第2章8話
レブルは頭を動かす。ギガースが街に到着すれば被害は大きいであろう。建物は破壊され、死人も多く出るであろう。
レブルはこのまま1人でギガースに向かうのがいいのか? いや、1人では勝てない。奇跡が起きたら……と思うのは現実的では無いし、無謀である。レブルは確実に勝てて被害が少ない方法を考える。
その時に排除すべき物は機動兵器の存在だ。機動兵器は使うのに国からの許可がいる。機動兵器は許可が下りたら考えるとして、機動兵器を使わずに勝てる方法。それを考えるしかない。
1番確実なのは魔力コントロールを駆使して、暴君、魂、獄門でダメージを与えるしか方法がない。魂は一時的に魔力を限界以上に増幅させ相手に与えるダメージを大きくするという物である。
獄門は魔力の爪を纏わせるスキルである。手の部分に纏わせる事で普通のパンチに斬撃の能力を付加する事が出来る。爪の硬度、切れ味、長さは魔力の大きさによって決まる。
超魔法は全ての魔法を使う事が出来る。だけど俺は魔法については全くの素人だから使えないと思う。自分オリジナルの魔法を使えるがまあ、使う事は、多分ないであろう。
レブルはギガースの方を見る。大砲が当たっているのか身体に何かが当たって爆発している。
レブルは獄門を発動して首の裏に瞬間移動する。そして、うなじに向かって拳で攻撃する。
ブシャ!! という音がしてうなじの肉が飛んでいく。だが、うなじはすぐに再生する。
「!!!!!!!!!」
ギガースの叫び声、それと共に皮膚の色が赤になる。その叫び声を近くで聞いてレブルは耳を塞ぐ。その時に、身体から離れる。レブルは宙に魔力の床を作ってそこに立つ。無色透明なので普通に見たらレブルが宙に浮いている様に見える。
ギガースはレブルを方を向くと棍棒で攻撃をしてくる。レブルは回避する。
ギガースの攻撃は大振りで隙が大きい。そのため、隙を見つけるのは容易であった。
レブルは懐に入って、獄門で攻撃、そして脚と足に魔力を溜めて回し蹴りを放つ。ギガースにダメージを与えても直ぐに再生する。
レブルは弱い攻撃を積み上げるより威力のある攻撃を叩き込む事が重要だということに気付く。だけど、レブルもこれで全力で戦っている。という事は自分ではダメージを与える事は不可能という答えに行き着く。
ダメージを与える事が無理なのはあくまで素手での場合。この際、剣を扱うのもいいのだが、あれは今の自分では完全に扱えないと知っている為、レブルは別の攻撃方法を考える。
第一に上がったのはエレクトロンだ。レブルの魔力を注ぎ込めばかなりの威力を叩き出せるが多分、内部にあるクリスタルの魔力の許容量が限界を超えるので使い捨てみたいな感じになる。
そう考えるとリボルト・ボウの方が優れている。あれならいくら魔力を流し込んでも破壊はされないであろう。元々、俺専用の武器だからあっている筈だ。だけどリボルト・ボウは発射までに少し時間がかかるという事だ。弓矢をセットして、狙いを定めて、放つという動作はレブルの場合だと狙いの部分で時間を使う可能性が高い。
ノーコンでも当たるがダメージは与えられない。弱点は知識の宝物庫が解析中である。ダメージを与えるには一撃が重く、尚且つ正確な場所に叩き込まないといけない。レブルはリボルト・ボウにしろエレクトロンにしろそれは不可能だと考える。初心者が狙った所に弾を当てるなんて普通に考えて無理な話だ。
ゼロ距離を考えたが、少し危険な気もする。危険は覚悟の上でやらないといけないがギガースみたいな図体がデカく、強力な再生能力を持つ相手は長期戦が普通である。なら、今はなるべくダメージ無しで乗り切りたい。ゼロ距離は中盤以降なら使用してもいいと考えるがこの序盤で使用するのは色々とリスキーだと思う。使い過ぎて、ギガースに対策を取られたら終わりだ。
そう考えるとギガースにダメージを与える方法がなくなってしまう。軍は今は近隣にいた軍人で対応しているが直ぐに増援は来る。さらにそろそろ、監視クリスタルにかけた言葉の支配の効果が切れる。それによって、レブルの体内にかけられた魔法(いつの間にかかかっていた)はレブルの位置情報を伝える物と知識の宝物庫に言われた。本当にいつかけられたのかが謎なのだが。
もしかしたら、もう既にここに向かっているかも知れない。
考えろ、俺が持つ、全ての可能性。振り絞れ、今まで経験してきた事を。そこから、導き出る答えを。思い出せ、今まで見てきた物を。
そして、レブルは1つの答えに辿り着く。吸収。そう、ギガースが強力な力を持つのならそれを吸収して自分の力にすればいい。吸収の条件は対象のDNAに触れる事。ギガースには血が通っていた。うなじを切った時に一瞬だが切り口から血管を見ている。という事は、何処を狙えば多くの血が出るのかを考える。
レブルはギガースの左胸を見る。人間と構造が同じなら左胸に心臓がある。唯の憶測だったがレブルには何故か確信が持てた。ギガースの左胸に心臓があるという事に。根拠なんて物は無いがレブルの感がそう言っている。
レブルは左胸に向かって獄門を使い、拳を叩き込む。確証はなかった。だがレブルの感は当たった。大量の血が吹き出す。それはレブルの全身を覆い尽くす程だ。
傷は徐々に再生していくがレブルが吸収を行うには十分過ぎる程の血の量であった。
レブルの身体の細胞全てが一斉にギガースの血にあるDNAを解析し、取り込んでいく。レブルの細胞がギガースのDNAから魔力を吸収して、その性質を理解していく。
レブルの身体は既にギガースのDNAを吸収して、ギガースの力を自らの物へと変化させていた。
魔力の量が爆発的に膨れ上がる。レブルは拳を構える。そして、ギガースの身体に向かって、魂、獄門を使って拳を叩き込む。
ギガースの胴体に風穴が開く。ギガースの身体は再生しているがここに来て初めてダメージを与える事に成功した。
彼は進化した。戦いの中、進化した。彼は自らのやり方で自らを成長させた。
ギガースとレブルの戦いは徐々に激化していく。