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平成の騎士団  作者: 青原 樹
第8章〜『戦闘』公式戦〜
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第95話 メンバー発表

 チーム滝川は今回も善戦していた。リーダーの冬我(とうが)を中心に戦うこのチームは、相手の戦闘スタイルに合わせて戦法を変えていく。近、中、遠距離ともに優れたオールラウンドなチームだ。


「次、『パワーライズ』準備。涼馬の攻撃と同時に放つんだ」


「分かってる!」


「タイミング間違えないでよ、夏季。練習で何度もやらかしてるのボク知ってるから」


「分かってるっつうの!!」


 二人の女子、天野(あまの)夏季(なつき)竜胆(りんどう)侑宇里(ゆうり)が言い争う。チームの中ではお約束のようなものだ。

 夏季は(ロッド)を使い、主に全体の支援を行う。侑宇里は散弾銃(ショットガン)を使い牽制する。彼女が囮となって特定のエリアに誘い込み、タイミングを見計らって一気にたたみ掛けることが、このチームの基本だ。多くの作戦はすべてこの行動から始まる。


「恭介と涼馬も大丈夫か?」


『いつでもいけるぜ』


『当然だろ。俺様に失敗はあり得ない』


『うわー怖い。リーダーコイツ抑えて』


「侑宇里、冷やかすな。そして恭介も落ち着け」


 この自信過剰な少年は市岡(いちおか)恭介(きょうすけ)。普段は気弱な性格だが『戦闘』時になると豹変し、このようになる。


「ほら、すぐに始めるぞ」


 残り時間は四分。チーム滝川が勝利のために動き出す。

 侑宇里が前線に出て牽制を続ける。

 この隙に他が所定の位置につく。

 残り三分。ついに侑宇里がその手を止め、距離を置く。

 何が起きたかわからず出遅れた相手のグローブ使い。

 その隙に「火炎弾」を放つ涼馬。すかさず『パワーライズ』を発動。

 そして矢がどこからか放たれる。

 その矢は見事に命中。半分以上あった相手の体力を一気に0にまで削りきった。


『命中した。これで割り出せそうか?』


「ああ。ありがとう」


 冬我は通信を切る。ハンマーを手に、敵陣へと駆ける。





 残り時間2分半。チーム滝川の圧勝で幕を閉じた。

 チーム剣崎と同様にどのようにして勝ったのか問われると、リーダーの冬我は、


「相手の研究を隅々まで行ったこと。あとは、その場でのアイデアですよ」


と答えた。


「さすがチーム滝川。やっぱり強くなってるね」


 応答を聞いた美姫がそう言った。


「てか鎌野と同じじゃん。丸パクリだろう?」


 綾乃が指摘すると、


「元から俺達と戦法が似てんだ。返答もそうなるだろう」


 秀一が冷静に分析する。

 彼の言うとおり、チーム剣崎とチーム滝川は、構成メンバーも戦法も、何もかもが似ている。洗練された戦術と駆け引きが両者ともに持ち味で、二チームがぶつかった2019年度の選抜試験では白熱した戦いを披露した。

 それ故周囲からは『32期の二大勢力』と呼ばれている。


「さて、もうすぐ発表だ。ここで選ばれたチームが公式戦に出られる」


 翔陽が観戦し終えて帰って来た。


「そうと決まったら早速行こうぜ!」


 大輔が走り出す。その後を追う健心達。


「……いいのか? 君は行かなくて」


 残ったのは翔陽と秀一だ。


「それを言うなら剣崎こそ。といっても、残る理由は一つしかない」


「「午前中の天使」」





 午後四時。閉会式並びにチーム発表。

 校長からチーム名が呼ばれる。


「今回も皆よく頑張った。これから、そのなかで最も努力したチームを発表し、今年の出場者とする」


 皆ドキドキしながら待っていた。だがその大半は、大方予想がついていた。


「まず一組目……。剣崎翔陽、鎌野秀一、弦葉麗奈、銃礎鈴菜、鎚本健心、杖光寺綾乃、拳藤大輔、花坂美姫、花坂雄斗、花坂藍華。以上十名の『チーム剣崎』」


 ガッツポーズをとる大輔。他のチームメイトも喜びを分かち合う。


「続いて二組目……。滝川冬我、立川侑宇里、天野夏季、市岡恭介、原石涼馬。以上五名の『チーム滝川』」


 生徒達の予想はこの二チームが選ばれることだった。いつもなら不平不満を言い合うところではあるが、今回は皆納得しているようだった。


「以上の二組だ。選ばれなかったものは確かに悔しいが、彼らのためにも、精一杯応援してくれ。以上」





 午前7時。木枯らしが吹きつける中、翔陽はグラウンドに向かっていた。

 1月。いよいよ『戦闘』の本戦が始まる。前年度の『戦闘』では、七神中は見事優勝した。


――今年も優勝を狙う、そう校長は言っていた。しかし、今年は今まで以上にレベルの高いチームが集まると聞く。出場校の情報が少ししか得られなかったから対策が立てづらい。


 眠っていた期間があまりにも長すぎたため、他の学校の戦法、技術が全く把握できていない。


――とにかく初戦のメンバーを決めなければ。といっても、攻守ともに優れた組み合わせになってしまうが。


 グラウンドに着くと、チームメイトが待っていた。チーム滝川のメンバーもいる。


「お、来た来た。翔陽早く!」


「珍しいな拳藤、君が早起きするなんて」


「こんな時に寝坊してたまるかってことよ!」


「今さっき慌ててやって来たのはどこのだれだっけ?」


「ばっ、やめろよ健心!!」


 このくだりもいつも通りだ。緊張していない様子を見、翔陽は安心した。


「安心しているのはわかるが、見ろ。常に緊張しているやつもいるぞ」


 隣には秀一が、チーム滝川のメンバー、夏季を指差していた。


「ムリムリムリムリ! 今思ったけど全国相手はムリ!」


「今さら何言ってるんだよ。最初から出場を目指して戦ってきたじゃないか」


「リーダーの言うとおりだよ夏季。どうせここまでの失敗が大会でも起きたらどうしようって考えてるでしょ。どう、それとボク、どっちが怖い?」


「今こうして心情読んで煽ってるアンタのほうが怖い」


「なら大丈夫だね」


 チーム滝川も解決したようだ。翔陽は出場メンバー全員を集める。


「さて、お互いのコンディションを確かめるために、一旦戦おうと思う」


「そのために呼んだんだもんね。でもザキ君、それじゃ本番前に疲れちゃわない?」


「そのためにこの『挑戦(チャレンジ)モード』使う。これには『制限時間五分』という制約をかけたプログラムが組み込まれている」


 翔陽が取り出したのは、『戦闘』のステージを展開するためのキューブ。この中には、『戦闘』を行うためのありとあらゆるデータが入っている。


「OK。二分の一なら疲れなくて良さそうね」


「確かに。そして五分もあれば私達のコンディションも分かりそうだな」


 麗奈と冬我が納得する。


「異論は無さそうだな。よし、始めるか」




 試合は五分間。実際の『戦闘』の半分の時間で戦う。


――本気で勝ちにいくなら、五分の間に戦局を見極め体力を削っていくのがセオリー。しかし、これはあくまでコンディションチェック。私やチームメイトの調子のよさを見るためのもの。なら、今私が考えている作戦の下準備をここで練習しよう。


――と、彼は考えているだろう。確かにコンディションを見るためとは言った。だが気は抜いて欲しくない。だからここは……。


 五分間という短時間の戦いとはいえ、やることはお互い同じだ。

 午前7時半。二大勢力が再びぶつかる。

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