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ペットは大切にしてね。

ドラ乙です!

私が此処に来てからたぶん4日程。

私は元気です、先生。

そして暇です、おっさん。


どうか、私を散歩に連れて行ってくれないでしょうか?

羽が鈍ります。飛べなくなります。寧ろお腹の脂肪がヤバいと思います。

このままだと、ヘビードラゴンも夢じゃないね!畜生!


そうは思うけど、昨日の様にドアから勝手に出ようとは思わない。

昨日は、それで大変な目にあった…。

アレは凄かった。ドアから出た瞬間あっちゅー間に廊下がフルメイルで溢れかえったものなぁ…なんて言うかホント、びっくりした…。


ちょっとした散歩のつもりだったんだけどなぁ…。まぁ、それだけドラゴンは警戒されてて、まだ信頼されてない、ってことかぁ。

やっぱアレか、ドラゴン飼うって事は、貴人が虎を飼うようなモノで、猛獣は飼い主以外にどんな危害を加えるか分かったもんじゃない、って事だなぁ。


ま、動物園の蛇だってガラス越しだから可愛いとか言えるものだよね。

そんなム○ゴローさんでもあるまいし。


そう思いながら、私はわしゃわしゃと体を拭かれている。

ドラゴンの癖に一日に一回はお風呂に入れてくれるという、破格の扱いだ。

…と言うかおっさんは私専属の飼育員さんになったらしい。

ちわ様も毎日お世話をしてくれるけれど、他の仕事も兼任しているのか一緒にいるのは殆どおっさんだった。


おっさんはホントに、なんて言うか優しい。

なんか、こう、そうだなぁ…世話焼きなお父さんみたいって言うのかな?

(うちのお父さんは仕事か競馬かパチンコをしているイメージしかないけどね。)


友達のお父さんの話を聞いて、一緒にゲームとかで遊んでるのとかいいなーって羨ましかったのをよく覚えてる。


あ、でも、お父さんがやってた競馬のゲームを見るのは好きだったなぁ。いつ怒られるかわかんなくて、後ろをチラチラ見ながらも毎日飽きずに見てたっけ。(一言も会話は無かったけど)


(何だかんだいって、うちも仲良かったんだろーな、あれ。

そういや、お母さんもお父さんは愛してくれない!とか言ってるけど、実際は浮気の一つもしないし、何だかんだ二人でゲームをしたりしているらしいし、…お父さんって、ツンデレ、なのかな。…お母さんはツンデレっていうかヤンデレだな


………

……あれ、私って変な所でサラブレッドじゃね?

うわぁぁあ!!いらないよ!!そんな萌え要素ーーー!!


ヤンデレとかツンデレとかって二次元だからこそ萌えるのに、リアルにそんな要素あっても萌えないよ!せめて天然くらいだよ許されるの!!)


ぽんぽん、と叩かれて、私はハッとした。

見ればおっさんが心配そうに此方を見上げていた。


いかんいかん、おっさんにいらん心配を掛けてしまった。

私は頭を振って、大丈夫ですよ、と言う意味を込めて胸を張った。

おっさんは少し心配そうな顔をしていたが、苦笑いをしながらも浴室のドアに私を誘導した。


…あー、おっさん、なんか悩んでるのかも。

そうは思うものの、言葉が通じないので私は彼の悩みを聞くことは出来なさそうだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


昼ご飯を変態ちゃんと食べているときだった。

いきなりドアがバン、と開いて意気揚々におっさんがキラキラした笑顔で駆け込んでくる。


私は驚いてドラゴン用に作られたお魚料理をポロ、と口から落としてしまったけれど、それはどうでも良い。

その手に持たれて居たのは綺麗な…


た、手綱、かなあれ。見たことあんまり無いんだけど、馬とかにつけるアレ、だと思う。


私は状況を飲み込めなくてそのまま固まってしまったが、急に隣から怖い声が聞こえてびっくりして隣のテーブルをみる。

変態ちゃんが、怖い顔で何かを言っている。しかも凄い低い声で。

男の子かとも思ってしまう程のその冷ややかな声は、普段の変態ちゃんからは想像もつかなくて本当にびっくりした。

それでも、おっさんが焦りながらも手綱?を片手に一生懸命説明をすると、見る間に変態ちゃんは表情を変えていった。

どうやら、変態ちゃんも納得したらしく、いつもの笑顔に戻る。

…なにを納得したのかは知らないけれど、最近若干変態ちゃんから腹黒いオーラを感じるのは何故だろう。


まぁ、いつもニコニコしてる人間の笑顔なんてのは羊の毛の様なもので、地肌は案外黒かったりするモノだ。

ま、世の中に悪い人なんていないのだから、良い人もいないんだろうね。


そう思って、若干話の行く末を気にしても仕方のない私は食事を再開した。


やや豪快に作られた魚料理は、結構おいしい。

あの日から私はドラゴン用の食事を作ってもらっているのだけれど…コレ、変態ちゃんの指示なのかな?

私が泣いている意味を、もしかしたら分かってるのかも。


彼女は、頭がいいのかな。

だったら手放しじゃ信用しない方が良いかも?


そう思って、私が彼女を見ると、にっこりと可愛い笑顔が返ってくる。

私は若干引いた笑いになってしまった。

まぁ、彼女がどうであれ、味方でいてくれるうちはそばに居ようか。

心は置かない方が良いけどね。


私は、ニコニコしている二人を後目に、食事を平らげた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


夜。

照明が数個のランプだけの暗い部屋。


窓を見れば、ここは随分城の上の方らしい、晴れてさえいれば見晴らしが良かった。

気まぐれに開けば、冷たい風が吹き付けてきて、白いにおいがした。

きっと人間だったら鼻毛が凍っているんだろうな、と思って、窓の縁に顎を乗せた。


ひんやりとしていて、それはとても心地よく、静かな耳鳴りが、聞こえた。


下を見下ろせば、雪が積もる城の屋根の下には雪の町が静かに佇んでいる。

田舎の夜より暗いそこは、今が真夜中であることを思い出させる。


きっと、夜の町は危険なのかも知れない。


そう思っているとコト、と言う音と共に耳鳴りが止んだ。

私はとっさに窓を閉めてベッドに飛び込んだ。


柔らかい布団が私を包んで、程なくしてドアが開く音がした。

…いや、きっと開いたのはドアではなく、壁だったのだろう。

いつもより落ち着いた、聞き慣れた声が、狸寝入りをしている私の耳に降ってくる。


「ーーーーーー。」


…落ち着いた、?いや、なんだろう、落ち込んでいるような暗い声だ。

私は寝返りを装って、動き、薄目で彼女を見た。


暗い部屋、薄く映る、体の細い子供。

泣きそうな、でも、それを我慢した強がりな顔。


部屋が大きいせいか、変態ちゃんがいつもより小さく見えるような気がした。



…私は、子供が嫌いだ。

子供はうるさくて、めんどくさくて、たまに怖い。


だから、嫌いなんだけど。



彼女は、薄い寝間着の裾をぎゅ、と握りしめた。


この子はきっと年の割に賢くて、案外生意気なのかも知れない。

腹黒い姫様だもの、きっと何か怖いことをするに違いない。


…違いないのだけれど。



あぁ、もう、いいや、そんな事はどうでも。

だんだん私も眠くなってきたよ。いいよ、来たいならおいでよ。



私は羽を広げて掛け布団を持ち上げた。

青い目はすっきりと開いて、変態ちゃんは少し驚いていて。


私を伺うように見上げる彼女に、私は手招きをした。


落ち込んでいるなら、縋る人がいないならおいで。

…良いじゃない。

ペットと一緒に寝るってそんなにおかしい事じゃないよ。



おずおずと近づいてくる彼女は、ひょこ、とベッドに乗って横になる。

それを確認してから私は静かに羽を下ろして、彼女に布団を掛けた。



…あ、枕いる?寝にくいでしょ?私、ドラゴンだから無くても寝れるし。

あーお腹にすり寄るの?こしょばさないでね?そこ柔らかいから…。



そうこうするうちに、彼女は静かになる。

安心したのか、それとも、寝やすいポジションを見つけたのか。

どちらにしろ、このまま寝付くつもりかな。


「おやすみなさい。」


私はなるべく優しい声をだす。できてるかは微妙だけれど。

頭をなでて、少し、お母さんを思いだした。


そう言えば、ちっちゃい頃眠れないときに、同じ事をしてもらった。



…おかぁさんも、こんなきもちだったのかも、しれないね。

し…進展してない…。しかもぬるっとしてる…

つ、次こそは…次こそは…!!

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