを見ると、誰かと目が合った。翔陽のよく知るメンバーだ。
――さっそくあたるとは、な。いい試合が期待できそうだ。
――翔陽、俺はこのチームでもっと強くなったぜ。ここで見せてやる、そして勝つ!!
試合開始は9時20分。その間両チームは作戦の確認を行うのであった。