第1章11話
宴から1週間という時が流れた。宴の日はハクシャクとの会話の後、宴を存分に楽しんだ。あの時のミリアの笑顔は良かったな~とおもっていたりする。
この1週間、何をやって居たのかと言うと、魔力コントロールというものをしていた。この魔力コントロールは基本なのだがかなり難しいものである。
身体に流れる魔力を最低限にすることを律と呼び、これを使えば魔力の消費を抑える事が出来る。
逆に戦闘時に身体に流れる魔力を大きくするのを激と呼び、魔法とかを使う時にこの状態になるらしい。
この魔力コントロールは少し難しい所があって、律の状態で攻撃を受けると激の状態になったり、逆に激の状態で攻撃を受けると律になったりする。魔力は変動しやすく、常に一定はかなりの技術を要する。これは普通なら年単位で習得するものだが、俺はこれを1週間で習得しろと言われた。かなり無茶苦茶である。
その為にした修行は、常に攻撃されるかも知れないという心がけをするという修行である。ほんの一瞬でも隙が出来れば魔法による攻撃、魔力コントロールが少しでも崩れれば攻撃と神経を使う修行であった。
今もハクシャクの屋敷の個室で魔力コントロールの修行をしている。その時だった、扉が開かれる。
レブルはそっと扉の方を見る。そこには手に何かを持ったハクシャクが居た。
「魔力コントロールは上手く出来ているようですね。この短期間でよく出来るようになりましたな」
ハクシャクはレブルの方に歩み、手に持っていたクリスタルを渡す。
「これは映像を記憶するクリスタルです。私には魔力コントロールについてこれ以上教える事は出来ません。これを見て、自分だけの魔力コントロールを見つけてください」
ハクシャクは笑顔で言う。レブルはクリスタルに魔力を流し込む。クリスタルから映像が流れる。
映ったのは3mクラスのライオンに似た魔物と190くらいの筋肉質の男が睨みあっていた。男は武器は持っておらず、上半身は裸でズボンもとても防具と言えるものではなかった。
巨大な爪を使って魔物が攻撃する。直撃を食らえば肉体がバラバラになる程に巨大で鋭かった。だが男はその爪を片手で受け止めた。そして、男は右足を大きく上げて光速とも言える回し蹴りを食らわせる。一瞬だけだったがレブルには右足が何かの大きな鈍器に見えた。
「そこに映っているのは魔力コントロールを駆使して戦う武人の映像です。5日後にまた来ます。その時に自分の魔力コントロールを見つけて使える様にしてください」
そう言ってハクシャクは部屋から出る。レブルはこんな魔力コントロールが出来るかどうか不安になって来た。さっきの男は限りなく律に近い激で、筋肉に魔力を溜めて筋力を強化し、皮膚に魔力を溜めることで皮膚を硬化することで強力な一撃を叩き出した。そんな魔力コントロールが自分に出来るかと不安になって来た。
俺に比べたらこの映像に映っている者はレベルがかなり高い。魔人、竜人の映像が多い気がするがたまに人間や獣人が出て来る。
効率良く魔力を使うにはどうすればいいのか……。身体に流れる魔力を上手く溜めて放つ。凄く単純だが凄く難しい。常に流れる魔力をその場に溜め込むのは高等技術である。何回もやってみたがどうしても魔力が乱れる。
だけど、そう言って挑戦する事をやめたらそれこそ上達はしない。目の前に大きな壁、5日間という期間で破壊する事は容易い。こんな所では立ち止まれない。茨の道を歩くことなどどうということは無い。己の力を信じろ。
レブルは立ち上がる。そして、レブルは自分だけの武器を探す為に修行を開始した。
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レブルが大きな壁と対面している頃、ミリアもまた大きな壁にぶつかっていた。
現在ウィズダムは8割方完成していた。残りの2割が大きな壁になるとは思ってもいなかった。残りの2割、それはウィズダムの内部にある2つの動力であった。
ウィズダムの大きさは横幅6m、縦幅3mと大きめであり、さらにもしもの時の為に本体を覆う巨大な防護壁があるため、実際にはもう少し大きい。
本体が巨大でさらに装備の精製時に大量のエネルギーを使用する為、動力炉を2つ用意する必要があった。
動力炉は完全に秘密となっており、唯一言えるのはサイレンスにも同じ動力炉が使用されている。2つの動力炉のエネルギーバランスが整わなく、片方の動力炉がエネルギーを多く出し過ぎてしまう。
現在、動力炉に追加のパーツを取り付けて安定させるという案が出たのだが、それだと動力炉の内部構造を変える必要があったため、現在、完全な八方塞がりである。
安定させるとしたら、魔力が大きい者が2つの動力炉に直接、魔力を流し込むしか方法が無い。この兵器を使うのには莫大な魔力を必要とする。この方法は現実的とは言えないであろう。
完成させるなら早い方がいい。いつ、帝国が攻撃してくるか、分かったもんじゃないから。帝国はサイレンス以外の新型兵器の実験をこの村でやろうとしている。それに抵抗出来る軍隊を整える必要がある。
レブルのおかげでこの村の軍隊の装備は整いつつあった。村では鉱石類が圧倒的に不足していたが、レブルの賢者の石によって、 鉄が大量に手に入り、軍隊には鉄製の装備が与えられた。獣人や魔物の基本的な能力を考えると、十分に帝国軍と張り合えるであろう。
エースクラスの装備の精製にはやはり、この兵器が必要となってくる。一刻も早く、この兵器を完成させる必要がある。レブルが村に戻る前には絶対に完成させてたい。
ミリアがウィズダムについて頭を悩ませていた頃、帝国軍の指揮官達によってとある作戦が立案されていた。それを知るのはもう少し後であろう。
第1章12話は20時に投稿します。