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勉強

お久しぶりです!

今回は変態ちゃん視点になります!


城門にて、ドラゴンと世話係二人を見送る。

バカみたいに手を振って、「おみやげ待ってるねー!!」なんてバカっぽく言ってみる。本当は特に期待はしていない。


まぁ、ついて行けないのははじめからわかっていたし、ついて行く理由もない。

あのドラゴン、表向きは野生のものだからいきなり王族、しかもこの国の後継者をなにがあるか分からない散歩に連れて行くわけにはいかない。アレがいきなり暴れれば、只ではすまないのだから。


…もっとも、僕にしてみればあいつの人間としての自尊心が傷つくだけで、暴れるとは思えない。

アレは意外と繊細で、他人を気遣おうとしてもうまく出来ずにおろおろしてる様な奴なのだから。


まぁ、上手く行けば早くてあと2~3回で一緒に城下を歩けるだろう。


そう思って僕は反対側へと踵を返し、僕は図書室に向かう。

あそこは本が沢山あるので、僕は大体あそこで授業を受ける。

本当はそれ相応の場所の方が良いのかも知れないが…あそこは本棚が無数にあって、隙を見て隠れられるのが利点だ。


…隠れる、なんて言うと聞こえは悪いが、仕方がない。

何せ僕の最大の敵の片棒を担ぐような奴との授業なのだから。



大きな扉をぐい、と押せば、いつも通りにドアは開いてしまう。

いっそ重くて開かなければいいのに、と子供のような事を思いながら、扉の奥の教師の驚愕する顔が目に入る。

…何、その顔。そんなに僕がここに来るの珍しい?


教師(名前なんだっけ。あんまり会わないから忘れた)は急いだ風に僕に駆け寄り、腕を掴むとあっという間にテーブルに引っ張られる。


「ギュスターヴォ様!!今日という今日は授業を受けていただきますよ!!」

「いたいいたい!今日は逃げないから引っ張らないでよぉっ!」


鬼のような形相だ。まぁ、この人の授業って別に受ける必要性が感じられないからさぼってる感は否めないけれど。


王子の腕を引っ張るなんて、普通は無礼な事だが、普段の僕の態度が原因なので、そこは何も言えない。


「わーかったから!!おじさん、腕はなして!!痛い!!」

「おじ…っ!?…全く、王子は…!!」


また目をつり上げて怒声を上げようとする教師(年なんだからそんなに怒ったら身体に悪いよ?)に、「アウレリオ先生、」と幾分か低い声がかかる。

僕は反射的にそいつを睨みつける。


ニクスの王族とは違う、色素の薄い銀の髪と、年上とはいえ酷く大きな背丈。

常夜の国、ルナの特徴を濃く受け継いでいる。


「こいつに怒っても馬に説教をするようなものです。それよりも、授業を始めませんか?」

「お、おぉ、グリゴリー様。…そうですな、グリゴリー様の言うとおりかも知れませんな。

……では、気を取り直して始めましょうか。」


そう言って渋い顔で教師(名前、アウレリオだったか)は僕たちの机の前に立つ。

僕は指定されたイスに座り、紙を広げる。

…まぁ、大体知ってることだから真新しいことがなければそのままにするつもり。貴重な紙の無駄。

それならドラゴンの絵を描いた方がずっとましだ。


僕がそんなことを考えなが意味もなく足をぷらぷらと動かしていると、教師(アウ...レリオだっけ?覚えにくい)が僕達の前に立って資料を広げる。


「今日はギュスターヴォ様がいらっしゃいますからな、この国の歴史の基礎を復習してから、それから本日の授業の太陽の獣信仰と、昔の教会の役割をお話いたしましょう。」


...歴史とか凄い今更な感じが否めないのだけれど、...まぁたまには付き合うか...ユミコ祭り近いし、お父様に変な報告あげられたら困るし。


「では、ギュスターヴォ様、この国の興りは何だったか覚えておりますかな?」

「んーとね、魔王が勇者を倒したのがはじまり!」

「バカか、逆だ。魔王が勇者を倒したら世界が滅びていただろうが。」

「えー」


知ってるよ、さすがにわざとだよ。真に受けるなよ。

そうは思うものの、こいつの油断を誘うためでもあるので突っ込まないでおこう。



そう、窓から少し遠くを見つめ、教師(アウ...なんちゃら先生?)達の話を概ね聞き流す。

成り立ちだの当時の王様が勇者だのとかそんな内容なので特に書き記すこともない。



と、僕が上の空であるのに気づいたんだろう、教師(...なに先生だっけ)が僕に話しかける。

僕は別に聞き流しているだけで、聞いてない訳じゃないんだけどね。


「では、この国の宗教である太陽の獣信仰は大体何年前に興ったのかはご存じですかな」

「それは」

「250、いや、300年前、ですよね、先生。」


僕が答えようとすると、グリゴリーが横から答えてくる。


...いや、知ってるし。そんな得意気な顔しないでよその位で。本当うざいなこいつ。


でも、教師は僕が答えられなかったと思ったようで、グリゴリーに笑顔を向けた。


「さすがはグリゴリー様。その通りでございます。

...ギュスターヴォ様も見習わなくてはなりませんぞ。」


さすがに頭にきたので言葉を遮られただけだと言おうかと思ったが、こっそりグリゴリーが「この国の歴史は節目にあたるような出来事は大体キリが良いからそれっぽい年数を言っとけば大体当たるぞ」などとアホ丸出しなことを囁いてくるので僕の怒りはすぐに鎮火した。


そもそも歴史っても500年位しかないのにあてずっぽうはないだろ、それにこの国の宗教は起こりは妖精歴700年でも、本格的に権力を持ち始めたのはそれからずっと後のことだし。


「この宗教は元々は王家とも密接な関係をもち...」

崇拝され過ぎて王家が危なくなったんでしょ、知ってるよ。

150年前に魔法の復旧と共にその魔法を支持することでちゃっかり王家の権力を復活させて、邪法だと凶弾した宗教家を黙らせて、結果宗教は権力を剥奪されて概念に戻った、って流れだったと思う。


そもそも太陽の獣自身も実は魔物とそう変わらず、魔法を駆使していたって話だしね。

...そう思うとこの国、ユミコ以前にも魔法に支えられて生きてきたんだな。...今度そっちも調べてみよ...「何をぼーっとしておられるのですかギュスターヴォ様!」...うるさいな。


「まったく...少しは勤勉なグリゴリー様を見習ったらいかがなのですか!」

そう目くじらをたてる教師(なんだっけなまえ。目くじら太郎?)は困ったように「なにか気になることがあれば質問してください」と言った。

...どうやら興味がないのは伝わっているらしい。

興味のあることからやっていこう、という事だろう。


じゃあ、せっかくこの国のそもそもの起こりの話が出たのだから、ついでに先生はどう思っているのかを聞いてみよう。


「じゃあ、どうして勇者は魔王の城なんかに住もうと思ったんですか?」


正確に言うと、どうしてこの大陸に、だ。

まぁ曖昧な聞き方だけれど、先生って言うくらいだし、持論の一つくらい...


「それは学者の間では“自らの力の誇示”と言う説が有力ですな。」


...話の鵜呑み?いや、聞き方が悪かっただけか。教師という立場上、下手に曖昧なことを教えるわけにはいかないものね。


グリゴリーにはバカなやつ、と思わせておかないといけないから、言葉にも制限があるのもあるし、深くは聞かないでおこう。


もっとも、僕はそうじゃないと思う。

勇者はたぶん、この大陸になにか求めるものがあったんだ、きっと。じゃないとこんな寒くて恵まれない土地になんて住みたくなんて無いだろう。


そう、この国は恵まれない。


僕は何となく聞いてみる。


「この国は、大魔女ユミコが現れるまでは他の国に狙われた事はあったんですか?」

「馬鹿だなお前、この国は完全平和主義だぞ?」


当然、とグリゴリーはそう呆れたように言った。

そう、誰もが知る通り、今の今までこの国はまともに戦争何てしたこともなければ、狙われたこともほとんどない。


でもそれは平和主義だからなんかじゃない、この国を、誰も欲しがらないだけだ。

情けないからそう教えないだけで、本当は他国を攻める余裕すらこの国にはないだけだ。


この国は魔法が発達する前は、漁業が主な産業だった。何故ならそれしかまともに捕れないから。


植物が芽吹くのは一年のうちたった2ヶ月。

そんな状態ではまともに農業なんてできやしないから、この国で果物や野菜は本当に貴重品だ。


そもそも太陽の獣信仰の起こりも、ざっくり言うと太陽の獣が身を削って年中消えない炎を灯し、今で言うハウス栽培を可能にした、ってことだしね。


それを除くと、冬を越せる木の実をいかに2ヶ月の間に溜め込めるかが冬を越すポイントというギリギリの環境に加え、城下町の側の氷の海岸を開く以前にはカシマール雪原をはさんだ向こう側にしか船をつけられる場所がなく、魚や輸入品を運ぶのにも命の危険が大きかったこの国は、国民を奴隷にしようと一攻めてきた国(たしかそれもルナの国だ)の兵士は大雪原に埋まって戦う前に逃げ帰った程だ。


ちなみに余談だけれど、その時についたあだ名が“カシマール”...死の雪原、というわけだ。


そんな不毛の地に、そもそも魔王を倒した功労者たる勇者はなぜわざわざ移り住んだのか?


だって、僕らの起源ははっきりしていて、暖かい地方の“カロル”の国が発祥だ。

何故なら、そこは勇者達の出身地として名高く、この国はカロルの姉妹国としての援助がなければ、とっくに飢えて全滅していただろう。


豊潤な国の出身なのに、わざわざこの大陸に移り住む意味がわからない。

それも、姉妹国にあたるカロルに多大な迷惑をかけてまで。


先の話にでていたキリの良すぎる歴史といい、この国は、王族たる僕らですら知らない何かがあるような...

...そんな気がしてならない。


でもこれは憶測に過ぎないし、この国は今魔法の発展で成り立ち、その研究に忙しい。


未来に進んでいる時に、過去を掘り出しているような余裕はこの国にはない。

やっと多大な恩義を姉妹国たるカロルに返せるときが来たのだから今は大いに魔法の研究をすべきだ。


...過去の真実を求めるにはあまりに資料が少なく、人工少ないくせに口伝えの話ですらまとめきれていないし、大体、魔法の研究者であっても、大魔女ユミコの手記ですら暗号が複雑すぎて多くの研究者が首をひねっている状態なのだから、情けない。


かく言う僕もユミコの手記の解読に手を焼いているのだけれど、未だに解読は進んでいない。

というか、あれは世界中どこを探しても似たような系列のない、“脈絡もなくどこからか降って湧いたような文字列”だ。


ある程度の規則性はわかっても、そもそもその文が何について書かれているかがわからないので完全にお手上げだ。


...話によれば、王族の秘密の言葉を文章で表したもの、という話が有力だが...


...っと、いけない。また考え込んでしまった。まぁいいや、大方知っている事の反芻であることは変わらないのだし聞いてなくても問題ない。


大体こんなほとんどを飢えで過ごした国の発展と言えば、妖精歴500年の魔王出現、550年の勇者による魔王の討伐、700年の飢えを癒すための太陽の獣信仰、850年のユミコによる魔法の発展による王族の権力の復活、900年の他の国からの侵攻への対処、..位しか大事なことなんてないし、停滞していることの多い常冬の国ニクスの歴史は反芻してまで学ぶほど決して多くない。


まぁこれからを生きるためには歴史は確かに大事なんだけどさ。

それよりユミコの手記の解読をして魔法の発展に貢献するか、もしくは他の国の歴史を学んでこれからの発展に貢献した方がよっぽど有意義な気もする。


...もっとも、僕のせいでそう言う初歩的な学習になっているのも重々承知ではあるのだけれど。


「せんせー、ユミコの手記の解読って進んでます?」

「藪から棒にどうしましたか、ギュスターヴォ様」

「ギュス、お前いつもながら脈絡無さすぎるぞ。」

「そうです、そんなことより、太陽の獣信仰における司祭の...」


あー、駄目だ。今日は良い情報も得られそうもないや。


そう思ってやかましいグリゴリーとなんたら先生(名前なんだっけやかまし太郎?)の声を半分聞き流して外を見る。


ドラゴンは一体どうしているだろうか。

久しぶりの外だ。あの雪原での様に自由に飛び回ったりしているのだろうか?


ドラゴンであれば、簡単に雲の上に行けるかも知れないな。本当に天使様がいるのか見てみたいものだ。


そんな下らないことを、考えて僕は彼らの帰還を待つことにした。


次は恐らくおっさんかどら乙視点になるかと思います!

...話がうまくまとめられると良いのですが...

頑張ります!

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