第2章2話
俺はフロールに案内されてただ長い廊下を歩いていた。雰囲気は中学の修学旅行で行った、国会議事堂に似て居て、廊下は広くて、天井が高い。多くの扉が廊下の両脇にあって立て札には『事務室』とか『会議室』とか色々書いてあった。しかも、会議室とかはAからZまであった。何をそんなに会議するんだよ。とは思ったけど。
しかし立派な柱が所々にある。色は灰色に統一されており、自分の姿が見えるまで磨かれている。指紋や傷といった物は1つもない。
そして、俺達は階段を上がって2階に行く。2階は1階程天井は高くなかったがそれでも立派なもので、廊下の脇にある部屋は少なくなっている。
フロールは『事務室24』と書かれた部屋の前で止まる。そして、木製の扉を3回ノックする。
「どうぞ」
ノックした後に女性の声が扉越しに聞こえる。そして、フロールは扉を開ける。レブルは部屋に入る。
部屋の大きさは現代日本の高級マンションのリビングルーム位の大きさで正面は一面ガラス張りでそこから外の景色が観れる様になっている。
扉に向かって左に本棚が2つ、右にクローゼットと脚が長めの丸机。丸机の上には赤いクリスタルとコーヒーカップ、それと……この世界で言うコーヒーメーカーが置かれている。多分、コーヒー豆に似ている豆が入っているから多分そう。
正面にはソファーが2つ、脚が短い長机を挟んで置いてある。
そして、俺の方に背中を向けて外を見ている帝国軍の軍服を着た女性が振り向く。
レブルの背中に電流が走った。それは確実に良い物では無かった。その顔には見覚えがあった。いや、そういうレベルは超越している。脳にしっかりと焼き付いたその顔。何1つ変わらないその顔。レブルは信じたく無かった。全身が震える。それはフロールやアリスに分かるくらいにハッキリしていた。そして、レブルは震える声で言う。
「もしかして、舞花なのか……?」
そこに居たのは2年前、中学校の屋上から飛び降り自殺をした朝霧 舞花。レブルいや龍司が絶対に忘れる事が出来ない女であった。
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数時間たった。俺はあの後、用意された個室に入らされた。扉の向こう側には戦闘のプロフェッショナルである帝国軍の特殊部隊が4人、俺の監視と護衛をしてくれる。窓を突き破って脱出出来そうだが、視認することが出来ない監視クリスタルが部屋中に配置されているらしいのでそれも不可能だろう。部屋の中は普通に机と椅子、ベッド、青いクリスタルで稼働する冷蔵庫らしき物があるだけだ。冷蔵庫の中には天然水と食用の生ハムが入っている。何か欲しい物があれば連絡用のクリスタルで連絡してくれれば直ぐに手配しくれるらしい。手錠は外されたが変わりに両手の甲に魔法陣が描かれた。この魔法陣は手錠と同じ効果らしい。魔力が流れない。だけど手錠されているよりかは何倍もマシになった。
俺はあの時、舞花の顔を見た後の事は良く覚えていない。ただ、舞花はあの時から余り変わって居なかった。最初は俺の事を龍司と言いかけたが直ぐにレブルに直した。
何で舞花が軍の指揮官になっていたのかが分からない。ミリアはしっかりしていて博学だから指揮官を勤めている事には納得出来るが、舞花は運動神経も良く見積もっても中の上、勉強はそれこそ、平均をウロウロしていた。責任感は強いと思うけどそれだけで軍の指揮官が勤まる訳がない。必ず、何かがありそうだが調べる物がない為、それは迷宮の中だ。
ハッキリ言って、この部屋は退屈だ。特殊部隊の人がたまに中に入って来て話し相手になってくれるがそれ以外は暇だ。
レブルはそんな事を思っているといつの間にか修行で見た映像を思い出した。あれは凄いと思って何百回と見直した。脳に映像の1つ、1つが焼き付いている。
あの映像の中でレブルの印象に残ったのは1分間で約250発余りの攻撃をした格闘家の映像であった。魔力コントロールで自分の肉体を強化して常に相手を自分の間合いに入れて、相手に反撃どころかガードする暇も与えない連撃は一種の芸術とも思えた。あれ程に速い技は感動ものである。
もう1つ、印象に残った映像がある。それはまるで痛みを感じない。全身の神経が麻痺しているのかと思える男の戦いであった。
彼は刃物で刺されても、鈍器で殴られてもその部位を手で押さえようとはしなかった。普通なら痛い所が出来れば手とかで庇うがその男は腕が紫色に腫れ上がっても決して手で押さえることはしなかった。それどころか、常に火事場の馬鹿力が発動してそうな威力のパンチや蹴りをしていた。
あの映像を良く思い出すと彼は常に魔力コントロールが律であった。常に最低値でそこから変動しなかった。もしかしたらそこに秘密があったのかも知れない。
前者の連撃は習得不可と考えても後者の魔力コントロールは習得可能と考えた。レブルは必死に頭を回す。何故、激に変化しなかったと。
その答えは意外と早くに辿り着く事が出来た。レブルの頭に浮かんだのはゲートコントロールというものであった。
第2章3話は明日投稿します。




