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疑問

変態ちゃん視点です(o゜▽゜)oボクノカンガエゴト!

外は相変わらず、雪が降っていた。

僕は午前の授業を終えて、少し休んでいた。


雪は、密集した綿の様な雲から振ってくる。

宗教のえらい人曰く、あの雲の上には天使が居て、雪を地上に降らしているのだと言う。

でも、ここまでしきりに降らせなくても良いんじゃないか?と、思ってしまうのは僕が王族だからなんだろうか?


もしかしたら雲の上に天使なんていなくて、あの雲自体が雪の塊なのではないかなぁ。

だって、踏んでも固まらない雪があるんだ、空に浮かぶ雪だってあるかも知れないじゃないか。

雨は暖かいときにしか降らないから、こう、降ってくる途中で溶けてるとか。


……馬鹿らしい。やめよ。


僕は、少しぬるくなってしまった紅茶をテーブルに置いた。


ドラゴンに会いに行こう。

せっかく、恥も捨てて駄々をこねて手に入れたんだ。触れなくては損だろう。

あれだけ焦がれたドラゴンを飼う日が来るとは、僕も夢にも思わなかった。


ドラゴンは人間を嫌っている。それが僕の出した結論だ。


だから、どんなに僕が望んでも触れることは出来ないと思っていた。

それなのに、あのドラゴンが現れた。

僕は始めは嬉しかったが、しかし、疑問が尽きないのも事実だった。


あの岩場に隠れ住んでいた、なんて、そんな事はない。

あのドラゴンがカシマール雪原に現れたのはごく最近だ。

そうでなければ、辻褄が合わない。


何故なら、あの岩場に住む角熊達が最近になって急に何かに怯えるように移動を始め、行き場をなくした者は人里に姿を現している、との事からだ。


角熊はとても強力な魔物で、500年ほど前は魔王軍の主力の一つとして活躍し、後の魔王討伐の際も勇者を、その力強い腕と、見た目よりも素早いその動きで大いに苦しめたのだという。

その強さ故に我々も無理に討伐が出来ず、彼等はコボルト族を率いて今でもこの大陸で我が物顔で暮らしている。


しかし、その角熊が怯える相手、とは?


それは、ドラゴンが急に表れたから、と言う事ではないのか?


大人しいから見つからなかったのでは、とミケーレは言うが、それでは角熊の件は一体どう説明を付ける?


大体、僕がドラゴンを見逃す筈なんて無いし、それに、あれだけ警戒心のないドラゴンなんてものも聞いたこともない。

あれは、本当にドラゴンなのだろうか?

ドラゴンの姿をした…もっと別の何かではないのか?


しかし、あれを手に入れる価値はある。

中身が何であろうと、ドラゴンの姿と、力を持っているのだから。

最近他国もきな臭くなってきた。諜報員によれば、ルナの国辺りはニクス特有の生産物、人工魔力結晶を狙ってこの国に攻撃を仕掛ける準備をしているという。


しかしあいつが居れば、ルナに限らず他国はニクスに容易に手出しは出来ないだろう。


手を出したが最後、あの藍色のドラゴンがこの国のために火を吹くのだ。

たとえ本物では無かったにしろ、あいつの力は本物だ。燃えさかる魔法の息であっという間に、敵の城を焼き尽くしてくれるだろう。


僕の趣味が、この国の役に立ったわけだ。

何の役にも立たない、地味な趣味だと言っていた剣マニアのジャコモも、つまらない事はそろそろ卒業しろと言った父だって、見返せるときが来たんだ!


そう思って僕は叔父さんと、ミケーレを思い浮かべる。

叔父さんはかつて第一王子だった。だと言うのに、魔法マニアだった叔父さんはどうしても魔法研究所の所長になりたかった。

その為に、ありとあらゆる所に手を回し、第二王子だった父に王位を押し付けたのだという。

叔父さんは当時、魔法に狂った王子、と言う不名誉な汚名を着せられて逆に喜んだ変態だ。


でも、僕は叔父さんの事が好きだ。

叔父さんは王家の人なのに誰にも囚われていなくて、とても自由。

今でも変人、狂人と呼ばれているけれど、それでも気にも止めてなくて、細々といちいちうるさい父よりもずっとかっこいい。


僕は、叔父さんと違って一人っ子だからこの国の王様になる人。こればっかりはしょうがない。本当は、旅人にでもなってドラゴンに由来する土地を回りたいのだけれど。

しょうがないんだ。


そう思うと高揚していた気分がしぼみ、ため息に変わる。


すっかりさめてしまった紅茶を入れ直そうとしたのだろう、耳の長いコボルトが此方に近付く。

僕はちょうど良かった、とそのコボルトに話しかける。


「ねぇ、ジョディ!昼食なんだけどね、ドラゴンと食べたいの!えへへ、ね、いいでしょ!」

「ドラゴンと、ですか。…畏まりました。そちらに届けさせます。」

「ありがとう!ジョディはホントに良い子だね!」


ジョディは僕に忠誠を誓ったコボルトだ。僕の言うことは必ずしてくれる。

良い手駒になるだろう、と言うのとは別に、単純に、コボルトの忠義の厚さに感心してしまう。


「じゃあドラゴンの所に行くよ。…あと、」


僕は椅子から立ち、ジョディに頼みごとをすることにした。


「あのドラゴンを飼うための部屋は作らなくて良いよ。あいつはあそこで暮らすのが一番だろうし。あと、テーブルは置いといて?僕が使うからね。

そうだね、あとは特注の手綱と…首輪よりは、ネックレスや角を飾る装飾品を作らせたいから、職人を呼んでおいて。…そうだね。」


ジョディは聞き漏らさないようにメモを走らせている。

その表情は珍しく疑問に満ちていた。


…きっと、僕の裏も表も知っている彼女には意図が分からないんだろう。


「女性物を作らせるから、その様に伝えておいて?」

「…はい。」


その戸惑うような声を聞き流して、僕は扉に手をかけた。

さぁ、これからあいつをどうしようかな?


王子はホントは賢くて、おバカなお方。

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