第1章9話
レブルは起きる。どうやら錬金工房の中で何もかけずに寝ていた様だ。呑気に欠伸をする。放置した賢者の石を見ると、光が消えている。その代わりに空いたスペースに大量の精錬された鉄が置いてある。
取り敢えず、それをウェストポーチに入れて、錬金工房から出る。
外に出るとまだ宴の準備をしていた。村の中心に大きめの木が積み上げられていた。キャンプファイヤーの準備が出来ているようだ。
キャンプファイヤーの近くに屋台らしき物があった。そこには巨大な肉塊があり、大きな中華鍋みたいな物が用意されている。中華鍋の下には赤いクリスタルが置かれている。地面で大きな包丁を研いでいる大鬼がいる。彼の名前はカゲロウ。村で少ない料理人である。
俺はカゲロウに話かける。
「よう! 今日は料理するのか?」
カゲロウは研ぐのをやめて答えてくれる。
「レブルの旦那じゃねえか!! ああ、今日はワニの肉を調理させてもらうぜ!! まあ、仕込みがまだ終わっていないから、また来てくれ!!」
どうやら仕込みの状態だったらしい。よくよく見ると肉塊に乾燥させた草がある。この村ではハーブを生産しているらしい。まだ、ハーブ農場に行ったこと無い為、規模は分からないが、そこそこ出回っているため、今度見に行くことにしよう。
さて、完全に暇になった。少し起きるのが早い気がしたが、今戻ってもいかんし………。どうすればいい? そんな事を考えていると脳に直接声が聞こえる。
『ご主人。例の軍人が目を覚ましました。どうなされますか?』
どうやらコクロウからの念話だったらしい。起きたいるのなら丁度いい暇つぶしになるかも知れない。
「分かった。今すぐそこに向かう。診療所でいいな?」
俺がそう言うとコクロウがすぐに答えてくれる。
『了解しました。ご主人』
俺は目を閉じる。そして、行きたい所にワープするイメージをする。
結果は……成功だ。ちゃんと部屋の前にワープ出来ている。壁に突っ込んだら洒落にならないからな。
扉を開ける。そこには、コクロウと目を覚ました軍人いや、ミリアという女性であった。
「すみません。ここが何処か教えてくれるとありがたいのですが……」
意外と冷静であった。焦りや混乱しているという様子が全くない。少し不気味にも思える。この世界に来てから、俺は混乱しっぱなしだと言うのに……。取り敢えず、ここが何処かというのを言おう。
「ここはディバイン樹海にある、獣人の村だ」
レブルはそう言う。レブルが獣人と言ったところで説得力皆無なのは分かりきっているがそう言うしか無かったのだ。この村の名前とか知らないからどう言えばいいのか分からないのだ。
そう言った瞬間であった。彼女の表情が少し変わった気がした。何か、希望を見つけたのか、そんな感じの顔であった。
「ということは貴方が……。お願いします。私の願いを聞いてください!!」
レブルは知ることになる。自分達が召喚された理由。人間と魔人の戦争がどれだけ大きいのかを。
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レブルはミリアの話を聞いて驚いた。自律型広範囲殲滅魔力兵器サイレンスという恐ろしい兵器が使わなければいけない戦争だと言うことに。
サイレンス。それは沈黙を表す言葉。もしかしたら、帝国は他の国全てを沈黙させて、この世界の頂点に立とうとしているのかも知れない。
帝国は1番、技術力が発達した国だ。魔力工学を利用した兵器は妖精ですら作ることが難しい。
帝国はその魔力工学で強力な軍隊を作り上げている。量産されている兵器がエレクトロンという兵器だけらしいが、エースには専用の兵器が与えられているという事は、使いにくいと考えられるだろう。
そして、ミリアは帝国でも優秀な技術者だったらしい。
まあ、色々と混乱してきた。激化していないだけで前線の部分では小規模ながら戦いも起きている。戦争が激化すればここも戦争の炎に包まれるかも知れない。さらに近い位置にある帝国が恐ろしい兵器を抱えている。うかうかしているとヤバイ事になるかも知れない。早急に軍隊を強化しなければならない。
村の事ばかり気にしてはいけない。自分もそろそろ、戦える力を身に付けないといけない。ロベルトの部屋で手に入れたバスターソードの性能だが、切れ味が凄まじく良くて、超頑丈な剣らしい。ナイフも同じ性能らしい。
個人的には魔力兵器というものが欲しい。とミリアに言ってみたら……。
「今の私では作れません。この兵器が完成すれば………」
ミリアがそう言ってイヤリングを指で弾く。イヤリングから少し大きめのファイルが出て来る。………普通は驚く所だけど、何かうん、どうでも良くなってきた。
俺はファイルを受け取り、中身を見る。それは1つの兵器の設計図であった。
この兵器の名前はウィズダムと言うらしい。この兵器の外見は巨大な鉄の卵と言うしか他ない。そして、内部にはあらゆる種類の素材が詰まっており、溶接炉や冷却水、型などが内部にある。さらにこの兵器は、世界に満ち溢れる魔力をエネルギー源として動いている為、魔力の面での心配はいらない。これで何をするのかと言うと、これで魔力兵器を作る事である。
この兵器の中枢部に学習する鉱石、インテンション鉱石がある。この鉱石はAIみたいな役割を持っており、その人物に応じた最適の兵器の設計をする事が出来る。
インテンション鉱石くらいなら賢者の石で量産出来るが問題は本体の作製と素材だ。鉱石系の素材は賢者の石でなんとでもなるが、他の素材はそうはいかない。
本体も激しい熱変動にも対応できる素材が必要となる。さらに本体に攻撃があったとしてもそれに耐える頑丈な素材で覆う必要がある。つまり、むき出しでは無くて、もう1つ、防護壁を作る必要がある。それを作るのにもそれなりの設備が必要とする。はっきり言って、この村でウィズダムを作るのは不可能に近いであろう。
だけど、この兵器さえ、出来ればエースクラスの武器が作れる様になる。アゾットばかりにも仕事させる訳にはいかない。
レブルが設計図を見て、色々と考えている時であった。扉が何者かによってノックされる。
第1章10話は明日投稿します。