Episode7 工場探索 1
さて、工場探索の巻き添えになった紅崎はどうなることやら………。
放課後になったので例の現場に来た。
「勝手に入って大丈夫かな〜」
「警察もいなかったから大丈夫だろ」
「うわっ、バカが珍しくまともな事を言ってるよ」
「この扱いに対して断固抗議する」
「いや、この程度まだ軽い方だろ。俺なんかこの前「あらあら、悠一君はまた踏んで欲しいのかしら?お姉さんはいつでも歓迎しているわよ」全力でお断りさせて頂きます」
こちらの悪魔の様な女(牧瀬玲奈)は1度スイッチが入ると女王様状態になる。アレはとてつもなく怖かった、と経験者は語る。
「踏んで貰う………だと……。俺だと新しい性癖が目覚めそうだぜ」
「お巡りさん、こいつです。今すぐこいつを警察に突き出した方が世の中の為にも良いんじゃないかな」
「私達まで面倒事に巻き込まれるから、また今度にしてよ」
「それにしてもここら辺が1番荒れてるね」
(改めて見るとすごい荒れ具合だな。それくらい昨日の戦闘が凄かったのか………)
そんな風に紅崎が感慨に耽っている時だった。
『悠一、何者かにつけられているぞ』
そんな念話が聞こえた。確かに、紅崎も先程から何者かの視線を感じていた。
『アルカナムのような反応もする』
『………となると長内達がここにいるとマズいな』
『あぁ、単独行動をした方が良いな』
『仕方ない、囮になって引き離すか』「あれっ、悠一は何処に行ったんだ?」
後ろから馬原のそんな声が聞こえたが、紅崎は無視した。
廃工場の裏に行くと一人の男がいた。とりあえず紅崎は尋ねた。
「すいません。ここら辺で怪しい者を見ませんでしたか?」
「怪しい者ですか?そのような者は見ませんでしたよ。
それとも、貴方達が捜しているアルカナムのことでしょうか?」
「ッ!?………知ってるのか?」
「それでしたら、私のことですよ」
あっさりと自分の正体を白状する事に紅崎は驚く。
(捜す手間が省けて助かるが、何を考えているんだ?)
と紅崎が疑問に思っていると向こうから語りかけてきた。
「貴方がNo.4・The Emperorのコネクターでしょうか?」
「だとしたら、どうする?」
「いえ、少々お聞きしたいと思いましてね」
その発言に紅崎は警戒心を高める。
「小夜子という少女を知っていますか?」
「………知らないな。聞いたこともない名前だ」
「そうですか………それは残念ですね。そうなるとこれ以上ここにいても無意味のようですし、お暇しましょう」
逃げる様子の男を止めようと思ったが、帝が紅崎を止めた。
『早まるな、悠一』
『何故だ!?今ここでこいつを封印すれば………』
『今の我等では不可能だ』
不可能だという事に紅崎が疑問に思っていると、
「良い判断ですね。今の貴方達が私に勝つことは不可能でしょう」
男はそう告げた。それに納得出来ず、紅崎は問いかける。
「何故勝てないと言い切れる?」
「簡単なことですよ。貴方が封印したのはまだ1枚だけ。その程度ではこの私を封印するには程遠いということです」
「それ程強さに自信があるみたいだな」
「勿論ですよ。何故なら私はNo.19・The Sun。つまり上級アルカナムということです。ですが、安心して下さい。SUNの意味は成功。貴方には明るい未来や可能性がありますよ。それと最後に一言。
もう少し気をつけた方が良いですよ。貴方達が追い求める者はもう1体潜んでいます」
「まさかっ!?」
男がそんな事を告げた途端−−。
「きゃぁぁぁぁ」
という悲鳴が先程までいた廃工場から聞こえた。
「この声…長内か!?」
単独行動に出たのが裏目に出たことに紅崎は舌打ちする。早く戻らないと、と思い駆け出そうとすると男が不思議そうに問いかけてきた。
「おやおや。まさか助けに行く気ですか?」
「当たり前だろ。他に何がある」
「なるほど。今までのコネクターとは違うみたいですねぇ、皇帝様」
「あぁ、悠一は今までとは違うタイプのコネクターだ。だからこそ、あの悲劇を繰り返さないと私を信じている」
「あの悲劇を………ですか。ふふっ、私も貴方に興味を持ちました。一応自己紹介をしておきましょう。人界での名は日向。ひとまずさよならです、皇帝様のコネクター、紅崎悠一」
そう言って男−日向は消えた。
「さて、奴は消えたが………」
「あぁ、まだやるべきことが残っているな」
そうして紅崎達は廃工場に向かって駆け出した。
頼むから無事でいてくれよ、と願いながら。