今すぐ死にたい。
少しだけ同性愛表現があります。
少年は昔から周りの人と違っていた。
少年はは男だが女であった。
でも、周り人たちは男か女だった。
少年はは好きな人を性別で決めたりしなかった。
けれど、周りの人たちは自分とは違う性別を選んだ。
少年の両親は自分の子を嫌った。
中学校に入ったばかりの時、水泳の授業で脱いであった隣の席の男の子のパンツを盗んだ少年が、そのパンツを家で堪能しているところを、母親に目撃された。
「気持ちが悪いから死んでくれ。」
父親も母親も言った。
少年は、両親が自分のことを気味悪がっているのは知っていた。
だけど、どうしようもないくらい傷ついた。
少年は、親の言うとおり死のうと思った。
部屋にあったカッターナイフを、深く深く、自分の手首に押しつけた。
高校へあがった頃、少年は交際していた女の子に
「気持ち悪い。変態。」
とののしられてフられた。
少年は深く傷ついた。
初めて愛し合った少女に拒絶されたのが悲しかった。
これからもずっと一緒にいれると思っていた少年の心は、ぽっかりと穴があいたようだった。
少年は、母親がタンスにしまっている睡眠薬を大量に持ち出して、それを一気に口に含んだ。
高校二年生になった時、少年は同級生の男の子から酷いイジメを受けるようになった。
友達のいない少年を助ける者などもちろんなく、少年を嫌っている両親も助けてはくれなかった。
最初は使いっぱしりにされたり、暴力を受けるだけだった彼は、その内性的暴力も受けるようになった。
少年は男受けする顔立ちだったのだ。
ある日、少年がいつものようにイジメられていると、三年の容姿端麗な先輩が手を差し伸べた。
少年はその手をとった。
その先輩は、学校では有名な人で、その日からイジメはパタリと止んだ。
少年は先輩と連むようになり、そしてすぐに恋心を抱いた。
二人は愛し合い、何度も体を重ねた。
しかし、少年は知ってしまった。
自分をイジメていた同級生と先輩は仲間で、先輩は自分を体だけの関係としか思っていないということを。
少年は胸が張り裂けそうだった。
涙は止まらなかった。
消えていなくなりたかった。
階段を駆け上がり、少年は屋上のフェンスを飛び越えた。
就職して何年も経ち、彼は35歳になった。
女の人と恋に落ち、結婚した彼には小学生になる子供もいた。
そんな時、彼はリストラを言い渡された。
奥さんは専業主婦であった。
教育費で貯金もほとんどない彼は、絶望した。
一体これからどうやって生活していけば良いんだ…。
リストラをされたと奥さんに告げた次の日、奥さんも子供も居なくなった部屋の机の上には、離婚届が置いてあった。
彼を空虚感が襲った。
一生愛し合うと誓った妻に捨てられ、愛おしい我が子にも二度と会えない?
彼はロープを吊し、首に輪っかを通した。
その後、両親も死に絶え、85歳になった彼は、老衰でこの世を発った。
結局少年は、どんなに生きることが辛くても怖くて死ねない。
そんなことを繰り返して、老衰で静かに息を引き取ったっていうお話。
辛いこととかがあっても、いつか幸せな時がくるって祈って生きたらいいと思って。