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ドラゴンとの再会を

おっさん視点です!前との話を読み返すと矛盾を発見してしまい、若干修正しています。

金属が床石とぶつかるけたたましい音で俺は目を覚ました。

しょちょー、またなんかやらかしたんですか?それともまたおうじがだっそうしてきたんですかー?とか寝ぼけた頭で考えていると、その音は俺の仮眠室の前で止まった。


力強いノック音と共に、勇ましい声が聞こえた。


「ミケーレ副所長、突然で申し訳ないが、話がある。起きてくれないか?」


俺はその声に飛び起きた。

忘れるはずもない。騎士団の鬼団長、ジャコモ殿下の声だ。


おれ、一体、なにしたんだろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


再び、カシマール雪原を走る。

北の岩場まで、国から真っ直ぐ行けば2時間半、と言ったところか。

目的地は、やっと少しずつ姿が大きくなって来たところだ。


ちら、と後ろを見れば無口な護衛件、監視役の騎士団が二人。


鈍く光を返すその全身鎧は、その名もマホウヨワメイルという、我が研究所の試作品だ。

そのふざけたネーミングの割になかなか強力で、火で炙られても暖かい位にしか感じないという優れ物なのだが、如何せん消費魔力が多い。

故に長時間の使用は出来ないと言う欠点がある為、改良中だ。


と言うか、何で試作品の鎧着てるんだこの人達。所長の実験?

…まぁ、あの人ならやりかねない。あの人も立派な変態だし。

それを着て魔動ソリまで走らせちゃうこの人達の精神は化け物だろう。

一介の魔術師だってそんな無茶なことは出来ないはず。

それこそ、かの大魔女の血をひいた、王族でもなければ…


と、そうこう考えている内に大分近くまで来ていたようだ。

俺はゆっくりとソリを岩場に付け、足場に降り、用意してきた物を下ろす。

…願わくば、あのドラゴンが見つかりませんように…。

そうは思うが、どこかであの強大な存在との再会を期待している自分も居て、なんだか可笑しかった。


なぜか上陸にまごついている騎士団の2名をおろしながら、私は、鱗に宿る魔力が蠢いているのを気にしていた。




それから少しして、魔物に気をつけつつ隠れながら歩を進めていく。

幸い見張りのコボルトにも見つかることはなく、順調だ。


俺は鱗を取り出す。やはり、鱗の魔力が強くなっている。

もしかしたら、鱗は本体と共鳴しているのかも知れない。


そう思いながらたどり着いた先に、そのねぐらは存在していた。


所々透明な、氷のねぐらだった。

このカシマール雪原の雪を溶かして固めるとは、なんと頭の良いことだろう。

昨日闇の中で見た、美しいグラデーションがねぐらの透明なところから見え隠れしている。

と、中でそれが蠢いた。我々が近づいた事に気が付いたのかも知れない。


その時だった。


ドラゴンが口を開けて、そのねぐらからおもむろに首を出したのだ。

俺も騎士団の二人組もこれには驚いてしまって、声を上げることも出来なかった。


食われる!?と思ったが、目を閉じて息を思い切り吸い込んだドラゴンは、次の瞬間目を見開いてその巨体に見合わない早さで首を引っ込めた。

中で、何か固い物を打ち付けたような音が聞こえ、短く悲鳴?が上がる。


…もしかして、驚いて頭でもぶつけたのか?


どうやら、相手もたまたま首を出しただけだったらしい。

何だか相手は厳ついドラゴンだというのに何となく微笑ましい気分になった。


少しの間、ドラゴンはねぐらの透明な部分から此方をうかがっていたが、その目線が俺を見てゆっくりとねぐらから姿を現す。

後ろの二人は警戒をするが、俺は気にせず持ってきた麻袋をひっくり返して中身を出す。


それは、俺からのドラゴンへの貢ぎ品、食料だ。

野菜に、魚、肉とどの好みでも対応できるように持ってきたが、ドラゴンは果たしてどれを好むのだろう?

俺の心はまるで少年に戻ったかのように期待に満ちていた。

きっと、ドラゴンの好みを知るのは世界で俺が初めてだろう!

そう思えば思うほど期待に胸が膨らむ。


しかし、予想に反して、ドラゴンは訝しげな顔をして後ずさる。

目は食べ物を見るが、それには警戒の色が見える。

何か、思うところがあるのだろうか?

もしや、このドラゴンは温和しいが、此方のことは余り良く思っていないのだろうか?

その可能性に気付いたとたん、俺は自分が驚くほど酷くがっかりしたのを感じた。

何処からか、自分の事だけは信じて欲しい、と意味の分からない考えまで出てくる始末。俺は、このドラゴンにあってから何かおかしくしてしまったのだろうか?


ふと、後ろから金属が軽くぶつかる音がする。

そちらを見ると、騎士団の片方が剣に手をかけている。

「ま、まってくれ!」

あまりドラゴンの態度は好ましくないと判断されたのだろうか、今にも切りかかりそうなそいつに俺は待ったをかける。

確かに今は温和しくしているが、相手は国一つ簡単に滅ぼせる様な存在だ。

下手に手を挙げると本当に危ないのは此方側だ。そう勝手にいいわけをしながら、慌てて行動をする。


俺はとりあえずこの中で一番高級な食材である野菜をドラゴンに捧げた。

どうか、これを食べて此方が敵ではないことを知って欲しい。この地域で植物はとても貴重なものだから、きっと相手にも誠意が伝わるはず…。

しかし、その焦る気持ちとは裏腹に、ドラゴンは匂いを少し嗅いで、勢いよく鼻息を吹いた。

…鼻息で吹くほど気に入らない、のか?


俺は焦ったが、ふと、鱗のことを思い出した。

一か八か片手で鱗を取り出し見せると、訝しげだった表情が変わった気がした。

とても微妙な変化ではあったが、少し、考えるように小首を傾げる。

これでどうか、此方を信じてくれ…!


そう願ったその時、ゆっくりとドラゴンはこの手から野菜を食べた。

豪快に、大きな鰐の化け物のような口で、それでも器用に俺の手を噛むことなくそれを平らげた後、下に置いてあった他の食材にも口を付けた。

俺は内心舞い上がった。

ドラゴンが、この絶対的な存在が俺を信じて食べ物を口にしてくれたのだ!

しかも、紛れもない、この手から!!


俺は喜びを隠せず、夢中になって食べているドラゴンのごつごつした角を撫でると、後ろの騎士団員に言った。

「…見て下さい。このドラゴンは私の手から、しかも、手を傷つけない様に気を使いながら食べています。

…やはり、このドラゴンはとても穏和で、優しい。余程の事をしなければ、害は無いでしょう。」


やっぱり、このドラゴンは悪い奴じゃない。

そう確信して、再びドラゴンに目を向けると、ドラゴンは火を噴いて肉を炙っていた。

俺は信じられなかった。

教え込まれたならまだしも、動物や魔物に分類される野生の生物が、火を使って調理をしているのだから。


もしかして、ドラゴンというのは思った以上に賢いのだろうか?

俺はまた新しい発見に嬉しくなり、その鼻を撫でた。



その事を思わず伝えようと俺が振り返ると、騎士団員は剣に手を携えていた方は腕を組み、もう一人はおもむろに頭の甲を掴んでいた。


甲を掴んでいた?


以外にもあっさりとはずれたその下から出てきたその顔は酷く可愛らしい。

一見女性にも見えるその人には、酷く見覚えがあって…。


俺は頭から血が下がり、冷たくなるのを感じた。

その人は、黒い癖毛の髪に、青い澄んだ目をした、…脱走王子、ギュスターヴォ様だった。


「ホントに温和しいんだね!僕もさわって良い!?」

キラキラとした目、と言う物が本当にあるなら、この目のことを言うのかも知れない…。それほどに期待に満ちた目をしていた。

その言葉を言うやいなや、ドラゴンに突撃していくその姿に俺は何も言えなくなってしまった。


氷のように固まっている俺の耳に、いつもの、聞き慣れた引き笑いが入ってくる。

それは先ほど剣に手を掛けていた方の騎士団員だった。彼はさも楽しそうにねっとりと話し始める。

「ミケーレ君、そんなに驚いてくれるな。可愛い甥が、どうしてもドラゴンに会いたい、と、言って聞かなくてねぇ…。悪いけど、中身を入れ替わって貰ったのさ…。」


あぁ、納得した。だから、マホウヨワメイルを着ていて、かつ長時間でも大丈夫だったんだな…。

大魔女の直系の、王子と所長だもんなぁ…。



向こうではしゃぐギュスターヴォ王子の声が岩肌に木霊して、何故か、空しくなった。


こんな王族ばかりで、本当に大丈夫なのだろうか、この国。

とりあえず、おっさんはミケーレさんと言います。髭です。

おっさんにしてみると、なんかドラゴンに出会ったら、王族がいっぱい出てきたー!!?ってかんじです。


人物を簡単に紹介すると、所長は変態で、ミケーレは隠れ変態で、ギュスターヴォはさわやかな変態で、ジャコモはむっつりスケベです。


そんなこんなで、次はドラ乙視点です。

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