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Episode21 三つ巴の闘い(後)

 先週もお知らせした通り、後編です。

 それではお楽しみ下さい。

「はぁ……はぁ……、ぐっ!!」

 −−振り下ろされたが、美咲の首のすぐ横で止まっていた。

「何で………何で止めたのよ!?」

 全く理解出来ず、美咲は問いただす。

「俺には………俺には姫矢さんを斬ることなんて出来ない」

 紅崎の声はなんとか絞り出したような大きさだった。

「悠一………お前、自分が何をしたのか分かっているのか?」

「………分かっているさ、自分が何をしたのかい。けど、俺は後悔なんかしていない」

 紅崎のした事−−それはアルカナムを封印するというコネクターの義務を捨て、個人の命、ましてや敵であるコネクターの命を救うという事。コネクターとして到底許されるものではなかった。

 だが、紅崎は助けたことを後悔していない。なぜなら、美咲の命を優先したのは己の信念に従ったからであった。

「確かにコネクターとして優秀な人だったら、この状態だと迷わずに斬っていると思う。だけど、俺にはそんな事出来ない。今ここで姫矢さんを斬ればこいつを封印出来るけど、美穂ちゃんや他のたくさんの人を悲しませることになる。俺はどうしようもなく甘い人間だからさ、そんな事を考えると斬れなくなるんだよ。

 それに、姫矢さんを斬れば、俺は自分の信念に反することになる。

 俺は………俺は人を護りたくてコネクターになることを選んだんだ!!だから、コネクターだって護る!!」

 己の信念に従って闘う紅崎の姿は、EmperorとEmpressには不評だった。

「なるほど。確かにお前は他人に甘くて」

「どうしようもない大馬鹿野郎ね」

 だが。

「「けど、コネクターとして最も相応しい人間だよ」」

「……………え?」

 紅崎は一瞬理解出来なかった。自分はコネクターとして最低な事をしたのに、何故責められずに褒められているのか。

 その答えは簡単なものだった。

「確かに、規則に従うのは重要だ。だが、人間誰だって規則に従い続けるのは難しいだろう。本当にコネクターの使命に忠実に従う者がいたら、もはやそいつはロボットに違いないだろうな」

「私達が本当に必要とするのは柔軟な思考力がある人間よ。時には迷ったり悩んだりするかもしれない。それでも、己の信念を最後まで貫き通して闘う者が私達の望む者よ」

「そっか。………俺は何を迷っていたんだか。馬鹿みたいだな」

「迷いが吹っ切れたなら、成すべき事も見つけたようだな」

「あぁ。当たり前だろ」

 そう言うと紅崎は止めていた剣を振り上げ、Priestessに向かって振り下ろした。Priestessは弾き飛ばされ、美咲は再び自由を取り戻す。

「ありがとう、礼は言っておくわ」

「別に良いよ、困った時はお互い様なんだから。それより、今はあいつをどう封印するかじゃないかな」

「策ならあるわ。私とあなた、二人の連撃で倒すの」

「なるほど、分かりやすくて良い作戦だ」

 作戦の主旨を理解して紅崎は再びカードをスキャンする。

「Approve Magician・Strength・Justice--Justi Breaker」

 特定の組み合わせでカードをスキャンすることで発動するコンボ。それにより、威力は何倍にも膨れ上がる。

 その威力を保ったまま、

「うおおおあああぁぁぁぁぁ!!」

 Priestessに叩き付ける。下級アルカナムであるPriestessでは受け止められず、宙へ浮いた。そして、宙に浮いて無防備な状態のPriestessを、

「頼んだ、姫矢さん!!」

「まかせて、悠一。撃ち抜いてみせる!!」

「Approve Chariot」

 Chariotをスキャンした美咲が追い討ちをかける。見事に撃ち抜いて、Priestessには封印の紋章が浮かぶ。

 それを見て紅崎と美咲は互いに顔を合わせた。どちらが封印するか分からなかったからだった。すると紅崎は、

「姫矢さんが封印すれば、良いんじゃないかな?」

「えっ!?………良いの?」

「うん。だって、姫矢さんの一撃が止めだったじゃないか」

「そっか。……………ありがとね、悠一」

 そう言って美咲はカードを投げる。帰ってきたカードにはNo.2・The High Priestessと記されていた。

「レディーファーストね。良い心掛けよ」

「さぁ、どうなのだろうな?何か下心がありそうだが……………」

「…………お前らなぁ。いくら何でもその言い草は無いだろ」

 本人が目の前に居るにもかかわらず、ぼろくそに言われている紅崎を見れば、先程とは別人のようだった。そんな弄られている彼を見かねて、美咲は助け舟を出した。

「二人共、そんな事を言っちゃ駄目でしょ。………それじゃ、私達はもう行くわ」

「うん、分かった。それじゃ」

 そう言って別れた二人には最初にあったいがみ合う雰囲気は無く、むしろ暖かい雰囲気があった。





 紅崎が立ち去った後、公園には一人の少女が居た。

「まさか、悠一がEmperorのコネクターだったとは…………。こんな近くにいるとは思わなかったけど、これはこれで面白くなりそうね。さてと、これからどうするかプランを考えないと−−−No.13・Deathとして」

 そう呟くと、その少女は消えた。

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