Episode28 二つの出会い
HierophantとDeathが再び戦闘を始めた頃、長内はその近くにいた。
「一体何が起こっているの?もしかして、悠一君が!?」
その好奇心と心配の思いから、彼女は音源の方へ近づこうとする。
が、彼女を呼び止める者がいた。
「そちらには近づかない方が良いですよ。彼は闘っていません」
振り返ると、そこには一人の青年が立っていた。
だが、長内には見覚えが無い。
長内が怪訝に思っていると、青年の方から自己紹介をした。
「これは申し訳ございません、自己紹介がまだでしたね。私はメーヤと申します」
「どうして悠一君の事を知っているんですか?それに、悠一君が闘っていないと」
「彼、いや、彼の近くにいる者と面識がありましてね。それ経由で知りました。後者については、先程自分で見てきたからです」
「そう……ですか。ありがとうございます」
長内は礼を言って立ち去ろうとしたが、メーヤが呼び止めた。
「彼に会うつもりなら、後日に変えることをお勧めします」
「どうしてですか?何か問題でも?」
「えぇ。今、彼の元へ姫矢美咲が向かっていますからね」
「えっ!?どうして美咲さんが?」
「コネクター同士の問題ですからね。私には分かりませんよ」
長内は何かあったことは推測出来たが、詳しくは分からなかった。それよりも、彼女が疑問を持つような事をメーヤは言った。
「メーヤさんはどうして悠一君達の秘密を……もしかして!?」
「私は貴女が考えているような者ではないですよ。まぁ、彼らの関係者である事には変わりないですけどね。
それよりも、もう夜も遅いです。貴女もそろそろ帰宅した方がよろしいのでは?」
言われて時計を見れば、既に十時を過ぎていた。
「あっ、はい。その……ありがとうございました」
「いえ、お気になさらずに」
そう言ってメーヤは立ち去った。
残された長内は、紅崎に対して不信感を抱きながら帰宅した。
所変わって、紅崎宅。
そこでは、クローリーが紅崎にいろいろとレクチャーしていた。
「以上がコネクターについてだ。理解いただけたかな?」
「まぁ、それなりに。しかし、コネクターっていうのも大変なんだな」
「だが、それも含めてお前はコネクターになる事を決めたのだろう?」
「まあな」
「もう夜も遅いですから、今日はこのくらいにしておきましょう」
クローリーの言葉を聞き、紅崎が時計を見ると十一時半を指していた。
「そうだな。明日の支度とか、いろいろとやる事が残っているよ」
そう言って、紅崎は明日の分の炊飯器の予約をしようとする。
その時、来客を告げるチャイムが鳴った。
「誰だ、こんな時間に?」
怪訝に思いつつ、紅崎は玄関に向かう。
そこには−−。
「あっ、悠一さん!!お願いです、お姉ちゃんを助けてください!!」
涙声で必死に助けを求める美穂と、傷だらけになって弱っている美咲の姿があった。




