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Episode18 休日

 日曜日。

 それは老若男女に与えられる休日である。

 親はこの日とばかりに家族サービスをしたり、勉強を強いられている学生は数少ない休みを謳歌したり、恋人がいる憎むべきリア充共はデートしたり、自宅警備員はいつも通りディスプレイと向き合ったりと思い思いの過ごし方で自由に一日を楽しみ日である……………筈、本来は。

 というのも、二名ほど例外が存在するからである。その例外は現在、

「「…………どうしてこうなった?」」

 己の境遇がこうなった原因を考えていた。そして、その原因となった者はというと。

「早くしなさいよ、悠一、恭也」

「あわわ、悠一君と馬原君、大丈夫?やっぱり荷物は自分で持つよ」

 随分と対応に差があった。片方は人を奴隷のように扱う魔女(牧瀬)。もう片方は見かねて助け舟を出してくれる聖女(長内)。そして、奴隷状態になっているのが紅崎と馬原であった。

 そもそもどうしてこのような事になっているのかというと、話は前日に遡る。








 土曜日。紅崎が病院から帰宅してくつろいでいた時だった。携帯にメールが来ていて、差出人は牧瀬玲奈だった。


『件名:おい、デートしろよ。

 本文:明日、長内ちゃんと買い物だけど、貴方も来なさい。来なかったらO☆HA☆NA☆SHIね』


 よく見ると一斉送信で馬原にも送られていた。こいつは何処の蟹さんだ、と考えていると今度は馬原から電話がかかってきた。

『おーい、悠一。さっきのメールは何?』

『………新手の脅迫状だと考えとけ』

『行かなかったらO☆HA☆NA☆SHIってヤバいよな?』

『だろうな。玲奈の事だから何をされるか分からん』

『という事はやっぱり………』

『あぁ、恐らく………』

『『さよなら、俺達の休日。お前達の尊い犠牲は忘れない』』

 こうして、紅崎達の貴重な休日は消滅したのであった。








 時間は戻って、日曜日の正午。

 紅崎達は買い物も一段落してレストランにて小休憩している。

「ウダー、もう俺の腕は駄目だ」

「お前ら、いろいろと買い過ぎだろ………」

「情けないわね。もう少し頑張りなさいよ」

「ま、まあまあ。もう荷物は増えないから大丈夫だよ」

 紅崎は元凶に文句を言うが、その元凶はどこ吹く風である。そんな二人を必死に宥める苦労人ポジションの長内。馬原に至っては、一週間前に作ったカビの生えているであろう顔を民間人に平然と食べさせるキャラの顔が濡れて弱った状態だった。

「けど、その様子なら安心かな?」

 ふと、牧瀬がそんな事を呟く。

「何が?」

「貴方達の事よ。悠一も長内ちゃんも最近元気が無かったからさ」

「あの……………俺は?」

「あんたはどうでもいいわよ」

「酷いよ、こんな扱いってないよ」

「もしかして、玲奈はそれで今日誘ってくれたのか?」

 普段見せない牧瀬の優しさに紅崎は感謝の情が沸き、


「まぁ、建前は、ね。本音は荷物持ちが欲しかっただけよ」


「返せっ!!俺の感激を返せっ!!」


 一瞬にして消え去った。

「あれ?昨日、悠一君が心配だから買い物に「スト−−−−−−ップ!!これ以上余計な事を喋らないで」

 首が取れそうな勢いで縦に振る長内。今の牧瀬はとても危険な状態である。だが、こんな時でも平常運転の馬原は、

「なんだ、牧瀬って良い奴じゃん。ツンデレっぽいのも高評価だな」

 その台詞を聞いた瞬間、牧瀬は獲物を見つけた肉食動物みたく馬原に狙いをつけると病んだ目で、

「うふふふふ、恭也が荷物持ちを頑張ってくれるみたいだし、もう少しだけ買い物しようかしら?ねぇ、大丈夫よね?ねぇ、恭也?」

 蛇に睨まれた蛙のような状態の馬原は紅崎に助けを求めるが、

「自業自得だ。諦めろ」

 即効で切り捨てられた。相変わらず不憫な奴である。








 同じ頃、美咲達は路地裏を走っていた。逃げている訳ではない。逆に追いかけていた。その標的は、

「SEms」

 光弾を放ちながら逃げている。

『面倒な事をしてくれるわね』

『まったくよ。あれ−−No.2・The High Priestessを逃がすのだけは避けないといけないけど……』

『このままだと商店街ね。早く止めないと…………』

 どうやら追撃はまだ続きそうである。








 馬原の自爆によって続行された牧瀬の買い物は、突然の爆発音によって中断した。

 紅崎達がその音が聞こえた方向を見ると、そこにはNo.2・The High Priestessがいた。

 そして−−−。


「Jmnd」


 こちらへ光弾を放った。紅崎達はギリギリのところでかわしたが、Priestessはこちらを執拗に狙ってくる。

「ちょっ!?あれ何だよ!?」

「そんな事分かる訳ないよ!」

「とりあえず言える事は、戦略的撤退が一番という事ね」

『参ったな。こんな所で攻撃してくるとは………』

『出来るだけ引き離したいところだが、ッ!?』

 Emperorと対策を協議していた紅崎は、目に入った光景に思考回路がフリーズした。

 それは、倒れている少女とその子を助けようとする長内、そして二人に狙いを定めるPriestessの姿だった。

(あいつらを、こんな事の犠牲になんてさせない!!)

 その一心で紅崎は両者の間に割り込み、

「Break through」

 Emperorの力を使って自ら盾となり、長内達をPriestessが放った光弾から護った。

 だが、それと同時に、今まで隠していた事が長内達に知られてしまった。

「悠一……君……?」

「悠一……それ、一体何なんだよ?」

 いきなり摩訶不思議な光景を見て長内達は呆然とし、やっとの思いで紅崎に疑問を投げかけた。その疑問に対し、

「ごめん……今は……詳しく話せない。でも……後でちゃんと話すよ。だから、今はその子を連れて逃げてくれ」

 そんな彼の願いに応えたのは牧瀬だった。

「分かったわ。でも、後できっちり話してもらうから覚悟しなさい」

「うん、ありがとう」

 そう言って長内達を連れて行く牧瀬。

 他者を庇いながらの戦闘は回避したので、後はPriestessを封印するだけ。

「さてと、思う存分やらせてもらうぞ」

 そう言って、紅崎は駆け出した。

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