第1章14話
コクロウが鎧との戦闘を開始した頃キリサメの率いる防衛ラインでは帝国軍を確認していた。
「爆破弓兵! 発射準備用意!! 前方に攻撃!!」
キリサメの合図で爆破弓兵が一斉に弓矢を発射させる。弓矢は着地地点で爆発する。弓兵は弓を引きまくる。とにかく、爆破弓矢を発射させる。
「打ち方やめー!!」
キリサメの声と共に弓兵は攻撃を中止する。煙が晴れる。人間は倒れているが巨大な鎧は歩みを止めていない。キリサメは思う。これの指揮官は人間を駒としてしか見ていないと、前衛に鎧が大盾を装備していたが最初見た時は盾持ちは後衛におり、人間が前衛にいた。
爆発の中で陣形を変えたとしたら鎧は爆発如きでは怯まないらしい。
この状況、はっきり言って難し過ぎる。キリサメはドクターに念話をする。
『ドクター! 大型専用のネット砲を発射しろ!!』
『了解。ネット砲の雨を降らせてやる!!』
念話後直ぐに爆音と共に砲弾が6、7個発射される。そして、鎧の真上で爆発しネットが展開される。
ネットは鎧を絡め取り、行動不能にさせる。続いて、ロウシの命令なのか、ミリアが開発した対魔力兵器専用の砲弾が発射される。
砲弾は鎧の上で爆発し、液体が降り注がれる。
ネットから逃げようとしていた鎧も動きが停止する。
防衛ラインの連中は鎧を止めた事に喜ぶ。だがキリサメは確認した。鎧の連中の中に潜んでいた人物を。
キリサメが見た人物は身長170cmくらいの女性で変な服(キリサメが知らないたげでチャイナドレスです)を着ており、左足のふくらはぎの所に片手剣、右足のふくらはぎの所にはエレクロトンが小型化したような物が装備されている。
女の姿が消える。そして、女は防衛ラインの連中の中心に居た。そして、目の前のオーガに向かって回し蹴りを食らわす。
オーガは地面に倒れる。死んではいないが気絶である。
「う、うあああああああ!!!!!」
誰か1人が叫んだ。そして、叫んだゴブリンが女に向かって剣で攻撃をする。
女はふくらはぎにある剣を抜き、ガードする。そして、ゴブリンの腹に掌底を食らわす。ゴブリンは血を吐き出して地面に倒れる。
そこからは一方的だった。四方八方から攻撃されても女は受け止めるかガード、最短距離での回避をし、冷静に反撃をする。リザードマンだろうがゴブリンだろうがオーガだろうが関係無い。皆等しく、女の攻撃に倒れていく。
そして、女は指を鳴らす。さっきまで停止していた鎧達が再起動し始めた。そして、ネットを千切り、防衛ラインへと進軍を開始した。
再起動にいち早く気付いた爆破弓兵が弓を引こうとする。女はそれを見逃さなかった。その爆破弓兵に向かって直蹴りを食らわす。弓兵は一撃で倒れる。
キリサメはこの状況を見て、声を大にして言う。
「全員! 撤退しろ!! 第2防衛ラインまで下がれ!! 殿は俺がやる!!」
キリサメはそう言って、女と鎧達の前に立つ。右手にはキリサメ専用の超大型の剣が握られている。
キリサメが女達の前に立った事で防衛ラインの連中は撤退を開始する。そして、キリサメは剣を構える。
(状況は最悪。どれ位持つのかも分からない。だが、あの女は鎧達より絶対強い。根拠はないが俺の感がそう言っている。あの女、唯の人間では無い。魔人とのハーフだ!!)
キリサメは女に向かって攻撃する。女は最短距離で回避するがキリサメも最短距離で追撃をする。
キリサメの剣術は村の中でもトップクラスで巨大な剣のリーチをいかし、そして、自分の腕力で最短距離での追撃、この2つの武器を持つキリサメはかなり強い。実際、女の表情が少し崩れた。
キリサメはこれをチャンスだと思った。後ろにいる鎧はかなりの脅威だが今は目の前にいる女が最高の脅威。こいつさえ、倒せれば……!!
キリサメは最短距離での攻撃を繰り出す。女もその攻撃をギリギリでかわす。だが女には先程の連中の攻撃を魅せてかわせるほど余裕はなかった。少しづつだが息も崩れて来ている。自分も息が崩れ始めて来ている。長い事、続かない。だけどキリサメには全ての動きがゆっくりに見えた。キリサメはかなり精神力を使って女の動き、鎧達の動きを戦いながら観察している。
キリサメには見えた。相手が跳んで回避した時、着地が少しづつだが崩れている。だけど、剣の振り方も少しづつ雑になってきている。女が最短距離で回避出来なくなっていると同じ様にキリサメも最短距離での追撃が雑になってきている。呼吸を何処かで整えなければつなぎ目が雑になり反撃される。
天はキリサメに味方したのかほんの一瞬。普通なら見逃してしまいそうな一瞬いや刹那。女は着地を誤った。ほん小さな、普通では絶対に気付かない小石にバランスを崩された。
キリサメは大きく深呼吸をする。そして、最速、最短距離の連撃が女を襲う。つなぎ目も綺麗になり、流れる様な動きで剣が女を襲う。女も最初方は着いていけていたが徐々に着いていけなくなり、ガードをするようになった。
だが女のガードもキリサメの腕力と剣の前では無意味であった。直ぐに崩され、キリサメの攻撃をもろに食らう。
そして、女は膝をつき、倒れる。死んではいないが気絶と言った所。
キリサメは自分の心配をし始める。目の前に立ち塞がる鎧達。だけど自分の意識も崩れて行く。
そして、キリサメは倒れる。身体が動かない。まるで金縛りにあった様に、身体が精神の言う事を聞かない。
そして、キリサメの意識が遠のいて行く。そして、意識が完全に切れる前に声が聞こえた。
「良くやったキリサメ。後は俺に任せろ」
そろそろ、ストックが尽きてきた……。
第1章15話は明日投稿します。