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平成の騎士団  作者: 青原 樹
第8章〜『戦闘』公式戦〜
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第102話 通りすがりの英語教師

『フトゥレ、今ここであの男の息の根を止めるべきでは?』


 午後12時40分。屋根から飛び出した天使達が、球場へと急ぐ。


『問題ない。あの様子だと死んだようなものだろう』


 フトゥレとコアを先頭に隊列を組むその様は、洗練された動きによって成り立っている。


『魂同士の反発による精神崩壊、か。本で読んだことはあるが、まさか実現させてしまうとは』


『当たり前だ。私を誰だと思っている』


『そうだったな。"第一回大会で活躍し一時期日本中から尊敬された、「平成の騎士団」団長殿"』


『言うな、副団長。あれはもう昔の話だ。それより今は、本来の目的を遂行することに専念する』


『了解』





 球場を離れ、別の場所へ移動しようとしていた人々の前に、


「また、またアイツらだ!」


 天使達がまるで読んでいたかのように立ちふさがっていた。


「大丈夫、私達が何とかする!」


 立ち向かうはすべてを打ち明け、一応の理解をもらった中学生魔術師。

 そこに大地率いる陽軍第四部隊も到着した。


「我々も共に戦おう! 協力させてくれ!」


「よ、陽軍!? あんま信用出来ないんだけど……」


(りん)ちゃんそんなこと言わないの! 今はアイツらを倒すことだけ考えよっ!」


「しょーがないなぁ」


 天使達が襲いかかる。魔術師達は持ちうる武器を駆使し戦う。

 しかし連携の取れた天使達に苦戦を強いられる。じわじわと体力が奪われていく。


「大尉、これじゃ埒が明きません! 一方的に攻められるだけです!」


「分かってる! 今考えてるんだが、どうやっても阻害される! 相手の方が一枚上手としか言いようがないんだ!!」


「どーすんの美姫? キミだけだよ上手く立ち回れてんの!」


「何とかして見せる、だからもうちょっとだけ頑張って!!」


 上手く立ち回れている、そう見えるのは美姫以外のほぼすべて。対して彼女は防戦一方だった。


――ヤバ、ちょっときついかも……!


 彼らが相手取っている間に数人が民間人を襲おうと弓を構えていた。

 しかし目の前の相手で手一杯の魔術師、軍には、それに対抗する力を持ち合わせていなかった。

 今、光の矢が放たれようとしていた……。





「Hey,guys! Can I join you?」


 そんな声が聞こえてきた。活発な、そして力強い声だ。

 全員が声のする方を向く。


「だ、ダメじゃないか入ってきちゃ、怪我をするぞ!」


「Don't worry.I'll fight them too.」


「ふ、ファイトって……!」


 英語を流暢に話す彼女は、胸を張ってそう言った。「私も戦う」と。


『き、貴様! 我々を誰だと思っている!』


「I know, you are angels,right?」


『そ、それだとただの天使になるだろうが!! まぁいい、撃て』


 矢が放たれる。しかし直後、その矢が一瞬にして消え去った。

 時折高圧的な態度を取るこの女性。彼女が仕組んだものとしか思えなかった。


『光魔法じゃないと消せない矢を……。き、貴様何者だ!!』


 そう問われた女性(ひと)は、また胸を張ってこう言った。


「I'm just a English teacher passing through」


 通りすがりの英語教師。そう名乗った女性は、地面を強く蹴り、走り出した。


「やめろ! 怪我でもしたらどうするんだ!!」


 そんな陽軍の制止を無視し、単身天使達の元へと駆け込んでいく。

 待ってましたと言わんばかりに弓をつがえ、放つ天使達。

 しかし、またしても一瞬にして消え去った。彼女はなにもしていない。しかも周囲に近づいた瞬間に消えた。まるで彼女の周囲にバリアがあるかのようだ。


『どうなってる……。なぜ攻撃が当たらないんだ』


『落ち着けコア。魔法のかかった矢が普通の人間が消せるはずがない。つまりあの女は魔術師だ。それも、我々に近い生命力の持ち主だ』


「All right,I'll finish this war early and go sightseeing.」

――とは言ったものの、丸腰じゃ流石になぁ。誰かから借りられないかなぁ。


 辺りを見回す女性。

 その矢先に矛を武器に襲いかかる天使が一体。

 天からの突き攻撃に身をひねり、地面を一回転させる。

 右、左と身体を傾け相手の矛を掴み、胴に蹴りを一発。


――しつこいねぇ。ん、あの弓……よーし。


 先ほどの蹴りで怯んだ天使を尻目に、目標へと向かう。




 驚いたのはその弓をもつ少女だった。見知らぬ女性が迷うことなく自らのもとにやって来るのだから。


「Hi.Can you lend me that bow?」


「わ、私、ですか?」


「Yes!」


 突然尋ねられ、萎縮する少女。女性はその様子を見て、


「ダイジョーブ、ワタシは味方よ。すぐにやっつけて見せるネ」


 耳元でそう囁いた。

 おずおずと弓を渡す少女。女性はそれを受け取り、身を翻して戦地に赴く。


――綺麗だったなぁ、あの子の髪。緋色って言うんだっけ。

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