Episode6 不穏
一夜明けて紅崎は自分の机を見てみる。そこには1枚のカードがあり、、
「ようやくお目覚めか。早く学校に行ったらどうだ」
現在、偉そうにしている。お前は俺の親になったつもりか、と本来なら言うところだが、今はそんな気が湧かなかった。
「どうした、あまり眠れなかったのか?」
「いや、そういう訳じゃない。やっぱり、昨日の事って事実だったんだよなぁって」
「私がここにいる。それが昨日の事は事実だという証明だ」
随分と面倒な事に巻き込まれたな、と紅崎は頭を抱えるが自分が望んだことなので文句は言わない。
悩むのは止めて学校に行くことにする。俺、………卒業式で精勤賞貰うんだ、というフラグを立てて。
−−−私立・二台場高校−−−
教室に入ると普段よりもざわついていた。何かあったなと紅崎は推理したが具体的なことまでは分からない。こういう時は人に聞くのが一番だ。
「おい、馬原。何かあったのか?」
ということで彼は近くにいたバカに聞いてみる。
「なんだ、お前は何も知らないのか?大事件だぞ、大事件」
「大事件?何だそれ?」
「ふふふ、聞いて驚くなよ。何でも、廃工場に幽霊が出たらしいぜ。謎の音が聞こえて見に行ったら、近くの壁や車が燃え尽きていたんだと。これはまさしくミステリーだな」
謎の音に不審火………確かにミステリーである。すると、長内と情報が早いことで有名な牧瀬玲奈も混ざってきた。
「確か現場って、悠一君の家のすぐ近くだったよね?」
「悠一は何か怪しい奴とか見なかった?」
怪しい奴………紅崎には目の前にいるバカくらいしか心当たりがない。
「………何で皆一斉に俺を見る?」
「分からないなら日頃の行いをよく振り返ることをオススメするわ」
「確かに馬原君なら納得できるかも……」
「牧瀬、長内。お前達の俺に対する評価がよく分かった。駄菓子菓子、悠一!お前だけは違うと信じているぞ!!」
そんなこといきなり言われても困るものだ。長内達を見れば、対岸の火事といったかんじで関わりたくない様子だ。紅崎は少し(といっても3秒程だが)迷い、切り捨てることを選択した。
「安心しろ。いつかやると思っていたから」
「イジメイクナイ。イジメカッコワルイ」
裏切られたバカは倒れた。バカは放置してその場は解散となった。
『悠一、ちょっといいか?』
『いや、ちょっといいかの前にこっちに質問させろ。いつの間にバックの中に入りやがった?』
『家を出る頃に入っただけだが?また襲われるかもしれないだろ』
『それは………まぁ、すぐに闘える方が楽だけど』
『それより、先程のミステリーについてだが……』
『何だ、心当たりがあるのか?』
『もしやと思うが、昨日の事ではないか?』
昨日の事を思い出して悠一は気付いた−−犯人は自分達ではないか、と。
『今度から周囲に被害を出さないように闘うことだな』
『…………善処します』
闘うことの難しさを知る紅崎だった。
「アッ−−−−−−−−!!」
バシンッ
とても授業中とは思えない騒がしい教室。流石このクラスだ、授業中でも漢達の宴である。だが、そこに痺れないし憧れない。
周りがこのような状態では当然真面目に受けている者も、
「なあなあ、放課後噂の現場に行こうぜ」
こんなかんじでダラけてしまう。
「おいおい、警察がいて駄目だろ」
「でも、近くまでなら行けるんじゃない?」 怖いもの見たさからくる好奇心か。先生達が「決して現場に近づかないように」と言っても、いつも刺激を求めている高校生にとってはネタフリになっても仕方ない。
「近づいちゃ駄目って言われているんだよ。行っちゃ駄目だよ」
「ムー、なんだかノリが悪いね。バレなければいいんだよ」
(一応あるけど、それは大抵バレるフラグじゃなかったか?)
紅崎がそんな疑問を持ったが、どうやら彼らには通用しないらしい。現場に行きたがっている馬原と牧瀬を止めるのは恐らく不可能だろう。
「もしかして、彰子ちゃんは怖くて行けないんでちゅか〜?」
「こ、怖くなんかないもん!!いいよ、私も行くよ!!四人で行けばいいんでしょ!!」
根は真面目だが単純な為変なことに巻き込まれてしまうかわいそうな長内であった。
「ちょっと待て、四人だと?」
本人の了承無しに紅崎も巻き込まれてしまった。原因である長内に文句を言おうにも、
「うぅ、駄目………かな………?」
上目遣い+涙目+その他もろもろといった女性の最終兵器にはさすがの彼も勝てないだろう。こうなってしまった以上は大人しく降参して着いて行くしか道はない。
「よし、放課後は現場検証だ!」
「おー」 「「………お、おー」」
こうして、放課後に彼らは現場検証(?)をすることになった。