第2章3話
ゲートコントロール。人間は痛みを感じる時、末梢神経から脊髄神経へ痛みが伝わる時、脊髄に痛みをコントロールするゲートがある。そのゲートが閉じている時は痛みを余り感じず、開いている時は痛みを感じる様になっている。痛みは感覚神経でも伝わり、痛みを伝える感覚神経は太い神経と細い神経の2つある。太い神経は振動や触覚を伝える事が出来る。
よく、腕を怪我した時に自然にそこを手で押さえる事がある。手で怪我しところを押さえると手で押さえる刺激が痛みを伝えるゲートを閉じる事になる。
簡単に言うと「痛いの痛いのとんでけー」であっている。子供が転んで怪我をしてもさっきの言葉を言いながら手を当てれば子供は再び元気に走り回る。それと同じ様なものだ。
ゲートを意図的に頭だけで開閉するのは多分、ギリギリ可能なラインだとは思う。普通にやるとしたらギリギリだが魔力コントロールと組み合わせれば超頑張れば可能というラインには引き上がるとは思う。
そんな事を考えていると、扉がノックされて開かれる。入って来たのはフロールだった。
「明日の予定の通知と食事への案内に来ました。取り敢えず明日の予定はこれに書いてあります。しっかりと見ておいてください。さて、食事に時間になりましたので案内させて頂きます」
フロールはそういい、食事の場へと案内してくれる。特殊部隊の連中は部屋の前にいる。少し歩いたらフロールが話しかけて来る。
「レブル様、舞花様とはどう言った関係だったのですか? 差し支えなければ教えてくれませんか?」
「俺と舞花は………。かつての友達だった。いやそれ以上だったのかも知れない」
レブルは少し悲しそうな声で言う。フロールはそれに気付いて声をかける。
「これ以上は無理しなくてもよろしいです」
余り様付けとかして欲しくない。だけどフロールは丁寧な女性だからそういう所は変えないであろう。
だけどそういう女性も俺の好みだ。まあ女性の前では口が裂けて言いたくない事だが。
フロールがとある大きな扉の前で止まる。そこは大きな木製の扉であった。フロールがノックした後、入室する。中には白いテーブルクロスが敷いてある長机があった。部屋の奥の方に舞花が座っている。フロールが椅子を下げて、手を出す。俺は椅子に座る。
俺が椅子に座るとフロールは一礼してから部屋を出る。この部屋には舞花と俺だけになった。舞花は俺に話しかけて来る。
「もう少ししたら食事が運ばれて来るからちょっと待っていてね。……1つ聞いていい?」
舞花がそう言う。レブルは黙って頷く。そして、舞花が自分の思っていることを口にする。
「君は、細川 龍司君なの? 色々変わってしまった所があるけどたった1つ変わらないものがある。記憶だけは変えられなかった。教えて、君は細川 龍司君なの?」
1番、痛い所を………。俺の顔は細川 龍司の時とは余り変わっていない。サングラスをして昔の知り合いが見ても分からない様にしたが、サングラスはいつの間にかなくなっていた。カルディナと戦った時はかけていたがアリスと始めてあった時には既になくなっていた。多分、アリス辺りが持っているだろう。
確かにこの世界で、初めて会った時、舞花は気付いてしまうような反応を見せてしまった。
彼女には嘘は着きたくない。何故だか分からない俺のプライドがそれを許さない。彼女にいつも笑顔で振舞われて結果的には自殺を最後の最後まで止める事が出来なかった。俺はあの笑顔に嘘をつかれていた。だから、俺は彼女を信用して、彼女から信用される様にする。だから嘘は着きたくない。
「俺はかつて、細川 龍司だった。だが細川 龍司は殺されて、今の身体を貰ってこの世界に再び転移した。今の俺はレブルだ。俺の質問に答えてくれ。メビウスの輪とメビウスの黒輪とは何だ?」
少しの間の沈黙。彼女は話しづらそうであった。だが、これは聞かなくてはならない。この2つの輪のせいで舞花は自殺する事になった。だからこれだけは俺が絶対に知らないといけない物だ。
舞花が沈黙を破って言葉を口にする。
「いずれは聞かれると思ったけど今か……。いいよ。少なくとも人間の身体を失った君には聞く権利がある。これを見て」
舞花は軍服の右腕をまくる。見た目は普通の腕だが、次の瞬間、それは変貌した。
血管は緑と黒と赤が混じった物の2つが浮かび上がり、皮膚はまるでスライムの様にウネウネと動き、色も灰色。まるで液体勤続の様だ。人間の身体では無い。
舞花が口を開く。
「私は完全な人間では無い。私の身体は人工で作られた金属のスライム、そして魔人の血が少し入っている。
話を戻すね。メビウスの輪は私達が歩むべき運命。そして、メビウスの黒輪は世界がメビウスの輪によって定められた終わり方をしなかった誰かによって世界の終焉が起こる運命の事。私の父親は既にメビウスの黒輪を引き起こそうとしていた。だから私は父親を自らの手で殺め、父親の遺伝子を持つ私も死んで世界をメビウスの輪に引き戻した」
難しい話だが、という事は決められた物語に異常が起きたから誰かが引き戻す必要があった。その方法が舞花と舞花の父親が死ぬだったと。ならばこれもメビウスの輪なのか?
「舞花は俺以外に転移されている人物がいるという事は知っているか?」
舞花は一瞬驚いた様な表情をしてから言う。
「どういう事!? 君と私以外にこの世界に転移されているの!?」
どっちに傾くか分からなかったがまさか知らないとは………。取り敢えず説明しておくか。
俺はこの世界に俺達高校生が転移されて人間の国に保護されているという事を。勇者として魔人と人間の戦争の戦力として期待されている事。そして、俺はクラスメイトに殺された可能性があることを話した。
「そういう事………。君はクラスメイトに殺されたかもしれない………。もし、クラスメイトが殺したなら君はどうするの?」
「決まっている復讐だ。そのために魔人の身体を貰った。その後は考えていないがな」
「そう………。だけどこれだけは覚えて。憎しみは憎しみを復讐は復讐しか生み出さない。君が復讐を果たしても再び、君と同じ人が現れるかも知れないだから……!!」
「だけど俺は復讐の為にこの身体になった。この身体を貰ったからには復讐を果たして帰らなければならない。こんな俺にも帰る場所はある」
俺には帰りを待つ人がいる。帰る場所がある。俺を必要としてくれる人がいる。その人達の為に俺は目的を果たし、帰らなければならない。これは俺だけの問題ではない。無意識に俺は皆を巻き込んでいた。俺が死んだら悲しむ人がいる。俺が死んだら、俺が失敗したら彼等に合わせる顔がない。だから、俺は復讐を果たす。奴は坂井 輝だけは俺の手で殺す。
その後は2人で夕食を取り、自分の部屋で死んだように寝た。
4話は後から投稿します。この作品の書き溜めがそろそろ終了しますので終了したら、一気に投稿したいと思ってます。




