第2章9話
ギガースに風穴を開ける事に成功したレブル。だが、ギガースも簡単にはくたばらない。再生が少し遅くなったとは言え、相手もまだまだの状態だ。
ギガースは棍棒によって攻撃する。レブルはそれを回避しつつ、腕や脚などに獄門、魔力コントロールで強化した蹴りやパンチを入れる。
レブルには手応えが十分にあった。さっきまでより、確実にダメージを与えれてる。その証拠に再生のスピードがここに来て4、5秒遅くなっている。
レブルはこれを好機と考えた。再生が追いつく前に連撃を叩き込む。
だがレブルの攻撃は成功しなかった。ギガースは雄叫びを上げる。
「!!!!!!!!!!」
ギガースの声にならぬ雄叫び。それと同時にギガースの身体が急速に再生して、また肩甲骨から腕が両側から2本づつ、肘から1本づつ、計6本の腕が現れた。
レブルは気付く。ギガースが相当な無理をしている事に。ギガースの中にある魔力が限界を超えて増え続けている。だが、それと同時に息がかなり荒くなっている。
(これが奴の真の姿か……。魔法は使わないと思ったけど、こりゃあ使わないと勝てない)
レブルがそう考えている時にギガースはレブルに向かって攻撃をする。8本の腕が同時にレブルを襲う。だが、その腕はレブルに届く事はなかった。
8本の腕は凍りついていた。レブルの周りには白い霧が浮いている。
「零式魔法、グレイシア。魔法は得意じゃないけど、魔力が馬鹿みたいに大きくて対象が馬鹿みたいに大きければこれ位は出来る」
レブルはそう言う。レブルは効率的に魔力を扱えても、効率的に魔法を扱う事は出来ない。魔法を使う時に燃費が馬鹿みたいに悪くなるので魔法は得意でもないし、練習もしてないから素人同然である。
だけど、レブルは超魔法によって自分の圧倒的な魔力を利用する魔法を作り上げた。燃費云々は後から直せばいい。今、大切なのはギガースを倒す事。目の前にいる怪物を倒せれば何でもいい。
レブルは右手で拳を作り、構える。そこに大量の魔力を溜める。全身に流れる全ての魔力をそこに溜める。そして
「零式格闘術、鬼潰し!!!」
右手に溜め込んだ魔法を一気に解放して、ギガースを殴る。
「!!!!!!!!!!」
ギガースの声にならない苦痛の叫び。そして、レブルの右手から放たれた黄金の輝き。それは、レブルの魔力によって作られた輝き。レブルの生命の輝き。レブルの戦いの輝き。
ギガースの胴体に大きな風穴が開く。ギガースの身体は再生する事無く、そのまま、灰となって消滅した。
レブルは拳を開く。握っていた拳に何かがあったからだ。レブルはそっと開くと、そこには指輪が2つあった。1つは大きめの丸い宝石がついていて、中に魔法陣らしきものが描かれている。もう1つは宝石はついていないがリングに文字みたいな物が刻まれいる。
2つの指輪は宝石のある方にチェーンがついていて、繋がっている。何というか、全体的にゴツい。さらに、内部に微かだが魔力を感じる。ギガースの魔力とは似ても似つかぬ魔力だ。
指輪から放たれている魔力は穏やかで優しく、全てを受け入れる様な魔力だ。例えるなら大空の上にある宇宙。その指輪からはそんな魔力が微かに放たれていた。
こんな物が何故俺の拳にあったのかは分からないがこれは、何かのきっかけだと思う。
俺は右手の中指と薬指に指輪をつける。左手につけると結婚しているようで嫌だからだ。
指輪の事に夢中になっていたのか下の声に気付かなかった。下からは軍人、一般人がレブルの事を褒め称えていた。
救世主が現れたとか、英雄だとか、そう言う声が聞こえる。聞こえはいいが、俺は魔人。そう言われていい立場なのかと考える。
その時だった指輪から魔力が流れ込む。そして、レブルの頭に誰かの記憶が流れ込む。
『本当にいいのか? それは君の物だろ』
『いいさ。いつか、この指輪と俺の記憶を継ぐ者は現れる。暴君という名を背負い、俺の意思を継いでくれる者が必ず……』
2人の男の会話。それはこの指輪の事を語っている様だった。そして、頭に声、知識の宝物庫の声が聞こえる。
『解析完了。この指輪の名前は宇宙の意思と言います。能力などは不明です。ルミナ神話に同一の名前の指輪が出ています』
知識の宝物庫はそう言う。ルミナ神話はルミナ創造~神と魔王の戦争を書いた神話である。
もしかしたらそこにこの指輪の謎が隠されているかもしれない。