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平成の騎士団  作者: 青原 樹
第9章〜日本の精鋭達〜
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第118話 学園の裏

 魔術師はあふれるほどの生命力をその身に宿し、またそれを感じ取ることができる。受け取り方は人それぞれだが、共通して魔法の色ごとに感じ方が変わるという特徴がある。


「このあたりなら大丈夫だろう」


 書類を提出した後足早に校舎裏に移動した三人。周囲には誰もおらず、緩やかな風が吹き込んでいるだけだ。


「じゃ話すぞ、この学校の正体と、三摩に何があったのかを」





 「悪魔だらけの高校」


 掲示板に書かれたこの記事。「友人が目の前で食われた」「周りのやつの頭がおかしい」という主旨のコメントが多く書かれている。

 一見誹謗中傷のように思えるコメントだが、どれもほぼ事実なのである。

 卒業後消息を絶った者たちは、いまだに姿を現さない。捜索が続いている者がいれば、捜査もむなしく時効により死亡となった者たちもいる。仮にコメントが事実なのだとしたら、行方不明者は全員悪魔に魂を奪われ、食われてしまったことになる。

 中学時代、秀一は七神高校に進学するつもりだったが、その書き込みを発見し、書かれたコメントから高校の名前を特定、調査のためにその高校への進学を決めた。

 入学式、校長先生の式辞を聞きながら、横にいる生徒をちらっと見た秀一は、その異質な雰囲気を感じ取った。禍々しさをまとった"それ"は並みの魔術師が浴びれば卒倒ものではあるが、秀一からすれば"それ"は身に覚えのあるものだった。

 そしてその渦の中に、生命力の反応が一切なかった生徒がいることに気付いた。これにより、彼はこの学校の生徒事情を把握、自らの行動指針を固めた。


――過半数が悪魔。さらには教師も。これでは「悪魔育成校」じゃないか。


 この学校の第一印象がそれだった。




 学校にも慣れてきた六月。視線がだいぶ集まっていることに気付いた。

 悪魔も広義における魔術師の一部で、同じように生命力を感知することができる。この時点で生命力の少ない一般人はすでに狙われていた。

 そして遂にちょっかいをかけ始めた。購買に買いに行かせるといったよくあるものから始まり、月を経るごとにエスカレートしていく。それはもはやいじめと変わらないものであった。秀一は心眼(レッドアイ)という、相手の心を読むことができる力があるため、次々と回避した。水をかけられることもあったが、それも読んで未然に防いだ。

 これらはすべて、他の一般人に危害を加えないための行動である。秀一自身を気にくわない存在とすることで、彼らの矛先を向け、安全を確保するのだ。


「よう。さすがにわかってるよな、今の状況」


 昼休み。いつのまにか数多くの男子が少年の周りを囲んでいた。少年は黙ったまま動かない。


「あんだけ歓迎してあげたのに、ことごとくかわしやがって。そんなに嫌か?」


「……」


「まただんまりか。せっかくの好意をよぉ。まあいいや。問答無用でやるだけだ。力こそすべての、俺たちなりの歓迎をよ!」


 その途端、男子達が一斉に飛びかかった。中には魔法陣を展開する者もいる。

 誰かが少年の肩を掴む。


「……『カサラ』」


 つかんだ瞬間周囲から突風が吹き込む。

 耐えきれず吹き飛ばされる男子達。

 展開していた魔法陣もその衝撃で消えた。


「どうなってる……なぜ闇魔法が使えるんだ!」


「お前達と同等、とだけいっておこう」


「そんなことあり得るか!!」


 再び飛びかかる。今度は隠し持ってたナイフでだ。

 少年は右、左、また右と、軽々と避け続ける。

 人間のことを学んだといえど、所詮は力が全ての悪魔。単純な攻撃しかできないでいた。

 隙だらけの男達に一発、また一発と殴っていく。みぞおちに一撃を見舞われた男はその場に倒れた。


「どうした、歓迎したかったのではないのか?」


 一対大勢。圧倒的不利な状況を、この少年は軽々と覆した。

 うつ伏せや仰向けのままピクリとも動かない生徒達。まるで屍のようだった。


「力こそ全てなら、俺は少なくともお前達よりは強いことになる。どうやら主従関係もそれで決まるらしいしな」


「く……人間に、負けるだなんて……」


「じゃあ一つ命令だ。これ以上魔術師でもない人に関わるな。搾取や恫喝も無しだ」


 男達は頷いたが、なんとも不服そうな顔をしている。その少年、秀一は教室へと戻っていった。先程の赤い眼とは違う青紫の瞳を、屍に似た生徒達に向けながら。

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