第1章6話
倒れていた女性。黒をベースに所々が赤色の軍服を着て、帽子も被っている。下は少し長めのスカートでニーソックスを履いている。髪は銀色に近い。顔は………うん、可愛い方であろう。
外見の事なんて考えていないで取り敢えず、大丈夫かどうかを見る。
レブルは手首の脈を触り、脈を計る。脈はしっかりとしている。息も大丈夫。だが、魔力が圧倒的に不足している。近くに来て分かったけど、かなり小さい。今にも消えそうな感じがする。
「コクロウ、お前は一足先に村に戻って、ロウシを探しておいてくれ。俺は彼女を村まで運ぶ」
「了解しました。ご主人」
俺はコクロウに指示を出す。コクロウは瞬間移動を使って、村に行く。俺は彼女を背負う。整備された道に近い。魔物に襲われなかったのはそのせいか………。俺は歩いて村の方に向かった。
何故、瞬間移動を使わないのかって? それはな………。瞬間移動の使い方を知らないからだ。瞬間移動を使えって言われても、どんな感じか想像もつかない。後からロベルトの本を読んでおくか………。
村に着くとロウシとコクロウが待っていた。
「コクロウから聞いていたとは言え、見てみるとかなり重症ですな………。レブル様。診療所で準備が出来ております。先ずはそこに彼女を運んでください」
ロウシはレブルに向かって言う。レブルは頷くと診療所に向かった。その途中でレブルは何か、嫌な予感がした。
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「何ですか!? この作戦は!!」
軍服を着た女性が机に向かって書類を投げる。ここは帝国軍の会議室。椅子に座っているのは軍の最高指揮官達である。その中の一人が言う。
「この作戦は我が軍の最新の兵器の実験だが、何か問題があるのか?」
女性はそれに声を大にして答える。
「問題ありまくりですよ!! 兵器の実験に獣人達の村を使うなんて正気ですか!?」
作戦書類に書かれていた物。それは、最新の兵器の実験に獣人の村を使うという物であった。そんな事をすれば村は焼け野原になるであろう。
「まあ、落ち着きたまえミリア君。これはもう既に決定している。今更取り下げる訳にはいかんよ」
女性……いやミリアは奥歯を食いしばる。ただでさえ、村の獣人達を奴隷同様の扱いをしているのに、さらに村を焼き払うなんて、狂っている。これでは獣人達があんまりだ。
彼女が悔しそうな顔をしていると、それに追撃をかけるかの様に再び話が始まる。
「あそこにいるのはなあ。妖精以外ゴミなんだよ。いくら我々に従ってくれるとは言え、あそこには魔物もいる。妖精は高い技術力を持つ。何、妖精は生かすさ。それ以外は死だ」
悔しそうな顔は怒りへと変貌した。ミリアは拳を握る。だが、今の自分には何も出来ない。立場的にも、自身の能力的にもだ。ミリアは部屋から出る。
ミリアが自分の部屋に戻ると、机の上に書類が置かれていた。報告書のようだ。ミリアはため息をつきながら報告書を読む。
どうやら獣人の村で何者かが帝国軍を攻撃したようだ。強大な魔力と高い戦闘力を保持しており、危険と書かれている。どうやら、食料の徴収は失敗したようだ。頭痛の種が増えると思い彼女はため息をつく。ミリアは立場としては指揮官という立場にあり、部下が失敗すると部下の処分とか云々考えないといけない為、かなり苦労する立場である。
ミリアはその部隊の処分を決めて、ベッドに寝転がる。時刻は昼頃で普通の兵士は休んでいる暇など無いが、指揮官達はそうでも無い。というか、普通の日は退屈である。だけど、彼女は少し気になった事が報告書に書いてあった。そう、危険と書かれた者の事だ。
ミリアは本棚から書類のはさまったファイルを取り出す。そこには魔力を使用した、新型兵器について書かれている。
帝国は他の国と違って技術についてはかなり発展しており、少ない魔力で強力な攻撃が出来る兵器が多く存在する。帝国の技術力の高い理由は国の場所が大きく関係している。
帝国はヘドロン鉱山地帯という巨大な鉱山地帯が比較的近くにあり、鉱山地帯のほんの一部を領土としている。(ちなみにそれ以外は魔王や魔人が領土としている)ヘドロン鉱山地帯では希少な鉱物が多く取れ、また魔力を持った鉱石、魔力石が多く取れる事で有名である。
魔力石は魔力を内包している為、強力な武器を作る時には必ずと言っていいほど使う素材である。帝国はその魔力石を研究し、兵器に使っている。
勿論、帝国の技術力を支えているのはそれだけではない。帝国は妖精だけが持つ特殊な技術である魔力工学を研究し尽くしており、それを最大限に利用することで技術力を上げている。
ミリアは魔力工学を研究しており、帝国軍の技術者とは太いパイプを築いており、新型兵器の書類なども多く貰っている。
新型兵器はどれも変わった物が多く、少ない魔力で強力な攻撃を繰り出せるのが魔力工学で作り上げる兵器のテーマとなっているが、新型兵器の中には、多くの魔力を必要とするが、思考で動く遠隔操作兵器などがあったり、魔法を吸収する盾などがある。新型兵器は魔力の消費が激しい物が多くなっている。
ベッドに転がりながら、新型兵器の設計図を見ていた。もし、これを扱える者があの村に居たら……と思う。
そんな事を考えていたら、強烈な睡魔に襲われる。日々の疲れが原因だろう。目を開けるのも辛くなっている。
ミリアは睡魔に負けて、ベッドの上で寝てしまう。
第1章7話は昼か夕方に投稿します