第1章12話
レブルが自分だけの武器を探す為に修行を始め、ミリアがウィズダムの動力炉について頭を悩ませている頃、帝国軍本部では…………。
「ガルド、軍の準備状況はどうなっている?」
最高指揮官がクリスタルに向かって言う。クリスタルから声が返って来る。
『はい。新型兵器に合わせて4割は準備可能です。5日後には出撃出来ます!!』
返って来た声はかなり低く、修羅場をくぐって来てそうな、そんな声であった。最高指揮官は5日後に出撃については少し遅いと思ったが、新型兵器の調整とかならそれ位かかっても、問題ないであろう。新型兵器の初陣だ。もしもの事はなるべく少なくしておきたい。そう急ぐ問題でもない。じっくりと作戦開始の合図を待てばいい。
それぞれの思いを抱きながら5日という日は直ぐに過ぎて行った。
ハクシャクの館の一室。ハクシャクが扉を開こうとドアノブに触れるとそこからは静電気の様に魔力が纏わり付いていた。ハクシャクが扉をそっと開く。
そこに立っていたのは全身に恐ろしい量の魔力を纏い、その魔力を外部に放出している為か、スパークみたいな物が所々で発生している。
ハクシャクはシルクハットを深く被り直すと、瞬間移動でレブルとの距離を一気に詰める。
レブルはそれが分かっていたのかノータイムで確実に人間が視認出来ない速さの超光速回し蹴りを放った。そのためか、レブルはいつの間にかハクシャクに向かって背を向けていた。
その瞬間であった。ハクシャクのシルクハットが宙を舞った。そして、宙でバリバリという音が鳴り、シルクハットに大量の傷が出来て粉々となった。
「合格です。よくここまで練り上げました」
ハクシャクが言う。そして、手にいつの間にかシルクハットが握られている。
「この部屋に居たから分かっていないと思いますが」
「分かっている。帝国軍が村に向かっている。後5分くらいに開戦だ。数は……帝国軍が50。大きいのが幾つかいる………魔力兵器か? ここからならどれ位かかる?」
「瞬間移動なら一瞬でしょうが、普通に行くなら最速で20分くらいですね」
その時だった、ドドン、という音と振動がする。そして、感じるはかなり大きい魔力。これが帝国軍の魔力兵器……。ウォーミングアップくらいにはなると思う。
「ここは俺に行かせてくれ。ハクシャクは黙って見ていてくれ」
「当然です。私は手を出しません。私もこれから用事がありますからこの辺で。また会いましょう」
そう言ってハクシャクが消える。村が危機と隣り合わせだと言うのにあの人は………。
俺が外に出ると2m近い身体を持つ鎧が2体いる。魔力感知で鎧を見る。中には人はいない様だ。
鎧は1体が大剣を持っており、もう1体が槍を持っていた。
俺は瞬間移動で槍持ちの方との距離を詰める。そして、右腕に魔力を溜める。そして、1番魔力が溜まっている胸の部分を狙って拳を叩きつける。鎧は砕け、そのまま胸の部分にある動力源であるクリスタルを掴み、握り潰す。
鎧は音を立て崩れる。
さっきの腕に魔力を溜めて放つ攻撃を雷槌と名付けた。
そして、流れる様な動きで大剣持ちの方に近付く。大剣は大剣を振り回す。これでは近付くのが難しい。
脚に魔力を溜める。そして、大剣持ちの頭上に瞬間移動し、そのままかかと落としを食らわせる。ギャリリリリリリリリという耳が痛くなるような音を立てながら鎧が縦に割れて行く。
そのまま、クリスタルは粉々に砕け、鎧は割れてしまう。槍持ちは回収すれば何かに使えそうだが、大剣持ちは回収しても何にも使えなさそうである。
取り敢えず、四次元ウェストポーチに槍持ちを入れる。クリスタルも壊さなければよかった。
村の方を向いて魔力感知を行う。魔力コントロールを出来る様になったから感知範囲がかなり広がった。
村には鎧がかなり居る。俺が舐められた気がするがその怒りは帝国軍にぶつけよう。
この戦い、コクロウ、キリサメ、マイン、カゲロウのエース、そして、何気に莫大な魔力を隠し持つロウシが鍵になるであろう。
俺は脚に魔力を溜める。そして超高速で移動を開始する。瞬間移動を使わないのは燃費が悪いからである。
ここから全速力で行って約20分。開戦までは約5分。15分の間に戦況がどれだけ変化するか、それが大きな分岐点になる。
レブル、戦場到達まで20分。
第1章13話は今日の夜中か明日に投稿します。