第122話 進学校の戦士達
ここは県立東高校。神奈川県にある進学校である。生徒一人一人の学力は高く、各々が互いをライバルとして日々研鑽している。
『戦闘』の参加要請が届いた時、はじめは受け入れるつもりはなかった。だが近年の天使襲来による世論と、七神から数名が入学することを受け、「七神からの入学生を中心としたチームの1つのみ」という条件をつけて受け入れることにした。
「で、その中心となるのがあたしと……」
「同時期に入学したこのボク、か」
銃礎鈴菜と竜胆侑宇里。二人とも銃を手に相手を撃ち抜く選手で、七神出身の高校三年生である。
「ボクならまだいいのに、なんで銃礎がリーダーなのさ……てこれ二年もいい続けてるなぁ」
「う、うるさいわねっ!! これでもうまくまとめられてるから良いでしょ!?」
「でもそれ僕達周りのメンバーがサポートしてるからじゃないですか? 正直センパイが仕切るとこ想像できませんもん」
「あんたまで……!」
同じく七神中出身の花坂雄斗も一緒になってからかう。
散々な言われようの鈴菜だが、彼女の武器は狙撃銃である。銃の中で一番重く、そして操作性の複雑さにより扱いづらいこともあって他の銃より使用者が少ない代物を、彼女は容易に使いこなしている。
「あ、あの……そろそろ始めません? あんまり、長いこと話してると……先生に怒られますよ……?」
おずおずとした様子で発言するのは、北川桃子、高校二年生。常に両手を身体の前で重ねている彼女の武器は、杖。
「いつも通りでいいんじゃない? 僕からすれば見慣れた光景だし」
「そ、それならいいんです……ごめんなさい」
語尾がだんだん小さくなっていく。顔もほんのり赤くしていた。
「お疲れ様でーす! あれ、その様子だと全く進んでない系?」
「うるさいわよ巽。最初からチラチラ様子をうかがってたくせに」
「あちゃー、バレてましたか」
彼は巽陵悟。彼も高校二年生で、桃子とは真逆の性格である。
「いやー皆さん、久々の会合だってのに相変わらずでありがたかったっす!」
「そういう巽君も相変わらずで安心したよ。むしろボクたちはそれぐらいがいいのかもね」
「アハハッ! んで、今日は夏の『戦闘』の会議っすよね? まぁオレと花坂が前線でやり合うことは変わんないっすけど!」
「まぁそのつもりだけど……、以前あたしが出した課題、覚えてる?」
陵悟の動きが止まる。瞳だけが小刻みに動いていた。
「やっぱり。巽のことだから何もしてないと思ってたわ」
「だってぇ、オレの武器拡張性が無さすぎて、どう成長すりゃいいかわかんないっすもん」
「動き方とか変えるのはどう? 巽君撃ってからの対応が遅いとこあるしね」
「そ、それは……私も、そう思います……」
「桃子までぇ〜?」
膝から崩れ落ちる陵悟。周囲のメンバーはくすくすと笑っていた。
「一人ずつ聞いてきたいなぁ、まずは雄斗君から」
「はい、僕はちょっとした剣技を編み出したんです! せっかくなら、遠距離武器の人に相手してもらいたいです! てことで銃礎センパイ! 早速お願いします!」
「はっ、あたし!? 侑宇里じゃダメなの?!」
「ボクは遠距離というか中距離だし。やったじゃん鈴菜。第一号だよ」
「実験台第一号とか不名誉すぎじゃない!? まぁいいけど」
「よっしゃ! じゃ早くやりましょ! はぁー今から楽しみだなぁ」
ウキウキとした表情でグラウンドに向かう雄斗。四人はその後を追った。