第6話 眼を得る覚悟
翔陽が発動した未来眼により、秀一は負けた。咄嗟だったため、心眼を発動させる隙がなかったのである。
秀一は仰向けになって笑った。
「こんなに楽しめたことはなかった。今までのがつまらなさすぎて、ストレスがたまってたんだろうな」
秀一は立ち上がった。いつもの物静かな態度に戻っていた。鎌を回しながら上へ放ると、鎌は青い炎に包まれて消えた。そして、翔陽のもとへ歩み寄る。
「次は勝つ。それまで誰にも負けるなよ、剣崎」
――コイツ、俺を名字で……。
「あぁ、そのつもりだ」
二人は握手をした。周りからは惜しみない拍手があがり、歓声も聞こえた。
閉会式。翔陽は壇上へ上がった。校長はトロフィーを持っていない。それもそのはず、トロフィーはあの大剣で、今翔陽が持っているのだ。
「あ、トロフィー……」
急に罪悪感が沸き上がった。しかし校長は、
「その剣を与える。持っていきなさい」
責めるどころか、剣を賞品として認めたのだ。
「あ、有難うございます!」
翔陽は深くお辞儀をして、壇上から降りた。
座るのと同時に、校長から話があった。
「えー、今日は皆さん盛り上がって疲れていることでしょう。土日を使って、ゆっくり休んでください」
こうして初陣戦は、無事幕を閉じた。
放課後、7人は寮の食堂へ向かった。翔陽の優勝祝いだ。大輔が翔陽にこう煽てた。
「にしてもすごいよな、あの剣にあんだけ力が備わってたなんて。それを引き出した翔陽もなかなかだよ」
「うるせぇよ。まぁ、この剣が本当に凄いのは確かみたいだな。さて、ここでしか言えないことだから言わせてもらうが」
突然翔陽が真剣な表情で話始めた。翔陽はそのまま続ける。
「君たち5人にも、俺、秀一と同じ素質がある」
五人は理解できていない。翔陽は、分かりやすく言い換えた。
「つまり、君たちも眼を使うことができるってことだ」
翔陽はそのまま話を続ける。
「眼って言うのは、本来神が持つ力で、選ばれし者に使うことが許される。人によって使える能力は様々。どれも一長一短があるけどな。それと、発動させるには本人が選ばれし者として覚醒する必要がある」
「どうやりゃいいんだ?」
大輔が質問をする。
「自身に足りないもの。これが克服できれば発動できる。あとはそれなりの力」
「足りないもの?」
今度は麗奈だ。
「そう。そしてそれは自分一人では見つからない。他人にしか見つけることができないんだ。その指摘を受け、意識して克服することで、眼が発動できるようになるんだ」
「んで、何でアタシたちなんだ? 他の奴らだって可能性はゼロじゃないだろ」
綾乃も興味を持ったようだ。
「『俺と秀一以外にもう五人いる。それもすぐ近くに』という未来を見たから」
どうやらこの未来眼は、日常生活でも使えるようだ。
五人が呆れた顔をした。翔陽は咳払いをした後、
「まあそれはさておき、重要なのはここからだ。眼を得たいかは君たちの自由。でもこの力を手に入れたいならばそれなりの覚悟がいる。悩むことも、葛藤することもあるかもしれない。それでも手に入れたいか?」
真面目な表情で言い出した。緊張感が伝わる。
5人は同時に頷いた。手に入れてやる、といわんばかりのやる気を見せた。
「よし。皆が眼を使えるよう協力するぜ」
「俺も手伝うぞ、剣崎。一人よりも二人の方が早いと言うだろ」
「助かるぜ秀一。んじゃ早速……と言いたいところだけど、今日は時間がない」
時計をみると午後8時30分だ。門限は8時。寮の外に出ることは出来ない。
「来週からでどうだ?」
秀一の提案に全員が賛成し、それぞれの部屋へと戻った。
翔陽は部屋で、剣を研いでいた。
「さて。これから忙しくなるな。しっかり準備しないと」
――痛ッ。また頭痛か。最近よくあるんだよな。病院で診てもらわないと。