表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平成の騎士団  作者: 青原 樹
第9章〜日本の精鋭達〜
123/146

第117話 蓮聖学園生徒会

 私立蓮聖(れんせい)学園。名古屋市に位置する併設型中高一貫校である。駅から東に10分歩いたところにそれはあり、周囲には住宅地が広がっている。グラウンドは芝生で、『戦闘』練習においてもそれを利用したステージ形成が多い。

 工業科、商業科に加え、六年前に普通科を導入。中等部、高等部を合わせた総生徒数は714人で、中高一貫校としては小規模である。だが施設や環境は整っており、生徒達は何不自由なく過ごすことができている。





「では、生徒会を始める」


 6月7日水曜日の放課後。一室に集まった五人の生徒が円形に並べた席に座る。


「魔術師の存在が日本中に認知されたとはいえ、受け入れられたのは年の近い子供だけ。大人はかたくなに認めようとしねぇ」


「そうね。まあこの学校の場合ほとんどが魔術師だから、いまさら驚くことはないわ」


 挨拶を済ませるとすぐ話し始めた二人の男女。副会長の天井(あまい)悠平(ゆうへい)と、会計の三摩(みま)澄佳(すみか)だ。


「魔術師に関しては政府が認知のための政策をとっている。彼らが珍しく躍起になっているんだ、気長に待とう」


「会長の言うとおりです。僕たちも待ちましょ?」


 那木(なぎ)脩人(しゅうと)が賛成する。五人の中で最も背が高い彼は、二年生で書記を務めている。


「ところで、今日は何を……?」


 恐る恐る聞いてきたのは、二年生の花坂(はなさか)藍華(あいか)だった。七神高校に在籍する花坂美姫の妹で、生粋の魔術師でもある。紫の召喚魔法を使用する他、最近は黄緑の治癒魔法を覚えたようだ。


「そうだった。会長、今日は何をするんだい?」


 悠平が会長に向き直る。


「今日は『戦闘』に出場するチームを決めるための方策を考える。あと一ヶ月だからな」


「七神みたいな選抜試験は? 貴方そこ出身でしょ?」


「そうしたいのは山々だが、それを許さない生徒がいる。納得いくような方法が必要だ」


「あー、そういやそうだったな」


「え、ええ」


 二人の顔が引きつっている。あきらかにおかしい。後輩二人は表情から読み取った。


「そこで提案なんだが、トーナメント形式で決定しようと思う。力のある者、チームが晴れて出場できる、というわけだ」


「わかりやすくていいかも」


「そうですね。私も賛成です」


「ほか二人は?」


「「異議なーし」」


「OK。じゃ書類は俺が通すから、ゆっくりしていてくれ。では解散」




「鎌野先輩、僕も手伝います!」


「わ、私も!」


 部屋を出たところで後輩達に呼び止められた。


「わかった。助かるよ」


 それを生徒会長、鎌野(かまの)秀一(しゅういち)は了承した。抱えた荷物を等分し、二人に持たせる。

 もともとリーダーシップのなかった彼だが、中学時代二つの集団を統率した男のそばに居続けた結果、並大抵のことは指揮できるようになった。そして今、全生徒を指揮する立場にまで上り詰めたのである。


「しかし、副会長たちの様子がおかしかったですね。なにかにおびえているみたいな。なあ花坂」


「そうね。鎌野先輩が、許さない生徒がいる、ていったあたりから」


「ああ。そのことか。まあ無理もない」


「「無理もない……?」」


「実は、この学校の八割は悪魔だ。そいつらが人間に化けてる」


 後ろからバサッという物音が聞こえた。振り返ると、後ろにいる二人が凍り付いていた。足元には書類などが散乱している。


「な、なな、何すかそれ!?」


「そ、そうですよ! 八割が悪魔って……!」


「知らなかったか? 特に花坂は」


「もやもやしたのは感じていたけど、それが闇魔法だなんて思わないですよ……」


「もともとこの学校は、卒業生の何人かが行方不明になるという事件がおきている。しかも質が悪いことに、そういった事実はほとんど報道されていない」


「隠ぺい……ですか?」


「そうだ。推測の域を出ないが、原因は同期の生徒に襲われたとみてる」


「そんな……」


 後輩二人の顔が真っ青になる。秀一は落とした書類を拾いながら話をつづけた。


「天井も三摩もそれを知っている。三摩に至っては二年前に何人かに襲われかけた」


「「はぁ!!??」」


 突如発せられた大声。北舎へと向かう生徒が立ち止まってこちらを見ている。それだけではない。周囲の教室にも何人かいたらしく、ドア越しにこちらを除いている。


「驚きすぎだ……場所を移したい。早く書類を持っていくぞ」


 秀一が足早に職員室に向かう。顔をしかめていた。明らかに不穏な空気だ。それを感じた二人はおいて行かれまいと、駆け足で後を追った。

 道中、異様な雰囲気をいたるところで感じ取った藍華。そこら中に闇魔法を使う悪魔がいることを痛感した。この空気は苦手だ、早く出よう。彼女は青紫の髪を揺らす男の背中を追った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ